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101話

 今日今日とて心地の良い快晴。鳥が囀ずり朝を告げ、人々が一日の生活を謳歌せんと活気づくにはこの上なく相応しい天気。


 耳に入る騎士達の訓練の掛け声、窓から入る朝日に反射する装飾品やシャンデリア。

その廊下を歩く集団が一つ、先頭を歩くは鎧を身に纏った騎士。そして後ろに続くは城内で見るには些か浮いて見える風貌の人物が二人とそれなりの身なりを整えた二人の計四人。


「うへぇ…、やっぱり何か場違いな感じがすごいな。歩いているだけで気が重くなってきやがった」


 浮いて見える方その一であるソーマがそう溢した。今現在歩いているウォレス城内は当然の事だが貴族や仕える騎士達が住まう所だ。それ以外の者も訪れる事は勿論あるがそう頻繁にある訳もなく尚更目立つ。

何もやましい事は無いのだが、いつもと雰囲気が異なる場所の空気に当てられたソーマは服の胸元をパタパタとした。


「そう?変に緊張し過ぎじゃないかしら。私達は正当な理由があって来ているのだし、場違いなんてある訳ないじゃない」


 身なりを整えている方のその一であるルセアは軽く返した。ローランド王国に仕える将軍の一人娘である彼女は当たり前のように城内を歩ける身分である。

そんな彼女からしてみれば城内だからと別段気負うこともないのにと思うがそこは人は人、各々感じ方が違うのだ。


「まぁまぁ、普段訪れない場所というのはそれだけで心持ちが変わるものですよ。かくいう私も森から出た時は不安もありましたし」


 そう諭すのは身なりを整えている方その二のコーラル。珍しいエルフであり、若く美しい風貌にそぐわない程の年月を重ねた彼はさらりとした口調でパーティーの空気をならしていく。


「コーラルでもそう感じるのね。――ねぇ、貴方もこういう場所に来ると何か違う感じ方になる事ってあったりするの?」


 そう言うとルセアは先頭を歩いていた浮いて見える方その二でありこのパーティーのリーダーでもある人物、クーガーの隣に並ぶとそう問い掛けた。


「特にないな。強いて言えば何処に何が置いてあるか、元の場所までの道程はどうか位しか考えてない」


「考え方が戦場のソレと何ら変わらないじゃねーかよ」


 問い掛けられたクーガーは歩みはそのままに淡々と言い切りソーマが突っ込む。

長く一人で戦いの場に身を置いていたクーガーにとって最早染みついたしまった感覚であるが、この感覚のお陰で数多の厳しい戦いを乗り越える事が出来たのだから今更変えるつもりはない。


「ホントお前さんはそこら辺異常に強いよな。俺なんか今から勇者達に会うと考えると少し震えてきたよ。折角シグマさんに見定められて来たっていうのに、なんか胸を張り切れなくてさ」


