王国との決戦14
張り出し陣にいると、戦いに参加させられそうなので、隼人とライラは城塞内に引っ込むことにした。
〈ガルダ〉の指揮系統は必ずしも統一されていないようで、自分の持ち場を探している兵士までいた。
どうやら、この混乱の原因として、魔術師ゴルの不在が大きいらしい。
隼人は、何人かの兵士を捕まえては、ゴルの話を聞いてきた。そのさいには、戦闘服の階級章に注意した。
階級の低い兵士は、「ゴルとは誰だ」という感じだ。これが階級が上がってくると、「ゴルがどこにいるのか、こっちが是非とも聞かせてほしい」となる。
隼人とライラは、戦闘の音が鈍く聞こえる程度まで、城塞の奥のほうへと引っ込んだ。
隼人は、ライラに意見を言った。
「どうやら、階級が上になるほど、ゴルの不在が響いているらしいな」
ライラはうなずいた。
「通常の指揮系統には、ゴルは含まれていないのね。だから、階級の下のほうにいる兵士には、ゴルがいないことがピンとこないのよ」
「だが、実際は指揮系統の上のほうで、影響力があったんだな。ところが、そのゴルがいきなり消えてしまったのか。それも隣国ロクシアが攻め込んできた、このタイミングでだ」
「ロクシア側の尖兵に捕まったのかしら?」
「またはロクシアと、ゴルが通じていたのか、だな。さて、兵士の何人かの記憶を覗いて、ゴルの姿形は見させてもらった。これでゴルを探索する魔法が使える」
そのとき、隼人とライラのそばを、ロクシア軍が投石機で飛ばした大岩が、石壁を破壊しながら転がっていった。
ライラが、その大岩を見てから言った。
「探すなら、早くしてほしいわね。あたし、こういう大規模な戦争は好きじゃないのよね。暗殺ギルド出だし」
隼人も、ライラと同じ考えだった。
「この戦争は、ヤミ金ギルドには関係ないものだしな」
隼人は、さっそく探索魔法を放った。
まずは大城塞〈ガルダ〉内に探索の触手を伸ばす。だが、ゴルの姿はない。
そこで、〈ガルダ〉の外へと探索触手を向けることにする。まずは王国内に向けたが、探索魔法の限界まで広げても、反応はなかった。すると、攻め入っているロクシア軍のほうではないか。だが、そちらに探索魔法を向けても、空振りだった。
隼人は一考してから、結論した。
「ゴルの奴、探索魔法を回避する魔法を使っているようだ」
ライラは不機嫌そうに言った。
「それなら、どうやってゴルを見つけるの?」
隼人が答える前に階下のほうが騒がしくなった。「敵が攻め入ってきたぞ!」や「殺せ!」などという怒号が聞こえる。
ライラが言った。
「ロクシアの連中、こっちの近衛隊を蹴散らして、〈ガルダ〉内に入ってきたみたいね」
隼人は言った。
「どんどん面倒なことになってくるな」