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第一話 アニメ化とはなんだ? それはいつ(ry

アニメ化って聞くと一瞬自然現象みたいだなぁと思って書きました。

アニメ化とは何か。普通は漫画・小説などの作品をアニメにすることを指すとだれもが思うだろう。


しかし、彼ら、怪異研究同好会のにとってのアニメ化とはそういう意味ではなかった。


(アニメ化だな……あれは)


神奈川県西部に位置するある高等学校。その放課後に廊下の柱の陰からこっそりと対象を見つめる男子生徒がいた。視線の先には四人グループ。一人は優しそうな笑顔を浮かべた男子生徒。その周りには三人の女子生徒の姿が見える。


(髪の色はピンクに緑、おまけに水色。感じからしてハーレムものか何かか?)


男子生徒の名は松原巽。怪異研究同好会の一年生。同時にある組織の一員でもある。さて、アニメ化とは何かという話に戻るが、一言でいえば『現実にアニメのような状態が出現すること』を指している。先ほどの例でいうと現実ではありえない色の髪色をした人物が現れることなどが代表的な例だ。


そしてこのアニメ化、現在は災害の一種として認定されている。ただしこのことを知る人間は実は少ない。それは一般市民はアニメ化を何の不信感も持たずに受け入れてしまうからである。特にアニメ化の代表例である髪色の変化はそれが顕著だ。アニメ化した人間が前の日とは打って変わった色で家族などの前に現れても何の咎めも受けず受け入れられ、最終的には昔からその色であったように記憶が改竄されていることもあるという。


しかし、世の中にはアニメ化の影響を受けない人間がいた。そういった人間はアニメ化による治安の悪化などを防ぐためにアニメ化に対する対策組織を設置。松原巽もその組織の一員に名を連ねている。


確認を済ませると巽は生徒会室へと足を進める。他のメンバーにもこのことは伝えなければならない。


「戻りましたー」

「……お疲れタッツー」

「……そのあだ名何とかなりません? 同じ名前のものを思い出すんですがウサギさん」

「……タッツーこそ敬語をやめるべき」


某ポ○モンをほうふつとさせるあだ名をつけて巽を呼ぶのは椅子に座っている女子生徒。巽と同じ一年せいである。名前を冬木兎。ぬぼーという擬音がよく似合う女子だ。ちなみにスタイルはいい方というのが広報担当の見立て。


「あれ? トラ会長は?」

「……まだ戻ってきてない。たぶん女子に捕まってるんだと思う」


そう言っていると女子の歓声とともにドアが開いてその会長が姿を現す。


「上井会長素敵ー!」

「抱いてー!」

「あいがとう。でもここじゃ迷惑になるから、できればまた今度にしてほしいな」

「「「わかりましたー!」」」


上井虎二かみいこじ。名前からトラ会長と呼ばれているこの学校の生徒会長で二年生。兼怪異研究同好会の部長でもある。ただし実際にはいろいろと忙しいのでそちらは実質副部長に任せている状態である。ちなみに阪神ファンではない。


「会長お疲れ様です」

「巽君もお疲れ。どうだった? 今日の状況は」

「そうですね……アニメ化はしてますが悪い感じとか声は今のところありませんでした。ハーレムものみたいですししばらくは放っておいても大丈夫でしょう」

「そうか……ならそっちは君に任せる。何か変わったことがあったら教えてくれ。僕は支部の方である定例会議に行ってくるよ。後のことはお願いする」

「……りょうかーい」

「わかりました」


そういって生徒会室を出ていくトラ会長。巽も会長同様生徒会の一員でもあるのでこれからしばらく生徒会の雑務だ。


「……ウサギさん、全然進んでないように見えるんですが」

「……最近退屈だから」

「まったく……明日の委員会に必要な書類もあるんですから……」


黙々と書類を処理していくこと二十分ほど。とりあえず最優先の書類が片付いた当たりで生徒会室の扉がバシーンと勢い良く開かれた。


「トラはいるかぁー!」

「いません」

「……いない」


シーンと静けさを取り戻した生徒会室に巽のボールペンの音だけが響く。


「何か続けてよ私が恥ずかしい!」

(自分からドでかい音出して何言ってるんだこの人……)

「……ぬー先輩音大きい。頭がジンジンする」


そして最後の一人。頼りがいのある先輩なのだが時折突拍子もないことをするというのが巽の認識にあるこの生徒。生徒会副会長にして怪異研究同好会の副部長の平塚狗子ひらつかいぬこ。愛称は名前の中間をとっている。ちなみに先ほどの広報担当とは彼女のことを指している。なお本人はまな板に近い模様。


