王国との決戦6
戴冠式の日取りが判明したとはいえ、計画実行には問題が山積みだった。王族を46人も殺そうというのだから(そのうち1人は、いまの王だ)失敗は許されない。
逆に成功すれば、その時点で、セーラが継承順位で1位となる。そのままセーラが即位することになる。そうなると、ヤミ金ギルドに敵はなくなる。
隼人とライラは拠点②で2人だけで集まり、計画について話し合っていた。
隼人は、計画のことをロスコーやセーラに話すのは時期尚早だと考えていた。
「実行するとして、戴冠式を行う場所がまだわからないのが問題だ」
ライラが首を傾げた。
「セーラから情報を得たのではないの?」
セーラが戴冠式の日取りを聞き出してくれたのは、昨日のことだった。
「ああ、日取りはな。ただし、戴冠式の場所は、まだ未定だそうだ。いや、未定というより、すでに決定しているが、まだおおやけになってない、ということらしい」
「ちょっと、わからないわね」
「セーラの話だと、戴冠式は普段は封鎖されている施設で行われるそうだ。〈大王宮〉でももっとも重大な儀式だから、それだけのための場所があるらしい。ただ、その場所のことをセーラは知らないんだそうだ」
「前の王、つまり、パラド王の戴冠式のときは──まだ、セーラは生まれてないわね」
パラド王が即位したのは、34年も前のことらしい。当然、セーラは生まれていないので、戴冠式にも立ち会っていない。
「けど、セーラの両親は、パラド王の戴冠式に出ているはずよね。セーラの両親から、なんとか戴冠式の場所を聞き出すことはできないかしら」
「とすると、さすがにセーラに計画を打ち明けなくちゃならないな。両親から戴冠式の場所を聞き出してくれ、というのだから、理由の説明は必要だ」
「この計画、セーラがもっとも重要なのだから、もう打ち明けるべきよ」
「セーラは反対するだろうな」
「なら説得することね」
「簡単に言うな」
隼人は、ライラを退出させてから、セーラを呼んだ。遠回しに話しても仕方ないと考えて、隼人はすぐに計画を明かした。
「この計画について、どう思う?」
セーラはしばし熟慮していたが、やがて恐る恐るといった様子で言った。
「それは戴冠式に集まった王族を皆殺しにする、という計画ですよね?」
「いや、いや。皆殺しなんかはしないよ。君より上位にいる王族46名を殺すだけで」
「ですけど、戴冠式を襲撃したら、すごく混乱すると思います。そのなかで、ターゲットとする46名が確実にわかったりするものでしょうか? それに1人でも逃がしてはいけないのですから、ここは徹底して、皆殺しにするべきでは?」
セーラの指摘ももっともだったので、隼人はうなずいた。
「まあ、そうかもしれない……ところで、君はこの計画に賛成してくれるのか?」
「わたし、考えていたのです。この国から、無益な争いはなくしたいと。これ以上、国内でゴタゴタしていては、他国に攻め込む隙を与えてしまいかねません。わたしが王になることが国内が平和になる最短の道だというのなら、わたしはその計画に協力します」
隼人はうなずいた。
「わかった。なら、まずは戴冠式の行われる場所を探るとしよう。もちろん、スイア側には知られずに、だ」