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1話

「ん……うぁ?」


 森の中で男は目を覚ました。


「ここは…森の中か。ってことは、転生自体は成功したのか」


 そう言いながら体を起こし、自分の状態や身の回りを確認する。


(体に傷はみられないし、周りに魔物などの気配も感じられない。これなら集中してステータスの確認を行える。)


 そして意識を自分に集中させる。すると頭の中に自身のステータスが表示された。


名前 クーガー Lv1

種族 人間

〈能力〉

筋力値 10

器用値 5

機敏値 3

生命力 8

魔力値 4

〈スキル〉

武器 鎚

魔法 土属性

補助 毒耐性


(レベルが1になったことによるステータスの低下、そしてスキルがほとんどなくなっているところを見ると、力の譲渡もきちんとされていると考えていいか)


 自分のステータスを確認し、状況を整理するクーガー。

神が転生者に自分のステータスやスキルを与えると言っていたのだが、わずかに残っているスキルを見て最低限は残してくれたのだろうと納得する。


 武器スキルと魔法スキルは生まれながらに決まるとされている。魔法は適正外の属性は使えず、武器は振るうぶんには問題ないが、適正のない武器には属性を付与するエンチャントが行えないというデメリットがある。それとは別に補助スキルは自身の行動により習得されるものだ。毒をくらい続けていれば体に耐性が出来、毒耐性としてスキルが追加されるというふうに増えていくのだ。


(さて、確認は終わったが問題はここからだな。とりあえず近くに村とかないか探さないと…)


 ここでうだうだ考えても埒が明かないとクーガーは次の行動に移る。

今の自分は武器どころか食料も金もない、文字通り体一つしかない状態だ。


「好きに生きて良いと言われても、先立つものがないとな」


 そうぼやきながらクーガーは森の中を歩き出した。







「まったくフランクの奴、目を離した隙にいったい何処まで行ったんだ?」


 周囲に注意を払いながら男は森の中を歩く。息子と一緒に狩りをしていたが、獲物の血抜きをしている途中で何処かに行ってしまったのだ。


(最近はこの辺りでも魔物が出るって噂だ。そうなる前に早く見つけねぇと)


 大事な息子に何かある前に、と男はさらに森の奥へと歩いて行く。

すると遠くの方から子どもの泣き声が聞こえた。


「っ!?フランクか!?」


 もしかしたら魔物に襲われているかもしれないと思い、男は声の方角に走り出した。

草木をかき分け、声の元へたどり着くと――――


「ん?アンタがこいつの親父か?」


 泣いてる息子と、それをおぶっている男がいた。

瞬間、男を状況を理解した、ボサボサの髪、鋭い目付き、間違いないあれは人さらいだと。このまま息子を連れ去って行くに違いないと。

ならば自分がこの状況でとる行動はひとつしかない、男は背に背負った斧に手を掛ける。


「こんの、人さらいがぁぁああ!!」


 まず目の前にいる男の頭をカチ割ることだ。







「いやぁ、すまん!まさか息子を連れて来てくれたとは思わなかったんでついな」


「つい、で俺は脳天カチ割られそうになったのか……」


 そう言って男を恨みがましく睨むが、当の本人はなんでもないように笑っているのを見て、これ以上何を言っても無駄だなとため息をつく。


「割れなかったからよかったじゃないか。おっと、紹介が遅れたな。俺はオテロ、でこいつが息子のフランクだ」


名前を呼ばれたフランクは、おずおずとした様子でお辞儀をした。


「俺はクーガーだ」


 そう言って目の前の親子を見る。オテロは豪快な性格で筋骨粒々の体つきなのに対して息子のフランクは引っ込み思案で体つきも線が細い。本当に親子なのだろうかと疑いたくなるが、聞いたところでまた面倒なことになるだけと思い、胸の奥にしまっておく。


「ところで、どうしてこんな所に来たんだ?ここは町からも距離があるし、見たところまともな装備もないじゃないか?」


 その言葉にクーガーは考え込む。ここで正直に神様と名乗る奴にこの世界に転生されました、そしてここに着いた時には所持品は無いんです、と言ったら、もしかしなくても不審者と認定されるだろう。


「すまない。俺にもよくわからないんだ」


「わからない?」


「気がついたら森のなかにいたんだ。それに自分が今までどこで何をしていたのかも思い出せないんだ。かろうじて覚えているのは名前と自分が冒険者だということぐらいしか……」


 そう言いながらオテロの顔を見る。正直には言えないし、かといって下手に言い繕っても深く聞かれればすぐバレてしまう、ならばいっそ最初から記憶がないといえば都合がいいと考えた。あとは、目の前の男がそれを信じてくれるかだ。


「……そうか、そいつは大変だったな。ところでお前さん行く当てはあるのか?ないんだったら俺達の村に来るかい?」


「いいのか?自分の証明も出来ない奴だぞ?」


 まさか嘘を信じたどころか、村まで案内してくれるという提案に驚く。


「お前さんは息子を助けてくれた恩人だからな。理由なんかそれで充分だ」


 そうと決まったら行くぞ、とオテロは荷物をまとめ始めた。どうやらクーガーを村に連れていくことは決定らしい。

男のあまりの人の良さを目にしてクーガーはやれやれと言いながら


「お人好しだな。いつかひどい目にあうぞ」


「人を見る目には自信があるんだよ」


「人を見る目がある奴は出会って早々頭をカチ割るなんてことしないだろ」


 直後、やかましいと言いながら拳を振り上げるオテロの姿があった。

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