「会長は支部の方に出かけましたよ。定例会議だそうです」

「そういえば今日だったかー。まぁそれはいいか」

(いいのか? それで)


若干疑問に思う巽だがそんなことはこの人には大した意味をもったものではないと考え思考を切り離すと作業を再開しようとする。


「そういえばさ、ウサギちゃんにお願いがあるんだけど」

「……なんですか?」

「お仕事……しない?」

「する! 今すぐ!」


ワンテンポ置いてけだるそうにしゃべるのが特徴のウサギが即答する様子に巽も腰を浮かすような反応を見せた。


「ぬー先輩、緊急の用件なんですかそれ?」

「割とね。支部には連絡はしてるけど対応まで時間がかかるだろうし、現場対処できるならそれがいいでしょ」

「行こう! 今すぐ!」


ぐいぐいと狗子の袖をひっぱるウサギ。おもちゃでも見つけたかのような表情をしている。


「わかったわかった。じゃあ準備してもらえる? いつものところに集合ね」

「うん! わかった!」

(また惨劇の被害者が増えるのか……)


普段の感じからは想像もつかない早さで生徒会室を出ていくウサギを見送りながら内心震えていた。またああなるのかと思ったからだ。


「ちなみにどんな案件なんですか?」

「不良のアジトの摘発よ。さっきピンク髪の子が誘拐されてね」

「それってもしかして……」


巽は先ほど目撃したアニメ化の生徒ではないかと狗子に告げる。狗子はパソコンを開いて情報を探すとデータを巽に見せる。


「それってこの子?」

「はい、今日確認されたばかりだったので自分の方で様子見と……」

「なるほど……まだ報告前のものだったのね……だから見逃しちゃったかー」

「すいません……」

「これは謝るほどのことじゃないわ。展開が早いのは想定外だっただけだしまさか初日から問題が起きるとは思わないから。さっさと行きましょ。ウサギちゃんがうずうずしてると思うし」

「そうですね。行きましょう」


集合場所である校舎裏の駐輪場に行くとすでにウサギが待ち構えていた。その場でジャンプを繰り返すぐらいにはワクワクしているらしい。


「じゃあ行きましょうか。ウサギちゃん、目的地は入れておくから先に行ってて。あ、映像データが取れるぐらいは残しておいてよ?」

「わかった!」


そういうや否や猛スピードで自転車を漕ぎだして行った。めちゃくちゃ早く、部活の練習の生徒の横を猛スピードで通り抜けると一瞬のうちに校門を飛び出していった。


「私たちも行きましょう。まあえらいことになっていると思うけど」


                    ○

「まぁ……こうなりますよね」


不良のアジト……たまり場には不良が転がっていた。すべてウサギが倒したのだろう。


「なななな……なんなんだこいつは!」

「うらぁ!」


手持ちの金属バットでバッサバッサとなぎ倒していく光景は普段の彼女からは考え付かないものだ。巽がウサギに敬語なのはこの辺が理由だった。


(くそっ! ならとっておきのこの拳銃でぶっ殺してやる!)


ウサギ一人に大量の不良が押されていることから、残りの不良の中で目立つモヒカン頭の不良がそう考えて銃を取り出そうと手を動かそうとした時であった。


「あ、あのモヒカン拳銃持ってる」

「ウサギちゃん! モヒカン倒して!」


狗子の指示を受けてウサギはモヒカンに襲いかかる。一瞬で倒されたモヒカンから銃が抜き取られ二人の方に放られる。すると、後方から車の音が聞こえてきた。


「潮時かな」

「そうですね」

「投降しなさい。もうあなたたちは包囲されているわ」


戦意を失いつつあった不良はあっさりとお縄につくことになった。


               ○

「しっかしアニメ化に一番遠いはずの私たちが一番アニメ化に近いっていうのもなんか変な話よね……」

「まぁそうですね。自分のなんか特にそうですよ。死亡フラグになりうる説明フェイズだけ聞こえる力とか」

「私のは比較的普通に近いけど内容的にはかなりアレだからね……。役には立つんだけど人には言えないなー」

「ところでこの人どうします? このまま放っておくわけにも……」


誘拐されてきたピンク髪の少女に目を向ける。アニメ化しているなら恐らくは先ほどの優しそうな男子生徒が助けに来るだろう。


「風邪引かないようにタオルケットかけて寝かせておけばいいでしょ。じゃあ帰りましょうか。最悪彼らに誘拐犯に間違われかねないし」

「そうですね。帰って雑務終わらせたら帰りましょうか」


二人は外でぶんぶんと手を振っているウサギのもとに急ぐ。彼らのアニメ化との戦いはまだ始まったばかりだ。

終わるかもしれません。続くかもしれません。わかりません。

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