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王国との決戦5


「スイアの戴冠式なら、暗殺対象の46人が勢ぞろいするはずだ。そこを一気に奇襲をかければ、うまくいく、かもしれない」

 隼人は、ヤミ金ギルドの拠点②で、ライラにそう言った。

 

 拠点②にはほかに誰もいない。現段階では、セーラを王に即位させる計画を知っているのは、隼人とライラだけだ。ナンバー3のロスコーや、セーラ自身も知らされていない。


 問題のひとつに、セーラはこの計画に反対するだろう、ということもあった。まず、セーラは無駄に血が流れるのを望まないし、なにより王にはなりたくなどないだろう。

 とはいえ、この46人の王族を殺す計画が実現する可能性が、そもそも低いわけだが。

 

 それでも、あえて隼人は計画を進めてみることにした。

 実行さえしなければ、どこでも引き返せる。


 一方、元・暗殺ギルドのライラは、すでに乗り気だった。

「そうね。スイアの戴冠式は狙い目ね。一気に46人の王族を始末する。そうすれば継承順位は繰り上がって、セーラが1位となる。セーラが王となるわ。それで、すべての問題は解決する」


 ライラはすでに計画実行を決定したような様子だ。

 そこで隼人は、ライラの気持ちを静める意味もあって、計画実行の障害を口にした。

「しかし、いつ戴冠式が行われるかわからない」


 ライラは難しい顔をした。

「そうね。戴冠式がいつ行われるか、これを調べる必要があるわ」


「だが、そう簡単にはわからないはずだ。王族は、ギルド民や一般民に戴冠式の日取りを教えたりはしないだろうからな」


「だけど、セーラなら知ることができるのではない?」

 

 隼人は一考した。

 たしかに、セーラは王族だ。いまやヤミ金ギルドの一員ではあるが、王族から追放されたわけではない。そもそも、追放されていたら、ライラの計画は意味をなさないわけだが。


「セーラが知っているか、尋ねてみるか」


 その日の夜、隼人は拠点①で、セーラに尋ねることにした。

 というのも、いまだに隼人とセーラは拠点①で同居している状態だった。ほかの拠点ならいくらでも新しく作れるが、2人ともなんとなく、この生活に慣れてしまったのだ。

 

「セーラ、聞きたいことがあるんだ。ただ、君が知らなくてもいいんだけど」

 

 セーラは小首を傾げた。

「はい?」


「こんどスイアの戴冠式が行われると思うけれど、それがいつ行われるのか、君は知っているか?」


 セーラは申しわけなさそうに答えた。

「ごめんさない。ヤミ金ギルドに入ってからは、〈大王宮〉の情報はまったく入ってこないものでして」


「そうか。いや、いいんだ」


 ヤミ金ギルドをもってしても、46人の王族を一気に殺すというのは、無茶に思えていた。ただし、ヤミ金ギルドが独立するためには、ほかに方法がないのも事実。

 隼人としても、どうしたものか迷っていた。だが、セーラが戴冠式の日取りを知らないということで、悩むこともなくなった。計画は不可能だ。


 翌日、隼人はこのことをライラに伝えた。ほかには誰もいない拠点②で。

「セーラが戴冠式の日を知らない。だから、計画は中止する」


 ライラは残念そうに言った。

「戴冠式の日取りくらい、隼人の魔法で探れないの?」


「探れないことはないが、リスクが高い。スイアも、おれの魔法は警戒しているだろうからな。こちらが、戴冠式の日取りを探っていることを知られたら、その時点で、計画はおしまいだ」


 唯一、スイアに警戒を抱かせずに済むかもしれないのが、セーラ経由だったのだ。


 ライラは溜息をついた。

「わかったわ。この計画はあきらめて──」


 そのときだ。拠点②に、セーラが嬉しそうな顔で入ってきた。この表情は、ヤミ金ギルドのために働けたときによくしている。

 ということは。


 セーラが言った。

「隼人さん、戴冠式の日取りですが、わかりましたよ」


 隼人が返事する前に、ライラが言った。

「本当に? どうやったの? スイアに疑われていない?」

 

 セーラは小首を傾げた。

「スイアさんに疑われる? なにをですか? わたしはただ、王族の友人に手紙を送っただけなのですが。戴冠式はいつ行われるのでしょうか、と」


 ライラはうなずいた。

「それなら、スイアは気づいていないわね」


 隼人は聞いた。

「手紙のやり取りをしたにしては、随分と早かったね」


 セーラは答えた。

「お急ぎかと思いまして、ルーナに転移魔法を使ってもらいました」

 物質の転移は、生物の転移よりも容易い。ルーナならできて当然だった。


 隼人は溜息をついた。

「これで、ひとつ障害が取り除かれたわけか」



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