王国との決戦21
アルドは空間転移で現れた。
隼人、ライラ、セーラは不可視の魔法で見えなくなっていたが、アルドはすぐに3人に気づいた。
アルドが右腕を払うと、風の刃が襲ってくる。隼人は、防御魔法で、風刃を弾いた。ライラがバスタード・ソードを抜いて、アルドに斬りかかる。
隼人は、セーラの周囲に防御魔法を展開させてから、ロスコーたちが潜伏している地点まで飛ばそうとした。
だが、そのまえにロスコーから思念伝達で報告が入った。ロスコーたちもすでに交戦に入っているということだ。憲兵たちの指揮を執っているのは、憲兵長のニグアだという。
どうやらアルドたちは、隼人たちが大王宮に侵入していることを知っていたようだ。そこで、隼人たちに奇襲を仕掛けてきた。
隼人は、そのことをライラに伝えた。
ライラは、アルドに斬撃を飛ばしながら、言った。
「撤退する?」
隼人はライラの提案について一考したが、すぐに首を横に振った。
「いや、ここでアルドとニグアを叩いておこう」
「けど、戴冠式は取りやめになってしまったのよね?」
「まだ、そうと決まったわけじゃない。もしかすると、アルドたちは、おれたちが侵入していることを王族たちに伝えてないかもしれない」
ヤミ金ギルドが大王宮に入り込んだ、ということは、憲兵長のニグアや大魔術師のアルドにとっては、失態だからだ。ここで隼人たちを殺してしまえば、わざわざ王族に報告する必要はない、と考えている可能性は高い。
隼人は、ライラを援護する形で、アルドに攻撃魔法を放った。
「ここで、アルドを倒す」
「わかったわ」
隼人は、アルドの防御魔法を貫くため、強力な攻撃魔法陣を作った。その間、ライラがアルドと戦闘を行う。だが、アルドのほうが戦闘ステータスは高いらしく、ライラは劣勢に立たされていた。
隼人は、思念伝達でライラに命じた。
『伏せろ』
ライラが伏せたところで、隼人はアルドへと雷系と炎系を混ぜた攻撃魔法を放った。アルドは横に跳んで回避するが、攻撃魔法は追尾して、アルドに命中した。アルドの防御魔法が粉砕するが、アルド自身はまだ、無傷のままだ。
隼人はライラに追撃を命じようとしたが、ロスコーからの思念伝達が遮った。
ロスコーからの報告を聞いて、隼人はライラに言った。
「ロスコーの隊が半数を削られたようだ。ニグア率いる憲兵は、50人近くいるらしい」
「一気に叩きにきたみたいね。どうする、隼人?」
「ロスコーに加勢に行こう」
隼人は、ライラとセーラとともに、ロスコーたちのいる森林まで飛んだ。隼人が読んだとおり、アルドも空間転移で追ってくる。
隼人は、ここでアルドとニグアをまとめて片付ける考えだった。