第2段階終了
盗賊ギルドへの依頼の結果は、トムズ経由で隼人のもとに届いた。
トムズは、養殖ギルド員と偽って、ホポスとともに盗賊ギルドへ行ったのだ。
上位の盗賊ギルドは、7つあった。その中で、もっとも最適なギルドを、隼人とライラで話し合った。
それで結論が出たのが、盗賊ギルド『弩』だった。(同じ種類のギルドがたくさんある場合、このように識別できるよう名称をつけるところもある)。
『弩』の全体的な傾向は、挑戦を欲するタイプ。1日のうちに複数ギルドから全財産を奪取する、という依頼。たいていの盗賊ギルドならば、リスクを考えて断るだろう。だが『弩』ならば、難易度の高さに怯むことなく、受諾してくれるだろう。
また隼人とライラは、全財産強奪の標的とするギルドをすべて中位ギルドにした。
下位ギルドではのちに顧客にしても、大きく搾取できない。だが上位ギルドでは、盗賊ギルドの奪取の成功度が格段に下がってしまう(盗賊ギルドには成功してもらわなければならない)。
さらに中位ギルドも、戦闘に特化していないところを選んだ。以前の貿易ギルドのようなものばかりを、選択したわけだ。
そして、トムズからの報告。
予測どおり、『弩』は依頼を受けた。
『弩』は報酬として、前払いで300万G、後払い(成否を問わず)でも300万Gを要求してきた。ホポスは、隼人の指示に従って交渉。結果、前払い・後払いともに100万Gずつ(計200万G)まで下げさせられた。
かわりに、標的となる複数ギルドから強奪したカネの2割を、『弩』のものにして良い、とした。そのうえで『弩』が、強奪したカネを誤魔化さないよう、養殖ギルドの代表を同行させることに同意させた。代表として同行するのは、トムズだ。
隼人はトムズからの報告を聞いて、ふと疑問に思った。
「盗賊ギルドは、おれたちの依頼など関係なしに、ほかのギルドから奪えばいいのにな」
「盗賊ギルドといっても、依頼がなければ動けないのよ」
「依頼がなければ、か。だが、盗賊ギルドとは、ふだんはどこを標的にしているんだ? ギルド民は一般民を襲ってはいけないわけだろ」
「盗賊ギルドなんかは、ちょっと例外的なのよ。一般民からの依頼ならば、一般民を襲撃してもいいの」
「すると、殺してもいいのか?」
「殺すと罰金ね。もちろん盗賊業ゆえ荒っぽいことになるわ。だから、死人が出るのはしょうがないわ。それでも、できるだけ殺しは避けること。なぜか、わかる?」
隼人は一考してから、答えに行き着いた。
「殺しは、暗殺ギルドの領分だからか」
ライラはうなずいた。
「正解」
『弩』への依頼料だが、200万Gは大金だ。だが、隼人たちはすでに『弩』への依頼料を獲得していた(実は300万Gまでならあった)。
それは、養殖ギルドが盗賊ギルドに依頼する、3日前。
隼人とライラは、賭博場の前にいた。
賭博場を襲撃し、金庫室のカネを奪うことにしたのだ。
「ここで賭博ギルドと事を起こすのは、避けたかったんだが」
「仕方ないわよ。手元には盗賊ギルドの依頼料がないのだから。貿易ギルドから奪った分は、ほとんどが貸付に使ってしまったし」
いまのところ、貸し付けたカネはほとんどが回収していなかった。計画通りではあるが、いまが一番、ヤミ金ギルドは厳しいところだ。
隼人とライラは、仮面(市場で購入した)をかぶった。これで顔は隠せる。
「ライラ、あまり殺すなよ」
「了解」
ライラはバスタードソードを抜いて、答えた。
隼人は溜息をついた。ちゃんとわかっているのだろうか。
隼人とライラは、賭博場へと突撃した。
賭博ギルド員の制圧が終わったとき、ライラは3人しか殺していなかった。
隼人は、それで良しとした。
制圧した賭博ギルド員を脅して、金庫室を開けさせる。
金庫室のなかで、隼人は〈鍵〉を使い、〈神の宝物庫〉を開いた。賭博ギルド員に目撃されないよう注意して(わざわざ神具を所持している、と宣伝する必要はない)。
そして賭博場のカネを全て、〈神の宝物庫〉へと移動させた。これが300万G。
この額に対して、ライラは不満げに言ったものだ。
「休日だったら、この3倍はゲットできたのに」