王の暗殺②
パラド王の暗殺を決めたのち、隼人はセーラと会い、雑談しながらこっそりと彼女の記憶をのぞいた。パラド王の姿を確認しておくためだ。
王とはいえ、ギルド民や一般民の前には姿を現さないため、姿はほとんど知られていない。
セーラに隠して記憶を見たのには、後ろめたさもあったが、王暗殺はライラ以外には知られてはいけない。そのため仕方のないことだった。
パラド王の姿を確認したところで、今度は探索魔法を使う。範囲を〈大王宮〉まで広げなければならなかったので、骨だったが。パラド王を〈大王宮〉の城、その最上階の寝室で見つけた。病で臥せっているとはいうのは、誤りではなかったようだ。
王暗殺は、三日後に決行することとなった。
この日までに、ライラはパラド王を病死に見せかけるための準備を行っていた。ライラの手段でうまくいかなかったら、隼人が行うという手もあった。
だが隼人が自分の魔法リストを検索したところ、毒で殺す魔法はたくさんあるが、どれも病死に見せかけるには目立ちすぎるものが多かった。毒殺された、と気取られてはまずいので、隼人の魔法も今回ばかりは役立ちそうになかった。
決行日。
隼人は嘘の用事をロスコーに言って、ライラとともに〈ギルド宮〉を出発した。
浮遊島にある〈大王宮〉は一日ごとに〈ギルド宮〉から離れていく。いまは、はじめて〈大王宮〉に行ったときから、30キロは北東している。
〈大王宮〉への侵入方法はこれまで通りで問題なかった。隼人とライラは素早く動いて、誰にも気づかれず、城塞を視認できる草地まで移動した。
つづいて隼人は不可視の魔法で、自分とライラを見えなくした。これで城塞内への侵入を容易にする。
これまでは〈大王宮〉にはルカがいて、唯一ともいえる障害だったが、いまはルカもこの地にはいない。おかげで、城の最上階、パラド王の寝室前まで、あっけなく入り込むことができた。
王寝室の前には衛兵がいたので、睡眠の魔法で眠らせておく。
隼人は言った。
「それで、ライラ。どういう手段でいく?」
ライラが言った。
「まず、パラド以外の邪魔者がいないか、確かめておいたほうがいいわ」
「それなら安心しろ。すでに寝室内の探索はすんである。いまはパラド王だけだ」
あとから邪魔者が来ないよう、隼人は、このあたりに人払いの魔法をかけておく。
ライラは道具袋から、小瓶を取り出した。
「パラド王の病気がどういうものか調べるのに苦労したわ。どうやらパラドは腎臓の病らしいわね。それで、この小瓶の中身よ。一滴、与えるだけで、腎臓の機能が低下するわ。急性腎不全で死亡したように見えるわ」
「なら、手早く済ませよう」
隼人は、王の寝室に防衛魔法がかけられていないかを確かめた。それからドアを開ける。
「念のためここで見張っているから、片付けてきてくれ」
ライラはうなずくと、寝室内へと入った。
隼人は寝室内へとときおり視線をやりながらも、意識は廊下のほうへと向けていた。
しばらくすると、ライラが戻ってきた。
「終わったわ」
「なら長居は無用だな」