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シーン2で(はい)を選んだ場合、シーン4、逃走中にて


 ――マップ2で勝利後。


 一瞬はセイという少年に手がついたあなたですが、その時、一瞬だけあなたの動きが止まります。セイという少年が間一髪で《シャドウバインド》を発動させたのです。

 そして、あなたは思い出します。山脈に入る前にホネストからセイは《シャドウバインド》を得意としていることを。


 もしかして、彼だけは攻撃を放つ時以外でも《シャドウバインド》を放つことができるのか……あなたはそう結論付けました。だとしたら、このままトカゲのしっぽ斬りのように永遠と追い掛け回す事態になる……あなたの予想は当たり、動きが止まった瞬間、セイはあなたの手を振りほどいて逃げてしまいます。


 あなたと仲間たちは後を追いかけました。と、同時にどうにか話し合いで終わらないかと、あなたは速やかに投降することを勧めます。

 ですが、



セイ「ぜっーーたい、嫌です!! 下った途端にあのホネストさんは悪魔の笑みで善意を押し付けて、いろいろな事を無理強いするんでしょう!!!!」



 あなたは否定できませんでした。セイが言ったことはまさしく本当の事だったからです。だから沈黙するしかありませんでした。

 セイはそれを肯定と捉え、一層反抗の意思を見せます。すると、セイの背後にいた赤毛の少女も手を上げます。



ノエル「セイ!! 私も加勢するわ!!」



 火に油……まさに状況は苛烈し、もう収拾がつきません。仕方ない。あなたは一端落ち着かせるために、武器を手に取りました。

 だけど、



疾風「いい加減にしなさい!!!!」



 あなたは驚きます。なんと後ろについてきていた疾風が怒号を上げてセイを叱りだしたのです。セイもこれには驚きを隠せません。



疾風「隠忍自重(いんにんじちょう)……黙ってきいていれば、好き勝手に言います、ね」

セイ「し、疾風さん……?」

疾風「セイさん、は、『無理強い』と言いますが、セイさんが、今やっていることは、ただ、『駄々をこねている』だけ、です。それは、無理強いでは、ないのですか?」

セイ「うっ……そ、それは、そうですけど」



 あなたはその疾風の気迫に息をのみました。今、あなたの後ろで業を煮やしている彼女は触れれば火傷しそうなほど闘志を燃やしています。



疾風「冷静沈着……それでも、逃げるというのなら、私も、それ相応の、対処を、します!」



 それは冷静沈着ではなく、八つ当たりというのではないか……とあなたは思いましたが、とても言い出せる雰囲気ではなかった口には出さないようにしました。


(EXスキル「百鬼夜行」の条件2を達成しました)


     ◇


 その一方。


 山脈の外……野原にはアライアンス第三分室の一時的なベースキャンプがありました。ホネストはそこであなたたちの活躍を見届け、朗報を待っています。その傍らでは、今もなお、罠にかかった所属《冒険者》の救助活動が並行で行われていました。


 そこから肌が褐色の《冒険者》がホネストに近寄ってきました。その《冒険者》はこの異世界セルデシアでは《狼牙族》と呼ばれる種族の《冒険者》でした。


 そんな狼牙族の冒険者はホネストに問います。



狼牙族の冒険者「彼ら、捕まりますかね?」

ホネスト「まぁ、大丈夫だろ。呼び寄せた者もいるし、さっき疾風が合流したという連絡も入った」

狼牙族の冒険者「疾風さんが?」



 狼牙族の冒険者は辺りを見渡します。確かに彼女はこのベースキャンプにはいませんでした。



狼牙族の冒険者「でも、確か疾風さんって戦闘力は皆無でしたよね?」



 そして、狼牙族の冒険者は疾風さんのステータスを思い出しながら、言いました。ホネストは首を縦に振ります。ただ、彼は補足するように、ある問いから彼女の事を口走りました。



