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ヤミ金ギルドは拡大する


 隼人が異世界アルギナのオウス王国に転移して、半年が経過した。


 ヤミ金ギルドの顧客ギルドは、現在83ギルド。

 ギルドの顧客は大口顧客といえる。対して、小口顧客なのが、一般民だ。

 

 ヤミ金ギルドの拠点④は市街地に作ってある。一般民への貸付のためだ。空き家を借りて、そこを拠点④にしたのだ。カネの貸し借りの文化のなかったオウス王国だったが、いったん広まってみると、面白いように客が釣れた。

 一般民の顧客は、現在774名。ここまで顧客が増えると、ヤミ金ギルドも人員を増やす必要があった。


 そこで先日、ヤミ金ギルドは、下位ギルドのハンターギルドと洋裁ギルドを吸収した。両方とも、ヤミ金ギルドの顧客ギルドだったところだ。借金を膨れさせるばかりで、完済の目処のなかったところでもある。


 ヤミ金ギルドの規模が大きくなったところで、隼人は指揮系統を整理した。

 まず、不変なことは、トップがギルド・マスターの隼人。副官がライラ。ナンバー3の地位には、トムズ。


 トムズは、かつては中位の警備ギルドに所属していた。最近、隼人は知ったのだが、トムズのいた警備ギルドには〈疾風〉という名称があった。

 ヤミ金ギルドが最初に吸収したギルドこそが、この〈疾風〉だった。もう6か月は前のことだ。〈疾風〉のギルド員は、そっくりヤミ金ギルド員となっている。


 この元〈疾風〉の人員は、全部で17名。隼人はこの17名を幹部とした。ヤミ金ギルドの初期からの人員なので、信用が置ける。また中位ギルドの者だけあって、17名全員がまずまずの戦力を維持してもいる(ライラやトムズに比べれば雑魚ながらも)。


 さらに17名の幹部のもとに、吸収した下位ギルド(ハンターギルドと洋裁ギルド)のギルド員を分割して、部下につけた。

 こうして17の実働部隊を作った。

 ふだんは、この17の実働部隊が、取立てを行っている。


 だが、いまやヤミ金ギルドの顧客には、上位ギルドも含まれている。この上位ギルドの取立てには、ライラまたはトムズが指揮を執ることになる。それでも埒があかないときは、隼人が出向くことになる。


 ヤミ金ギルドは、2か月前に、中位ギルドへとレベルが上がっていた。

 ライラいわく、異例のスピード出世だそうだ。このかん、魔術師ルカは姿を見せていない。またセーラを狙っていると思われる宰相ビルドも動きはなかった。


 ただ、セーラの故郷である〈大王宮〉を、隼人は見る機会があった。この〈大王宮〉は浮遊島の上にあり、浮遊島は周期的にオウス王国の上を巡っているのだ。

 隼人が転移してきたときは、浮遊島は〈ギルド宮〉からでは見られない位置にあった。

〈大王宮〉が〈ギルド宮〉から見られるようになったのは、1か月前。

〈ギルド宮〉から見たかぎりでは、浮遊島の大きさは東京ドーム30個分、といったところだった。


 セーラは〈大王宮〉を見ると、複雑な表情になった。きっと帰りたいのだろう。だが、いまはまだ〈大王宮〉はセーラにとって安全な場所ではない。

 王族であるセーラだが、王族Aが王族Bを殺すところを目撃している。この王族A/Bの正体を、隼人はまだ聞いていない。いつかは知ることになるだろうが、いまはまだ必要のない情報だからだ。


 そして。

 転移してから6カ月と数日経った、ある日。

 隼人は市街地を歩いていて、ふと賭博場を見た。上位の賭博ギルドが経営している賭博場だ。5か月半前、ヤミ金ギルドのカモを釣るために利用させてもらった賭博場でもある。


 隼人はそばにいたライラに言った。

「あそこの賭博場、懐かしいな」


「知っていた、隼人? 少し前まで賭博ギルドは5ギルドあったの。ところがいまや賭博ギルドは1ギルドだけ。あの賭博場を経営している賭博ギルドだけになったのよ。この賭博ギルドの名前は〈魑魅〉。この〈魑魅〉が、ほかの賭博ギルドを吸収してしまったというわけ」


 前に来たときより賭博場が増築されていたが、それが原因のようだ。いまや〈魑魅〉は、最強のギルドの1つとなっているのか。


 隼人は笑った。

「じゃあ、おれたちが賭博ギルド〈魑魅〉を乗っ取るとするか」



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