表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/84

〈魑魅〉乗っ取り戦①


 ヤミ金ギルド拠点に戻るとすぐ、隼人は幹部を集めた。そこでトムズの死を伝えた。

 ヤミ金ギルドの指揮系統からして、トムズの後釜となるべきナンバー3が必要だ。その役目を幹部の一人のロスコーに与えた。

 

 隼人は幹部たちに言った。

「トムズの死は残念だ。彼は、このギルドのために尽くしてくれた。だがいまは悲しんでいるヒマはない。ギルド・マスターが死んだことで〈メシア〉は解体、〈メシア〉を中核としていた反ヤミ金ギルド同盟は、解体された。だが、賭博ギルド〈魑魅〉を中心にして、再結成する可能性がある」


 ライラが言った。

「それは、トムズの仇であるルカからの情報なわけね」


 ライラは、隼人がルカを逃したばかりか、ヤミ金ギルドに入れたことをまだ受け入れていなかった。

 いずれにせよ、隼人はライラと議論するつもりはなかったが。


 隼人は言った。

「当初の計画に戻る。ヤミ金ギルドは〈魑魅〉を吸収し、連中の賭博場を奪い取る。同時に上位ギルド入りする。もちろん〈魑魅〉を乗っ取らなくても、ヤミ金ギルドが上位ギルド入りすることは間違いない。だが、〈魑魅〉の賭博場を所有できなければ、少しのあいだ足踏みすることになるだろう。それに、ヤミ金ギルドの今後を考えれば、賭博場は必要だ」


「〈魑魅〉のギルド・マスター、たしか名前はコウカとかだったわね。コウカの居場所は、つねにロスコーが追跡していたはずだけど」


 ロスコーが言った。

「反ヤミ金ギルド同盟が、我々に総攻撃を仕掛けてきてからは、コウカ自身は賭博場に潜んでいる様子です」


 ライラが怪訝な顔をした。

「だけど、〈魑魅〉は反ヤミ金ギルド同盟には加わっていなかったのよね。少なくとも、その時点では」


「おそらく、反ヤミ金ギルド同盟から密使が行ったのでしょう。ヤミ金ギルドが狙っているから、隠れていろ、と」


 隼人はうなずいた。

「反ヤミ金ギルド同盟としては、おれたちが〈魑魅〉を吸収するのは避けたかっただろうからな。すると、反ヤミ金ギルド同盟の残党が、〈魑魅〉の賭博場に集まっているかもしれない。おれたちを迎えうつために」

 隼人は、ライラとロスコーへと視線を向けた。

「お前たち二人だけ、おれについてこい。それとロスコー、もうナンバー3の後釜を考えるのはごめんだぞ」


 ここでセーラが、隼人に声をかけた。セーラは幹部会議には参加していなかったが、隼人のそばにいた。

「ルーナもお役にたちたいそうです。同行させてあげてください」


「ルーナが? たしかに王国付けの魔術師なら、戦力としては申し分ないが。いいのか、セーラ。君の友人が無事に帰ってこられる保証はない」


「わたしはルーナが帰還できると信じています」


 隼人は一考した。王国付け魔術師の管轄は、ルカだった。あのルカが、レベルの低い魔術師を部下にしていた、とも考え難い。


 隼人は、ルーナを見やって、直接問いかけた。

「わかった。同行してくれ」


 ルーナは目を伏せたまま、囁くように言った。

「あの……頑張り……ます」


 セーラが言った。

「ルーナは人見知りな子でして。わたしには普通に話せるんですが」

 

「わかった。思念伝達を試してみよう」

 思念伝達なら、人見知りが激しくとも関係なく、意志疎通ができるだろう。ところが、ルーナへの思念伝達魔法は、弾かれてしまった。ルーナが拒否したようだ。

 隼人は、ルーナに聞こえないよう声を落として、セーラに言った。

「セーラ、意志の疎通がはかれないと、戦場に連れていくのは難しいな」


「わかりました。わたしも同行します。わたしが、いわばルーナの通訳を行います」


 戦力にはならないセーラを連れていくのは危険だった、が。セーラは意志の強い視線を、隼人に向けている。これは、置いていくのは難しそうだ。


 隼人は溜息をついた。

「わかった。ルーナの通訳は、君に任せよう」

 それから隼人は、ライラ、ロスコー、ルーナを順に見てから、言った。

「よし、出発しよう」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