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こころの在り処

心はどこにあるのかについて

いつも考える。

ある人は頭の中にあるといい

ある人は体の中心部分にあるという。

心を視認できる私には心のようなものを見ることができるが

私が心だと思って見ているモノは本物の心なのか私にはわからない。

そもそも心ってなんだろう。



そんなことに思いを馳せながらぷかぷかと泳いでいると

チョウチンアンコウに出会った。

彼の心はどこにあるのかな。

「お出掛けかい。」

「そうだよ。この光がどっちに向かうのか気になってしょうがないのさ。」

「熱心で良いことだ。君は心って何だと思う。」

「そうだな。動くものじゃないかな。」

「君の提灯みたいにかい。」

「その通りさ。じゃあ僕はこれで。」

「さようなら。」

そうか。そういう考えもあるのか。動き回る心。興味深いな。

ならば心は自分の中にないのか。うーん。難しい。



そんなことを考えているとふいにクマノミの夫婦に声をかけられた。

「やぁこんにちは。今日も楽しそうだね。」

「やぁ。そうかい。あなた方もいつも通りでなによりさ。」

「ありがとう。」

「そうだ。クマノミさんは心って何だと思う。」

「そうだな…。」「そうねぇ…。」

二人はモノおもいにふけるような顔をするがそのうち顔を見合わせてこう答えた。

「「燃え上がるモノさ(だわ)!!」」

なるほど。いつかその燃え盛る火はどこかへ飛び火するのかもしれない。そうなったら嬉しいことだ。私にはよくわからないが。幸せならそれでいい。



またぷかぷかと泳いでいると次は大きなクジラに出会った。クジラは目を大きく見開きあわただしそうに、しかしゆっくりとこちらへ泳いでくる。

「くじらさんこんにちは。いつも海の秩序を守ってくれてありがとう。」

「いやいやそれが僕の仕事だからね。今日は僕の家に来ないのかい。みんな待っているよ。」

「今日は私も忙しいので。顔を出したらすぐに帰るよ。」

「そうか。それもいい。」

「ところでくじらさん。あなたは心って何だと思う。」

「そうだな。僕にとっての心は繋ぎ合わせるものかなぁ…。」

「くじらさんらしい答えだね。忙しいのにありがとう。それじゃあまたね。」

「また後でよろしく。それじゃあ。」

くじらさんもいろいろと考えているのだなぁ。私も頑張らなくちゃ。

それにしても今日の夜は楽しみだなぁ。誰がいるのかな。挨拶したら帰るとは言ったが、言いたいことは沢山あるし今日も長居することになりそうだ。



今日の夜に思いを馳せているとイカさんに出会った。

視力には自信があるがイカさんの心はいつも見えない。他の人たちよりも見えづらいといった方が良いか。イカさんはいろいろな事を考えすぎていて疲れているようだった。ただそんなイカさんはいつも楽しそうな顔をしているようにも見えた。そんなイカさんにはシンパシーさえ感じる。

「やぁイカさんこんにちは。」

「今はもう夕方を過ぎているからその表現は間違っている。こんばんはが正しい。」

「これは失礼。」

こんな釣れない態度も、悪態を憑く時の表情も私にはたまらない。

「イカさんは今日は何をしていたのですか。」

「いつも通りだ。ゆらりゆらりと泳ぎ回ってみなを観察していたのだ。」

「イカさんの目は綺麗ですものね。その目には何が見えているのですか。」

「何を言っておるか。当然すべてを見ていたのだ。」

「すべて。」

「全て。全部だ。用が済んだか。私は忙しいのだ。さっさと消えてくれなイカ。」

全てを否定するかのようにイカスミを吐き出し逃げようとするイカさんを私は追いかける。そんなイカさんも私にとっては大切だから。



ある日の海。ある夕暮れ。そんな海を二匹のイカが優雅に泳ぐ。その影はとても美しく、海全体が二匹の心を写しているようだった。

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