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16話

「ハァッ!」


 薙ぎ払うようにハンマーを振るう。しかしコボルトは後ろに飛び退きあっさりとこれを躱す。そのクーガーの隙を突き、背後から別のコボルトが攻撃を仕掛けてくる。それを振り向き様にハンマーの柄の部分で受け止める。攻撃を防ぎ足を止めているクーガーに今度は横からコボルトが迫る。


「ッ!チィッ――」


 攻撃を防いでいるコボルトが間に入るように体をずらし、前蹴りを放つ。吹き飛んだコボルトはそのまま迫ってきたもう一体に当たり二体とも倒れる。チャンスとみて追撃を仕掛けようとするも残りのコボルトがそれぞれに攻撃を仕掛けそれを妨害する。それらを捌き、一旦距離を取り息を整える。


「やっぱり数が多いと面倒だな……」


 コボルトはゴブリンと同じ下級の魔物だが、ゴブリンとは違いコボルト同士で連携を取り、狩りのような戦闘をするのが特徴だ。一体一体は大したことはなくても連携を取られると厄介なことこの上ない。しかも今は一対五。数の上でも絶対的な不利な状況にクーガーは攻めに転じる機会をなかなか見つけられずにいた。


(一体でも仕留められれば流れは変わるんだが、……さてどうしたものか)


 考えながら手に持つハンマーを見る。ハンマーを十全に生かすには大きく振るう攻撃が一番だが、相手が連携を取っておりなかなか決定的な一撃を打ち込む猶予が作れない。かといって守りに徹していてもじり貧のまま。


「(相手は下級……。ちょっとキツイがいけるか?いや、このままではらちが明かない。やるしかないか)『エンチャント』!」


 エンチャントを唱えハンマーに魔力が纏う。そしてコボルト達に向かい突貫していく。一番近くにいた一体に向かって大きく踏み込みハンマーを振り払う。しかしコボルトはこれを難なく回避し、それぞれのコボルトも散開しクーガーを囲む。そのうちの一体が背後からクーガーに飛びかかる。クーガーは直ぐに振り返り武器を構え、()()()()()()()()()()()


「ぐっぅう!っらぁぁああっ!!」


 このままでは埒が明かないとクーガーはコボルトの攻撃をあえて受けながらも構わずにハンマーを振り下ろした。攻撃を行った後で動きを止めていたコボルトは回避出来ずに頭を砕かれる。


「まずっ、一体!っ!?」


 クーガーがハンマーを構え直す前に他のコボルトが迫ってきてた。それを横っ飛びで回避し急いで立ち上がりハンマーを構える。


「ハァッ、ハァッ。なんとか上手くいったが、二度目はないな、これは」


 クーガーの取った行動。守備に徹すれば攻撃出来ず、下手に回避すれば充分な体勢で武器を振るえず致命傷を与えられない、ならば相手の攻撃を受け、その攻撃後の隙に一撃を叩き込むという、文字通り"肉を切らせて骨を断つ"を行ったのだ。


「致命傷にはならなかったが…、さすがにキツいか」


 攻撃を受ける瞬間、体勢が崩れないギリギリの範囲で体をずらしダメージを抑えた。左肩から右胸にかけて一直線に傷痕があるがそこまで深くはならなかった。しかし体に感じる疲労感は確実に増していく。


(くそっ……。思ったより体が重いっ…。残り四体、どうするか)


 一体倒すだけでもこのあり様だ。流れは確かに変わっただろうがその代償は大きかった。この世界に来て多少この状態の体の扱いにも慣れてきたと思ったが、まだ全盛期の頃の感覚とズレがある。どうするかと思考を巡らすが勿論相手は待ってはくれる訳もなく、仲間を殺された怒りから四体ほぼ同時に襲いかかってきた。


「ったく、もう少し休ませてくれてもいいものをっ!」


 そう言葉をこぼしながらも武器を構え迎え撃つ。しかし足取りは重く、コボルトの攻撃を回避出来ずハンマーで受ける。だが腕も受けた傷と戦いの疲労のせいで重くなかなか押し返せない。ギチギチと音を立てコボルトが武器を押し込んでくる。チラと横を見るともう二体目のコボルトが迫ってきていた。クーガーは足を引き体を半身にし、コボルトの体勢を崩す。すかさず迫ってきていた二体目に向かってハンマーを振り放つがこれはしゃがんで回避されてしまう。だが、クーガーは振り放った勢いそのままにその場で一回転し近くにいた体勢を崩していた一体目に向かって攻撃を放つ。

直撃したコボルトはそのまま吹き飛んでいった。


「仕留めるまではいかなかったかっ……!」


 直撃はしたものの足の踏ん張りが弱く威力が落ちてしまっていた。攻撃を受けたコボルトはダメージがありながらも既に立ち上がっている。クーガーも体勢を立て直そうとするが三体目のコボルトが攻撃してくる。


「くそっ、次から次へとっ!!」


 それを飛び退くことでなんとか回避する。しかし立ち上がろうとした瞬間、最後の四体目がクーガーに迫り既に武器を振りかぶっていた。


「しまっ―――」


 殺られる。そう覚悟した瞬間。


「ギャンッ!?」


 突如どこからか飛んできた短剣がコボルトに刺さる。刺されたコボルトは一目散にクーガーから距離を取り、警戒を強める。クーガーは立ち上がり、コボルトに注意をしながらも周囲を見渡す。すると――


「なんとか間に合ったっ。ぜえっ、ぜえっ…。……それにしてもだいぶピンチなんじゃないか?後輩」


「戻ってきたのか…?」


「さすがにあのまま引っ込んでいるのには俺的に耐えられないからな、助けに戻って来てやりましたよ!」


 息を切らし、膝に手を当て大きく呼吸しながらも得意気に言い放つソーマがそこにはいた。

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