王国との決戦19
隼人は、ひとまず最も重要な質問をした。
「戴冠式は、大王宮のどこで行われるんだ?」
自白魔法が完全に効果を発揮しているようで、ゴルはうつろな目をしていた。そのままの状態で、ゴルは事務的に答えた。
「アゾナンだ」
隼人はライラに言った。
「アゾナンって、どこだ?」
ライラが溜息をつく。
「あたしが知るわけがないわ」
「大王宮の地形図なら、探索魔法で作ってあるんだがな。名称というのは、知らないんだ。セーラに聞いてみるか。いや、それよりゴルの記憶をのぞいたほうが手っ取り早い」
「記憶をのぞくなら、自白魔法はいらなかったんじゃない?」
ライラの言うとおりではあった。しかし、隼人は自白魔法を一度は使ってみたかったのだ。
隼人は、ゴルへと片手を差し向けた。自白魔法のおかげで、ゴルは抵抗する気配はない。これだけのためでも、自白魔法の価値はあった。
やがて、ゴルの記憶でアゾナンというところを確かめた隼人が言った。
「大王宮には、そこのポイントからのみ移動できる別の次元があるようだ。別次元というのは驚いたな。戴冠式という大きな儀式をやるのだから、特別な場所だろう、とは思っていたが」
ライラが難しい顔をした。
「考えてみると、これで終わりなのよね。かなり苦労して、ゴルをさらってきたのに。もう尋ねることがなくなってしまったわよ」
隼人は、ライラを見た。
「もちろん、これだけで終わらせるつもりはない。戴冠式の手順なども、ゴルの記憶を見ることで理解しておこう。おそらく、手順はそう変わらないだろうからな」
隼人が、ライラに言ったことを実際に行おうとしたときだ。ゴルが唸り声をあげて、立ち上がった。隼人は一歩、後ろに下がった。
「自白魔法の効果が切れたな」
ライラがバスタードソードを一閃させて、ゴルの首を切り落とした。
ライラがほほ笑んだ。
「ほら。準備しておいて良かったでしょう?」
隼人は肩をすくめるだけにしておいた。
その後、隼人は大王宮へと赴くメンバーを選出した。ライラ、セーラ、ロスコー、この三人は欠かせない。そのほかにも、幹部を中心に選んだ。
現在のところ、ヤミ金ギルドと敵対する大きな組織は、いない。王国を除いては。そこで、隼人たちが大王宮にいるあいだは、ヤミ金ギルドのことは、数名の幹部に任せておけた。
戴冠式を翌日に控えた日、隼人は、大王宮へ向かうメンバーを拠点⑤に集めた。すると、いつのまにかルカの姿もあった。
隼人はルカに言った。
「来ないかと思った」
ルカはウインクした。
「ボクは、こういうイベントには欠かさず出るよ」
隼人は、ほかのメンバーを見まわて、言った。
「では、決着をつけにいくか」