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王国との決戦9


 ルカとの話し合いの翌日、隼人は1人、拠点②にいた。

 

 最近は、1日のほとんどをこの拠点②で過ごしている。

 ヤミ金ギルドの顧客の窓口となっているのは拠点③で、そちらはロスコーの担当だ。ただしロスコーに完全に任せきりというわけではない。

 ロスコーは優秀だが、かつてのナンバー3だったトムズほどではないので、定期的にライラに監督しにいってもらっている。 

 

 隼人は、椅子に深く座りながら、戴冠式の行われるところの広さについて考えた。その広さと同じくらいの攻撃型の魔法陣を、展開できれば良い。それなら、誰も逃さない。

 ただし、このやり方だと、無関係の人間も巻き込みかねない。できることなら、狙うべき46人の王族だけを仕留められれば良いのだが。


 考え込んでいると、セーラがやってきた。セーラの表情を見ると、なにか問題が起きたらしいことがわかる。


 隼人は尋ねた。

「どうかしたのか?」


 セーラはうなずいた。

「はい。両親からの返事がありました。戴冠式の行われる場所について、です」


 戴冠式の日取りは、このままヤミ金ギルドの企みが気取られたりでもしないかぎり、いまから25日後だ。できれば、戴冠式の前日には、〈大王宮〉入りしておきたいところ。


「ご両親は場所を覚えていたのかな?」

 いまのところ、戴冠式の行われる場所の情報は、セーラの両親が頼みの綱だ。

 だがセーラの浮かない表情からして、順調にいっているようでもない。


「じつは戴冠式には、空間転移で連れて行かれたそうなのです。上位の王族はどうかはわかりませんが、中位から下位にかけては、皆そうだったようです」


 安全策はすでに講じられていたようだ。空間転移で移動して、戴冠式の行われる会場(のようなところ)の中に出た、となると。そこが〈大王宮〉のどこだかは、わからないだろう。


「すると、セーラのご両親からは、戴冠式の場所はわからないな」


「はい。申しわけありません」


「いや、君のせいじゃない。ただ、どうしたものかな──まてよ、空間転移があったということは、空間転移を行った魔術師がいるはずだ」


 おそらく、ルカだろう。

 当時から、ルカは大魔術師だった、という話だ。

 考えてみれば、ルカなら戴冠式の場所は知っていて当然だ。ただし、これで問題解決とはならない。


 ルカは、隼人たちに同行する、と言っている。

 だとすると、戴冠式の場所も、作戦決行の日になって、はじめて明かしてくる、ということもありえる。これだと決行日までは、いくら聞いてもルカは教えてくれないだろう。


 隼人はつぶやいた。 

「まぁ、ルカに聞いてみないとわからないが。案外、簡単に教えてくれるかもしれないし。なにを考えているのか、いまいち読めない性格だから。ルカは」


 セーラが言った。 

「それで、両親に空間転移を行ってくれた魔術師の方ですが」


「ルカ、という名前の少女のことだろう」


「少女、ですか?」

 セーラは小首を傾げた。

「そういえば、以前、ルカさんという方とはお会いしましたね。あの方、そんな昔から魔術師をされていたのですか」


「魔術師だったそうだよ。しかし、君のその反応だと、君のご両親を空間転移で運んだ魔術師は、ルカではないのか?」


「はい。手紙には、空間転移した魔術師はゴルという方だそうです」


「ルカじゃなかったか。空間転移は、すごく高等な魔術だから、並みの魔術師ではできないはずだが。そのゴルという魔術師は、なかなかの実力者のようだ」


「手紙によると、凄くお歳を召された方だったとか。白い髭を長くのばしていたり」


 仙人のような姿を、隼人は想像した。

「そのころで老人か。だとすると、もう生きてはいないかな」


「いえ、まだご健在のようです。ただ現在は〈大王宮〉にはいないようです。噂では、追放されたとか」


「追放? そんなことができるのは、王か、または大魔術師のルカくらいなものか」

 しかし、これは幸運といえた。魔術師ゴルなら、戴冠式の場所を知っている。前回の戴冠式のとき、空間転移の魔法を使ったのだから。戴冠式の正確な座標を知ってなければ、空間転移などはできない。

 それに〈大王宮〉から追放された身なら、王族たちに義理立てする必要もないだろう。


「ゴルから話を聞いてみよう。ところで、彼はいまどこにいるんだ?」


「王国の西の果てです」


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