王国との決戦13
隣国ロクシアが攻め込んできたということで、大城塞内は大騒ぎとなった。ひとまず隼人とライラは、ほかの兵士に見つからないところに隠れることにした。
隼人は疑問を口にした。
「しかし、だ。ロクシア軍もなぜ、わざわざ大城塞〈ガルダ〉のあるところを選んで、攻め込んできたんだろうな」
ライラはうなずいた。
「まぁ、そうなのだけど。ただ、高い壁を超えるよりも、この〈ガルダ〉を突破したほうが、進軍しやすいのではないか。という意見は、こちらの王国内でもあったのよね。あたしたちギルド民には、あまり関係のないことだから、詳しくは聞いたことがなかったけれど」
「守りを固めたはずが、守りを薄くしたのか?」
「という意見もある、というだけ」
隼人は肩をすくめた。
「まあ、ロクシア軍のことは忘れよう」
大城塞全体が揺れて、天井の一部が崩壊し、隼人とライラのいるそばを大きな岩が通過していった。ロクシア軍が、投石機で飛ばしてきた大岩のようだ。
ライラは、その大岩が大城塞に与えた損害を見ながら、言った。
「忘れる、というのは難しそうよ」
「そのようだな。だが、おれたちの目的は魔術師ゴルを見つけることだ。そうか。敵軍が攻めてきているのだから、ゴルも防衛ラインに出て、指揮をとっているはずだ」
「そうでなくては、ここにいる必要がないものね」
そこで隼人とライラは、隠れていたところから出て、階段を駆け上がった。途中、すれ違おうとした憲兵を呼び止める。
「魔術師ゴルは、どこにいるんだ? 防衛ラインに出ているんだろ」
憲兵の返事はそっけなかった。
「さあな」
「なら、守りの第一次ラインはどこにある?」
「張り出し陣に集結しているようだ。上だ。上に行けば、張り出し陣がある」
「そこにゴルがいるわけだな」
「だから、それは知らないと言っているだろう」
憲兵はそれだけ言うと、駆け下りて行った。
隼人はライラと顔を見合わせた。
「魔術師が指揮をとっていたら、兵士は、知らない、なんて答えるか?」
「あたしに聞かれても困るわよ」
「とにかく、張り出し陣に行ってみるか」
張り出し陣は、王国の外側、つまりロクシア国側へと張り出している場所だった。位置としては、〈ガルダ〉のもっとも高いところにある。ここからなら、戦況を一望できそうだ。
張り出し陣には多くの兵士が集まっていた。投石機などもあり、何人もの兵士たちが投石機を操作して、ロクシア軍に向かって、大岩を打ち出している。ただし、大岩のストックは少ないようだ。
隼人は、近くにいる兵士をつかまえて聞いた。
「ゴルはどこだ?」
兵士は首を横に振った。
「ゴル? 知らないな」
「まさか大城塞の防御は、投石し返しているだけなのか」
「いや。これから騎馬隊が打って出るそうだ。それを弓隊が、ここから援護する」
「そうか」
その兵士を行かせてから、隼人はライラに言った。
「魔術師がいたら、ふつう、魔法攻撃を中心にして、防御するものだよな?」
「まあね」
「で、その魔術師はどうした?」
ライラは肩をすくめた。
「あたしに聞かれても困るわよ」