二人のクリスマス
「メディファースト、お先にどうぞ」(※メディとはレディの男性版です)
彼女はスマートにボクを先に店内へ入らせます。
元の世界だったら、まるでお姫様扱いです。
ちょっと恥ずかしい。
今日の夕食は、彼女が予約してくれたホテルの展望レストラン。
『わぁ~フレンチだ』
ギャルソンに案内され、店内を進みます。
『彼女とボクって、美女美男のカップルみたい』
お酒も入っていないのに、なんだか酔いしれてしまします。
席に案内されると、ボクは壁側のフラットシートに案内され、彼女は反対側の椅子に座りました。
フレンチってなんだか男性上位で、彼女に申し訳なくて落ち着きません。
「席を交換しましょうか?」
「いや、このままでいい」
優しい彼女。
食後のコーヒータイムで、いよいよプレゼント交換です。
ボクのプレゼントは手編みのマフラー。
ひと編み、ひと編み、彼女への思いを込めて編んだもの。
お小遣いの少ないボクは悩んだ末、手作りにしたんです。
「うお、スゲー。これ自分で編んだのか」
彼女の嬉しそうな顔が眩しい。
よかった、喜んでくれて。
そして、彼女からのプレゼントはハートのペンダントがついたネックレス。
素敵!
最近ボクは、こういうかわいいものにも抵抗がなくなって来ています。
元の世界だったら、女ぽくって、とても考えれられなかったけど・・・
今では、かわいいものを見ると、なんだか嬉しくて幸せな気持ちになります。
嬉しい。
でも、何だか高そうな感じ。
「結構、高かったんでしょう?」
「こら、そういうこと言わないの」
怒られちゃいました。
値段のこと言うなんてヤボだもんね。ボクったら、なんてバカ!
でも、きっと彼女ったら、バイト頑張ったんだろうなぁ。
「今ここで、ボクに着けてください」
ボクは思い切って彼女に頼んでみます。
恥ずかしがる彼女だったけど、渋々OKしてくれました。
「カチリ」
首の後ろで、留め金を止める小さな音がします。
嬉しい!
ボクはハンドバックからハンドミラーを取り出して見てみました。
ちょっとよく見えない。もっと、全体が見たい。
「ちょっと、お手洗い」
ボクはトイレのふりをして、洗面台の鏡で見てみます。
ボクの胸元に、銀色に輝くハートマーク。
素敵!
まるで結婚式で花婿さんがつける結婚首輪みたい。
ボクは指先にそっとキスして、その指をハートのペンダントに押し付けました。
ありがとうございます。このネックレスは一生大切にします。
愛しています。




