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血なまぐさい強奪

 

 隼人とライラは、ある『魔法扉』前に立った。

 この『魔法扉』こそが、標的に定めた貿易ギルド拠点のものだ。


 ライラは腕組みした。

「これが第一の関門ね。『魔法扉』を提供しているのは、王国所属の魔術師よ。破るのは難しいわ」


 隼人は、『魔法扉』を破壊するにはどうすれば良いか、と頭の中で尋ねた。魔法が検索される。すぐ視界に、呪文が浮かび上がった。


 隼人は、さっそくその呪文を詠唱した。

『魔法扉』から蒸気が噴きだし、ついには粉々に砕け散る。


 ライラは楽しそうに言った。

「やるじゃない! この第一関門を突破できれば、あとは楽勝だわ!」


 ライラはバスタードソードのグリップを両手で握って、刀身を水平に倒した。その姿勢で、室内へと飛び込んでいく。


 隼人もライラに続く。

 

 隼人が拠点内に踏み込んだとたん、生首が視界を横切った。

 見たこともない男の生首だ。視線を転じると、胴体のほうが血を噴出しながら、立っている。やがて後ろへと倒れた。


 いま首を刎ねられたのは、ここの貿易ギルドの1人だ。

 ライラは、この男の首へと、バスタードソードを一閃させた。ライラの攻撃力は高い。たった一撃で、男のHPを0にしてしまった。

 結果、首が飛んだ。


 ライラは、必要であるなら殺す、という考えだと思ったが。いざ戦闘がはじまると、動くものは手当たり次第に殺す、というスタンスになるようだ。


 隼人は一考した。このまま、ライラに殺戮を続けさせるのも考えものだ。だが、敵に攻め入っている最中に、自分の副官を注意するのは問題外。

 だとすると、ライラが殺すより先に、敵を1人残らず戦闘不能にするしかないか。


 隼人がそう結論したときには、ライラはさらに3人を殺めていた。首を切り落としたのが2人、頭の天辺から唐竹割りしたのが1人。

 最後の1人の殺され方には、隼人は軽く吐き気を覚えた。日本にいたころの隼人ならば、とっくに失神しているところではあるが。


 さらに隼人は気付いた。ライラのバスタードソードだが、刀身が淡く輝いている。あれが異常な切れ味の理由か。

 ライラは、まるでバターでも切るように、敵をやすやすと切断している。それも剣に魔法がかかっているからのようだ。


 隼人が分析しているうちに、ライラはさらに4人殺していた。

 ここで奇襲に浮き足立っていた貿易ギルド員も、ようやく反撃の態勢を整える。暴れまわるライラに対して、一斉に火炎魔法を放ってきたのだ。


 隼人は、ライラを守らねばと考えた。防御魔法のシールドを、ライラのまわりへ張る。

 だが、ライラにはそんなシールドなど必要なかったらしい。

 

 ライラはバスタードソードを数閃させ、襲いかかってきた火炎魔法を吹き飛ばしてしまう。同時に、隼人が張った防御シールドさえも切断してしまう。

 ライラのバスタードソードを止めるには、もっと強度のある防御シールドでなければならないようだ。


 隼人は頭をかいた。

「副官に見惚れている場合じゃないか」


 隼人は、『複数の人間を一斉に気絶させるには?』と、脳内で問いかけた。魔法を検索。

 検索が終わり、呪文が視界に表示された。

 隼人は詠唱に入る。


 この間に、3人の貿易ギルド員が、隼人へと攻撃してきていた。1人は火炎攻撃を仕掛けてきたので、隼人は解除魔法で、その火炎を消した。

 残り2人は、武器で攻撃してきた。1人は手斧を、もう1人は短剣を使って。

 隼人は、手斧で斬りかかってきた男を、足払いして転ばせた。短剣の男は、その顔を軽く殴っておく。


 とたん、なにかが折れる音がした。隼人は加減を間違えたことを知った。いま殴った男だが、頚骨がへし折れたのだ。男はうつ伏せに倒れて、死んだ。


 これがはじめての殺しだ。

 隼人は、そう考えたが、とくに動揺することはなかった。


「悪く思うなよ」


 詠唱が終わり、隼人は拠点の全範囲へ魔法を放った(ただしライラだけは除外するようにして)。

 貿易ギルド員たち(まだライラに殺されていなかった者たち)が全員、引っくり返った。みな、一斉に気絶したのだ。


 見ると、ライラは返り血を浴びて、全身を朱に染めていた。


 ライラは隼人に微笑みかけた。

「まずまずな手際だったわよね。お互い」


 隼人は肩をすくめるにとどめた。

「君はやりすぎだ」


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