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高金利でカネを貸す


 ホポスは理解できないという顔だ。

「待ってくれ。ぼくはあんたから3万Gを借りる。そして10日後に、借りたカネを返す。ところが、どうしてそれが4万5千Gになるんだ?」


「これはトゴというんだ。10日で、貸した5割の利子を取る。さらに、実際に渡すのは1万5千Gだ。5割の金利手数料をいただくからな。天引きというわけだが」


 よって、3万Gを借りる場合。受け取れるのは1万5千G。10日後に返すのは、4万5千G。だが先に手数料を引かれているので、実際に返すのは6万Gという計算だ。


「どうしてただ借りただけなのに、余計に支払わなければならないんだ!」


「お前は、鍬を借りた。その鍬をただ返すだけなのか? 違うだろ? 借りたことを感謝するだろ? 感謝の気持ちを表すだろ? その感謝がカネを借りたときは、利子として表されるんだ」


「ばかばかしい! ぼくはそんな条件で借りたりはしない!」


 ホポスはそう言うなり、立ち上がった。怒声を上げるまでは良かった。だがライラが近づいてくると、ホポスは見るからに怯えた。


 隼人はライラへと片手を上げた。

「いいんだ、ライラ。借りる借りないは、彼の自由意志だ」

 それから隼人はホポスを見やった。

「ホポス。おれは、あと1時間ここにいる。もしも考えを変えたら、来てくれ。歓迎しよう」


「けっこうだ!」

 ホポスは足取り荒く歩いて行った。


 ホポスが去ってから、ライラは隼人の隣に腰かけた。

「残念だったわね。一匹目のカモが逃げていくわ」


「いいや。あのカモは戻ってくる」


 ライラが意外そうな顔で隼人を見た。

「本当? にわかには信じられないわね」


 隼人はニヤッと笑った。

「じゃ、ライラ、賭けるか?」


 ライラも面白そうに微笑んだ。

「いいわよ。賭けましょう」


 賭けが成立したのち、ライラは2匹目のカモを連れてきた。

 2匹目のカモは、ロリヤという名だった。大柄な男だが、容貌からは意志の弱さを感じられた。

 隼人とロリヤのやり取りは、ホポスのときとほぼ同じだった。ただし隼人がロリヤの顔面を殴ることはなかったが。


 トゴのことを聞かされると、ロリヤも怒って席を立ち、歩き去った。


 ライラが心配そうに言った。

「ねえ、ハヤト。いきなりトゴというのは無茶だったのではない? わたしは、金利というものを知ったばかりよ。けど、そんなわたしにもわかるわ。10日で5割というのは、高金利すぎるわよ」


「まあな。たいていトイチか、せいぜいトサンだ。トゴというのは稀だな。だが、おれたちは早々にカモを潰さなくてはならないんだ。

 認可金の納入日まで、あと19日。それまでに、やることは山積みだ。身代りギルドを作って、信用のおける盗賊ギルドを雇って、30のギルドから認可金を奪い取らねばならない。そのための第一歩で、ノロノロやっているわけにはいかない」


 隼人は待った。

 ライラは隼人の許可を得てから、賭博に繰り出した。2人して休憩スペースに居座っていても、怪しまれるからだ。

 ライラが賭けをしている限りは、連れの隼人が休憩スペースに居続けても問題はないだろう。


 やがて、カモが戻ってきた。まず戻ってきたカモは、ロリヤだった。

「頼む、カネを貸してくれ」


 隼人は、膝の上にのせていた道具袋を取り上げた。

「いくら借りたい?」


「9万G……いや、9万5千Gだ」


「悪いが、貸せるのは万単位だけだ。9万か、または10万にしろ」


「なら10万だ」


「よし、10万Gを貸そう。ただし金利手数料を取るから、渡せるのは5万Gだが」

 隼人はドラゴン硬貨を5枚取り出した。それを掌の上に重ね、ロリヤに見せる。ロリヤは、ドラゴン硬貨に魅入った。

「おい、ロリヤ。10日後にはいくら返せばいいか、わかっているな?」


 ロリヤは唾を飲み込んだ。

「15万Gだろ。わかっている」

 ロリヤは乱暴に5万Gを取った。


 隼人はピンときた。

 ロリヤは踏み倒すつもりか。


 隼人は、ロリヤの右手をつかんだ。

「よく聞け、ロリヤ。もしも、借りたカネを返せなかったら、これをいただく。この右手だ。わかるか? おれの部下が、お前の右手を切り落とす」


 ロリヤの顔が恐怖に歪んだ。これで脅しは充分だろう。あまり脅しすぎると、今度は借りるのをやめてしまう。


 一転して、隼人は励ますように言った。

「だが安心しろ。お前が、これから賭けで勝てばいいんだ。この5万Gを元手にして、20万Gは稼げよ。そうしたら15万Gを返しても、5万Gはお前のものだ。だろ?」


 ロリヤは痴呆のようにうなずいた。

 隼人は、ロリヤの右手を離した。

 そのさい、ロリヤに追跡魔法をかけた。これでロリヤがどこにいるか、常にわかる。逃げられないぞ、ロリヤ。

「よし、行け」


 ロリヤは5万Gを懐に入れて、駆け出した。


 少し離れたところにライラがいた。いまライラは微笑んでいる。

「どうやら、賭けは1勝1敗となりそうね」


「おれの2勝だろ」


 隼人が指差したほうからは、ホポスが歩いてくるところだった。ホポスは隼人と目をあわせると、罰が悪そうな顔で言った。

「カネを、貸してくれ」


「いくらだ?」


「今日は運が向いているんだ。さっきは負けてしまったが、次は勝てる。だから20万Gを貸してくれ。これならいま10万Gを受け取れるわけだろ?」


 隼人は内心でほくそ笑んだ。

「ああ、そうだ」



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