王国との決戦3
パラド王殺しを行ったのはヤミ金ギルドだろう、とスイアは考えている。
それは事実だが、スイア側に証拠はないはずだ。だがスイアはすでに王なので、証拠云々を持ち出しても意味はない。
ライラが隼人に思念伝達した。
『いまここでスイアを殺せば、今度こそ王国を混乱させられるわ。その隙に、ヤミ金ギルドは今後の計画を立てるのがいいと思うわよ』
ライラの提案に乗りたいところだったが、隼人は思念伝達で返した。
『それはスイアも予測しているだろう。スイアは、おれたちが自分を襲う危険性を踏まえたうえで、こうして一対一で会っている。なにか、対策を立てているはずだ』
隼人は、よく居室内を観察して、空間転移の魔法陣がひそかに設置されているのに気付いた。
『どうやら、おれたちがおかしな真似をしたら、自動でスイアは遠くに転移されるようだ』
隼人は、ライラに下手な動きはしないように注意してから、スイアに言った。
「おれたちはなにも知らないが、早くパラドを殺した犯人が見つかることを願っている」
スイアはうなずいた。
「そうか。わざわざ呼び出して悪かったな。感謝する」
それだけ言うとスイアは片手を振った。
隼人はライラと顔を見合わせてから、スイアの居室を後にした。
ライラが思念伝達で言った。
『王国もヤミ金ギルドがやったという証拠はないから、罠を仕掛けたのね。あたしたちがスイアを襲いでもしたら、空間転移が発動していた、ということなのね』
隼人はうなずいた。
『どうやら、そうらしい。空間転移の魔法陣が仕掛けられているのを見つけて良かった。それがなかったら、ライラの提案に乗ったかもしれない。しかし、少々厄介なことになったな。王国は、これからはヤミ金ギルドの監視を強めるだろう。独立するためには王国の不意を打たねばならないのに、それが難しくなる』
『スイアも、これまではヤミ金ギルドの味方とはいわなくとも、敵ではなかった。それが、パラド王の件で、変わるわね。もしかしたら、パラドのころよりも面倒かもしれないわ』
などと話し合いながら、隼人とライラはニグアに連れられて、〈大王宮〉を後にした。
ニグアは〈ギルド宮〉の前まで、隼人とライラを送った。
隼人はニグアに片手を差し出した。
「送迎に感謝する」
ニグアは顔をしかめてから、隼人と握手した。
「大人しくしていろよ」
ニグアが部下の憲兵を連れて去ってから、隼人はライラに言った。
「ニグアの記憶を覗いて、新しい魔術師の姿を確認した」
ライラが聞いた。
「知っている人物だった?」
「いいや。見たことはないな。男だったが。ルーナに聞いてみよう」
拠点に戻ったところで、隼人は新しい魔術師の姿を、ルーナに見せた。
ルーナはセーラに囁きで答えて、セーラが言った。
「アルドという人のようです。以前はナンバー2だった、とか。ステータスレベルは、ルカには遠く及ばなかったようですが」
隼人は言った。
「いずれにせよ、この魔術師のアルドと、憲兵長のニグアが、おれたちの目下の敵ということだ」