 ここに来た理由は認識しているが、いざ来てみると自分はやはり場違いなのではという考えが頭を巡りソーマは肩を落としてしまう。

その様子を見てまたコイツはうじうじとと感じたルセアは発破を掛けてやろうとするがそれよりも早くクーガーが口を開いた。


「胸を張るのがキツいならせめて見栄を張っていればいい」


「見栄って、そんな安いメッキいつまでももたんでしょ」


「構わん。シグマが俺たちを推したのは個人の実力じゃなくパーティーとしての力だ。なら、お前が見栄を張っていれば俺達がそれを完全なモノにしてやるさ」


 要するに自分達ならばソーマの考えを杞憂に終わらすが出来るから心配するな、とクーガーにしてはらしくもなく率直な励ましだった。


「ふふん。そうね私達ならやれるわよね」


 素直に自分達と戦力に数えて言われた事にルセアの声は喜色を含んでいた。

コーラルもクーガーの成長とも取れる言動に頬を緩める。

そしてソーマは噛み締めるようにその場に止まり眼を瞑る。


「何を尻込んでいるんだか、それじゃいつもと何ら変わらないでしょうに」


 少し前に理想の自分になると宣言したのにこの体たらくからと自分を殴りたくなる。


「変わりにやりましょうか?」


「自然と心を読むんじゃねーよ。ていうかお前のは洒落になんねーだろうが!?」


 シュっシュっ、息を吐き軽く拳を振るうルセアだが風切り音はシュボっ!と明らかに軽症では済まされない音を叩き出していた。


「あなたが何時までもウジウジしているからでしょ?それで気持ちは決まったの?」


 ここまで来てまさか出来ていないなんて言わないよな?と言葉の裏に滲む本音を察しながらソーマは首を縦に振った。


 気持ちを入れて歩みを進めると案内の騎士が一つの扉の前で立ち止まった。


「こちらになります。扉の先に皆様がお待ちになっております」


 この扉の先に勇者達がいる。クーガー達は周囲の空気が引き締まるのを感じた。

ごくりとソーマが唾を飲み込む音が響く。それを合図にクーガーは騎士に目配せをすると騎士は扉を開けた。


「行くか」


 クーガーを先頭に部家の中へと入る。中にいた勇者達も外の音を聞いていたからか、それぞれが立っている状態でいた。


 ごくりとソーマがまた唾を飲み込む。目の前にいる四人が数多の魔族を討伐しローランド王国に希望を灯してくれている張本人達。

それに相対している事実に体に力が入るソーマを尻目にクーガーは勇者へと視線を向けていた。


(立ち姿が様になっている。それだけの戦いはやはり越えてきたか)


 初めて姿を見た時は装備もどこか着られている印象もあった、しかし今ではそれが普段の装いであるように馴染んでいる。

そんな感慨に耽るクーガーと視線が合った勇者は驚いたように眼を見開いた。

勇者からすれば追従するパーティーの中にまさか以前合ったクーガーがいるとは思いもしなかっただろう。

しかしこのまま互いに見合っていても仕方がないと思ったクーガーは口を開いた。


「これからそちらと行動を共にすべくギルド『デュランダル』から来た、このパーティーを率いているクーガーだ。ステータス等は後でいいだろ、先ずは紹介を済ませよう」


 さらっと告げ、そしてと続けルセアへと目を配る。


「パーティーメンバーのルセア」


「同じくコーラルと申します」


「あ、えとソーマっす…」


 ルセアから順に名前を名乗っていく。それらを受けた勇者達は一人一人の名前と顔を確認して、次は自分たちもと名前を名乗る。


「僕は桜井康一って言います。一応、勇者です」


「一応ではなく勇者だろうに。ライアットだ、ローランド王国では将軍の地位でもある」


「ま、偉そうに言うよりかは良いんじゃない?私はシータ。将軍の一人であるサウスの娘よ」


「はい、康一さんらしくて良いと思います。申し遅れました、私はリフル。教会から遣わされたシスターでもあります」


 控えめに言った勇者、康一の言葉にお小言を言うライアット。続くシータとリフルの物言いから普段の彼らの関係がぎすぎすしたような物ではなく、良好であると察する事が出来た。


「何か思ったより雰囲気が柔らかいよな、てっきりもっとカチッとしたのを想像してたけど……」


「どちらかと言えば冒険者のパーティーのような感じですかね。私もライアット将軍もいらっしゃると聞いていたので規則正しくと思っていましたが、これはこれで良いんじゃないでしょうか」


 少し気が楽になったソーマの肩をポンと叩くコーラル。ルセアはシータの方を見ていてクーガーは康一達が続きを切り出すのを待った。

その空気を察したのか、ライアットが軽く咳払いを一つして場の空気を締め直した。


「此方の要請に応えてくれて感謝する。厳しい戦いに共に望む貴君らに改めての感謝を」


 そう言って頭を下げるライアット。まさか将軍が頭を下げるなどと驚くルセア達。一人特別動じなかったクーガーが頭を上げてくれと告げるとライアットは頭を上げた。


「共に行動する以上此方に対して他人行儀な言動は必要ない。かといって過度な馴れ合いも求めるつもりもない、互いに肩に力が入らない程度にやっていければそれでいい」


「ちょっ!お前いきなりそんな態度でいくなって!ってかいつも通りにも程があんだろ!?」


 慌ててクーガーに駆け寄るソーマにコーラルはまぁまぁと宥め、ルセアは一思いにひっぺがした。

なにすんだ!?会話の途中で邪魔をするんじゃないわよ。とにかく少し離れましょう。そんなに変な事を言ったか?