ホネスト「君はコレクターという存在を知っているかな?」

狼牙族の冒険者「確か、生産職の中でも異色な者ですよね? 自分の好きなものを全て集めて鑑賞するコレクター(収集家)だと……」



 それは水薬から武器、雑貨まで……ゲーム時代と合わせれば、この世界セルデシアでは膨大のアイテムがあります。そして、それを収拾、生成する生産職の方も多くいました。もちろん収集家も多くいました。疾風はその一人であり、その道中でホネストに出会った人物でもだったのです。

 ホネストは首を縦に振りました。だけどそれだけではありません。



ホネスト「……でも、疾風はその中でもさらに異色だ」



 『と言いますと?』……狼牙族の冒険者は問い返します。その直後、ホネストは少しの間だけ身震いをしました。



ホネスト「……疾風は、な。召喚生物の収集家なんだ。大規模戦闘(レイド)級以外の召喚生物は大体持っているんだ……」



 狼牙族の冒険者は首をかしげました。それのどこが異色なのだと?

 けれど、ホネストは悪夢を見るように頭を抱えます。



ホネスト「……そして、疾風は自身が戦う時、その生物を全部(、、)出そうとするんだ」

狼牙族の冒険者「え?」



 その時、狼牙族の冒険者は異様な音を聞きました。それは山脈から聞こえ、まるで悲鳴のように響きます。

 それを聞いて狼牙族の冒険者は嫌な情景を思い浮かべました。大量の召喚生物が呼ばれ、次々と罠の犠牲になっていく情景を……。



狼牙族の冒険者「……あの、何か鳴っていますが」

ホネスト「気にするな」

狼牙族の冒険者「……一応、見に行った方が良いような気がしますが」

ホネスト「地獄絵図を見たいのか」



 ホネストの言葉は狼牙族の冒険者の予想を肯定しているのと同義でした。

 狼牙族の冒険者は尚も鳴き声が響く山脈を見て、両手を合わせます。



狼牙族の冒険者「南無……」



 その後、あとからになって、狼牙族の冒険者は疾風の二つ名が「百鬼夜行」と言うのを知るのだった。


     ◇


(EXスキル「百鬼夜行」が使えるようになりました……誰か一人を選び、その一人に障壁100を与える。効果が切れた場合、また別の一人に発動できる)


(バトル発生:マップ3へ)



 ――勝利後。



セイ「こ、これは…………」



 セイとあなたは目の前の惨状に絶句します。あなたの周りでは疾風の召喚した生物が罠にかかり、もしくは体力の限界を感じて大量に倒れています。それはぞろぞろと続き、その先に疾風がいます。さながら絵巻に描かれる『百鬼夜行』のようでした。

 あなたはセイに降伏するよう言います。その様は威圧するものではなく、懇願するかのようでした。まるで、もうこんな醜い争いはみたくないと言いたげです。


 その気持ちはセイも同じでした。サラマンダーは《噴水口(ウォータージェット)》に球のように転がされ、ウンディーネは《不思議な杖立て (ワンダフルワンダー)》の火炎魔法を受け逃げまどい、かわいいカーバンクルやセイレーンは味方の誤爆を受けて見事に倒れています。

 その酷いありさまを目の前にして、罠を設置したであろう金髪の少女はセイの後ろで「ごめんなさい、ごめんなさい……」と召喚生物に頭を下げ、赤髪の少女は「何も見てない、何も知らない……」と初めから見なかったふうに両手で顔を隠しています。



セイ「そうですね……やめましょう。こんな醜い……泥を泥で洗うような戦いはもう見たくないです。こんなの悲しすぎる、とくに召喚生物が……」



 そういうとセイは武器を収めて、両手を上げました。そして、そんな彼とあなたは目が合い、なぜか意気投合します。同じ厄介ごとに関わった者同士、シンパシーを感じたのかもしれません。そうして、あなたはセイと握手し、和解しました。




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