憲兵団との遭遇
それから3日。
ヤミ金ギルドの顧客のうち6人を、養殖ギルドの構成員とした。全員に、ヤミ金ギルドの名を暴露できない魔法をかけるのを忘れずに。
この養殖ギルドのギルド・マスターはホポスだ。
隼人は、ホポス以外の養殖ギルド員とは接触しないようにした。ヤミ金ギルドと、ホポスの養殖ギルドとは無関係。外からはそう見られなければいけない。
だが指示は出さなければいけないので、ホポスとのみ接触した。人目につかないよう細心の注意を払いつつ。
「養殖ギルドも良い感じになった。次の段階に入るとしよう」
認可金の納入日まで、残り6日。隼人とホポスは、市街地の噴水のある広場で会った。ここに来るよう、ホポスには事前に伝えてあった。
「ここならお前と接触していることを、よそのギルドに知られないだろう」
ホポスが警戒をにじませて言った。
「ぼくになにをさせるつもりだ?」
「ある高位の盗賊ギルドに、この依頼をしてもらう。認可金の納入日の前日、30のギルドの全財産を奪え、と」
厳密には、30のギルドの認可金を奪う計画だ。だが認可金を奪え、では少々漠然としている。そこを考えて、奪うのは『全財産』とした。
すでにホポスは抵抗する気力さえ残っていないようだった。
「わかった。言われたとおりにする」
「盗賊ギルドへの依頼料や、標的にするギルドのリストは、後ほどトムズから渡させる。行け」
ホポスはうなずき、〈ギルド宮〉へと歩き出した。隼人は噴水を眺めながら、リラックスした。ほどよい陽光が降りそそいでいて、気持ちがよい。
ふと気付く。先ほどまで周囲には一般民がたくさんいた。それが、いまや1人もいない。人払いされたようだ。
四方から、5人の男が近づいてきた。5人とも白銀の鎧を装着し、斬撃用の剣とされるブロード・ソードで武装している。
騎士か。だが魔法の心得もあるようだ。隼人は、鎧の肩に印された紋章を見た。〈竜殺し〉の槍で貫かれる竜。
オウス王国に転移してから、隼人はいろいろと学んだ。あの紋章は、王族のものだ。だが彼らは王族ではない。
「ならば、憲兵団か」
セーラのことが知られたのか。だが、どこから漏れたのか?
5人の憲兵のうち、4人が立ち止まった。隼人を囲む位置だ。
最後の1人だけは、歩みを止めずにやってくる。隼人は、憲兵団のステータスを読み取った。以前、ライラが話したとおり、みなレベル99だ。
そのなかでも歩み寄ってくる憲兵のステータス(HP、MP、攻撃力、防御力、敏捷性、運)が、ずば抜けて高い。
とくにHPは1万を超え、攻撃力も3000近くある。彼が憲兵長か。
その憲兵長が言った。
「サワザキ・ハヤトだな」
隼人はうなずいた。
「そうだ」
「一緒に来てもらおうか」
「どこへだ?」
「少し、貴様に聞きたいことがあるだけだ」
質問ならここですれば良い。そもそも、隼人の『どこへだ?』の質問に、答えていない。
隼人は言った。
「断るといったら?」
憲兵長は、薄ら笑いを浮かべた。
「断らないほうが、身のためだ」
隼人は、5人の憲兵を素早く見た。計画を立てる。
4人を抹殺する。1人だけは生かしておき、捕虜にする。そして憲兵団がどこまでセーラのことをつかんでいるのか、聞き出す。
隼人はニヤッと笑った。
貿易ギルドの襲撃以来、まともな戦闘をしていない。そろそろチート能力を行使したいと思っていたところだ。
それに憲兵団が人払いしておいてくれたのもありがたい。一般民を巻き込むのは、避けたいところだった。
さらに、ライラが同行していないのも利点だ。さすがに憲兵が相手では、ライラをもってしても敵わなかっただろう。
そうなると隼人はライラを守りながら、憲兵たちと戦うことになった。それは実力的には問題ない。だがライラはヘソを曲げてしまっただろう。副官に拗ねられるのは困るので、ここにライラがいないのは幸いだった。
隼人は笑みを浮かべたまま、答えた。
「一緒に来いって? いいや、断る」