一気に騒がしくなった部屋の中。

そんな様子を見て驚いた康一達だったが、クスと笑うと康一は口を開いた。


「はい、僕もそんな気を使われたりするよりも皆さんと、えと、仲良くやっていけたらと思います」


 ニコっ、と柔らかな笑顔を浮かべた康一。そしてクーガーへと歩み寄ると右手を差し出した。


「だから、これから宜しくお願いします!クーガーさん!」


 その手をクーガーは見つめた。この世界に来るときに断った重荷を背負ってしまった康一。その事実を知らずに素直に協力を喜んでくれる顔にクーガーの中に申し訳なさが到来し、表情に一瞬影が過る。

そんな感情を察したのかルセアはクーガーの肩にそっと手を乗せると耳元で小さく囁く。


「決めたんでしょ?」


「――ああ」


 その言葉で何時もの表情に戻ったクーガーを見て、ルセアは満足そうに後ろへと下がる。

それを見た康一がどうするべきかと目線を忙しなく動かし、少しおろおろとしだす。

クーガーは一息吐くと済まなかったと一言言ってから差し出されていた右手を掴んだ。


「来たからには力になれるよう努める。此方こそ宜しく」


 飾り気のない言葉。これこそがクーガーの本音であり誠意であることを知っているルセア達は、果たして康一にキチンと伝わっているのかとその表情を伺うが直ぐに杞憂と終わった。


 そこには満面の笑みを浮かべる康一がいたからだ。













 その後、各々の実力を把握するために公開し合ったステータスを此処に記す。



名前 クーガー Lv13

種族 人間

〈能力〉

筋力値 24

器用値 25

機敏値 14

生命力 22

魔力値 16

〈スキル〉

武器 鎚

属性 土属性

補助 毒耐性 指揮 連携 魔力操作



名前 ルセア Lv14

種族 人間

〈能力〉

筋力値 20

器用値 19

機敏値 22

生命力 14

魔力値 19

〈スキル〉

武器 拳

属性 雷属性

補助 気配察知 直感 連携



名前 ソーマ Lv13

種族 人間

〈能力〉

筋力値 12

器用値 25

機敏値 29

生命力 10

魔力値 19

〈スキル〉

武器 短剣

属性 風属性

補助 料理 識別 夜目 解体 投擲 気配察知 道具作成 気配希薄化 連携


名前 コーラル Lv19

種族 エルフ

〈能力〉

筋力値 13

器用値 21

機敏値 13

生命力 17

魔力値 34

〈スキル〉

武器 杖

属性 光属性 水属性

補助 詠唱短縮 精神耐性 詠唱維持 連携



名前 桜井康一 Lv15

種族 人間

〈能力〉

筋力値 16(+20)

器用値 18(+20)

機敏値 17(+17)

生命力 15(+20)

魔力値 19(+15)

〈スキル〉

武器 剣 槍

属性 火属性 光属性

補助 成長補正 主神の加護 連携



名前 ライアット Lv26

種族 ハーフエルフ

〈能力〉

筋力値 33

器用値 26

機敏値 18

生命力 32

魔力値 30

〈スキル〉

武器 剣

属性 火属性 光属性

補助 指揮 詠唱短縮 連携 精神耐性



名前 シータ Lv20

種族 人間

〈能力〉

筋力値 13

器用値 21

機敏値 22

生命力 18

魔力値 36

〈スキル〉

武器 短剣 杖

属性 火属性 風属性 土属性

補助 詠唱短縮 詠唱維持 混乱耐性 精神耐性



名前 リフル Lv18

種族 人間

〈能力〉

筋力値 14

器用値 18

機敏値 18

生命力 20

魔力値 28

〈スキル〉

武器 杖

属性 光属性

補助 詠唱短縮 精神耐性

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