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王国との決戦17


 張り出し陣に、変装したゴルがいる。


 そう結論がついたところで、隼人とライラは張り出し陣に戻らねばならなくなった。だが、その張り出し陣のほうからは、ロクシア兵士たちが追ってきている。


 このまま引き返せば、鉢合わせすることになる。隼人が探索魔法をかけたかぎり、追手は一個小隊のみ。そのていどの規模ならば、追手のロクシア兵士たちを蹴散らすことは容易い。


 が、そこで無用な戦闘をしてしまうと、こんどは主力部隊を相手取ることになる。最終的には、〈ガルダ〉城塞に攻め入ったロクシア軍そのものと戦争することになりかねない。


 それでも、勝利する可能性のほうが高い。

 とはいえ、その戦闘は、隼人の、すなわちヤミ金ギルドの目的とは、かぎりなく反するものだった。

 

 そこで隼人は、別の策を講じることにした。


 隼人は、〈ガルダ〉城塞全体に探索魔法をかけて、完璧な見取り図を作った。

 この見取り図によると、封鎖された通路と階段があり、それを使えば、追手をかわして張り出し陣に向かえるはずだ。


 そのことを、隼人はライラに説明した。


 当のライラは、すっかり戦闘モードに入っていた。そのため交戦を避ける手があると知って、拍子抜けした様子だった。


「残念だわ。久しぶりに、本気を出そうと思ったのだけど」


「そのやる気は、王族殲滅作戦のときまで取っておけ」


 ライラは微笑んだ。

「やっぱり、殲滅作戦なのね」


 隼人は、見取り図に従って、封鎖通路の入り口を目指した。封鎖のため、煉瓦の壁が築かれている。隼人は破壊魔法で壁を壊し、ライラとともに隠し通路に入った。


 それから、いま壊した壁を再生魔法で戻しておく。これで、追手を撒けるはずだ。ちょうど追手たちが、隼人たちの入った隠し通路の前まで来たところだった。


 だが、追手たちは隠し通路の入り口には気づかず、そのまま通り過ぎて行った。


 隼人とライラは顔を見合わせた。


 ライラが言った。

「うまくいったみたいね」


 隠し通路には灯りがなかったので、光の魔法を出す。それから隼人とライラは、隠し通路から隠し階段へと移動し、再度、〈ガルダ〉の上階を目指した。


 隠し階段の終わりに、また煉瓦で封鎖されたところがあった。ここが出口だろう。隼人は、封鎖された出口の外を、探索魔法で確認した。誰もいないのを確かめてから、破壊魔法で煉瓦を壊す。

 

 隼人はライラに言った。

「ゴルが変装しているなら、魔法でなければ見抜けない」


 ライラはうなずいた。

「なにか、考えがあるの?」


「真実を見る魔法を、おれとお前の目にかけておこう。これなら、真の姿を見ることができる。ゴルがいたら、一発でわかるはずだ」

 ゴルの姿は、すでにライラに思念伝達を利用して、正確に伝えてあった。


「それでゴルを見つけたらどうするの?」


「当初の計画は、ゴルの好意で話を聞くというものだったんだがな。こうも、こじれてしまうと、それは難しそうだ。そこでいったんゴルを拉致しようと思う。お前のバスタード・ソードの刃に、衝撃魔法陣を仕掛けておこう」


 隼人が、ライラのバスタードソードに手をかざすと、ライラは嫌そうな顔をした。

「あたしの剣になにをするのよ」


「そのままだと、ゴルを斬り殺しかねないからな。ゴルを気絶させる程度の衝撃を放つようにする」


「ゴル以外の敵兵にも、そうしろ、というの?」


 隼人は溜息をついた。

「わかった。じゃ、こうしよう。通常は、いつも通りの切れ味だ。ただし、お前が『発動』といったら、おれが仕掛けておいた衝撃魔法が発動する」


「ゴルに斬りつけるときだけ、『発動』と言っておけばいいわけね。それなら、受け入れられるわ」


「間違っても、ゴルを斬り殺すなよ」


「了解」

 

 隼人とライラは通路に出た。

 ここからさらに、一階分上ったところが、張り出し陣に通じている。

 

 張り出し陣は、その名のとおり、大城塞〈ガルダ〉から、ロクシア国側へと張り出された場所だ。

 そこから〈ガルダ〉の指揮官が指揮を執るのだが、すでに進軍してきたロクシア軍によって、ほとんどの〈ガルダ〉の憲兵は制圧されてしまっていた。


 隼人とライラは、慎重な足取りで階段をのぼり、張り出し陣を見ることのできる場所まで移動した。隼人たちのことは、いまごろ追手が捕らえるなり、殺すなりしている。そう思い込んでいるらしく、ロクシア軍の主力部隊は、こちらのほうには意識を向けていなかった。

 

 いまは、ロクシア軍の主力部隊の指揮官が、〈ガルダ〉側の指揮官になにかを問い詰めているところだ。そのロクシア軍の指揮官のそばに控えている、ロクシア兵だが。彼の姿は、真実の目で見ると、まったく異なっていた。変装しているのだ。

 さらに、真の姿こそ、ゴルだった。


 隼人はライラに目で合図した。ライラもゴルを発見したようで、うなずいた。


 隼人は小声で言った。

「おれがまわりの雑魚を片付ける。お前は、ゴルを気絶させろ」


「そのあとは?」


「おれが気絶しているゴルの身体に空間転移をかける」


「空間転移は、今朝、出発した宿の馬屋に通じているのよね」


「ああ。ゴルを送ったあとは、おれとお前も空間転移で脱出するとしよう」


 ライラは微笑んだ。

「賛成ね。もう、この大城塞にはうんざりだわ」


 隼人とライラは同じタイミングで、張り出し陣へと飛び出した。

 隼人は、攻撃魔法を連射して、ロクシア兵の目を晦ませる。その隙に、ライラがゴルのもとへと直進した。


 ゴルは、ライラが迷うことなく向かってくるので、驚いたようだ。だが、すぐに己の変装魔法が気取られた、と気づいた。


 ゴルは、ライラに向かって攻撃魔法を放った。ライラはゴルの攻撃の回避に成功するも、これによってスピードが鈍った。

 その間に、ゴルが逃走に入ろうとする。だが、ゴルの動きを読んでいた隼人は、事前に詠唱しておいた遠距離型の攻撃魔法を、ゴルに放った。

 

 ゴルは防御魔法で、隼人の攻撃を弾いた。この防御動作のため、ゴルの動きが停止する。

 そこをすかさず、ライラが「発動」と言ってから、斬りつける。衝撃がゴルを貫いた。

 

 ライラが声を張り上げた。

「隼人! ゴルをやったわよ!」


 隼人は、ロクシア兵たちに威嚇のための攻撃魔法を放ちつつ、気絶したゴルを空間転移した。

 

 つづいて、ライラも空間転移する。それから隼人は、ロクシア主力部隊の指揮官を、炎の矢で射抜いた。それがキッカケで、降伏していた〈ガルダ〉憲兵たちが反撃に出る。

 これでロクシア軍は撤退するだろう。

 ロクシア軍が本格的に攻め込んできては、戴冠式まで延期されるかもしれない。隼人しては、それは避けたかったのだ。


 最後に、隼人は自分自身も空間転移した。


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