表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/34

9.ハートブレイク(2)

 次の日。

 まゆは、一平が学校に行ったころを見計らって、一階に下りて行った。

「おはよ」

自分からお母さんに声をかける。

「あ、おはよう」

テーブルの上を片づけていたお母さんが、ちょっと手を止めて、まゆのほうを見た。ぱんぱんに腫らした、まゆのまぶたを見たら、お母さんの予想は、確信に変わったはずだ。まゆは、保に失恋したんだ、って。

 今日はお母さん、『大丈夫?』とも、『どうしたの?』とも言わなかった。代わりに言ったのが、「ご飯食べる?」だ。お腹は、かなりすいている。

 朝ごはんを食べて、二階に戻ろうとすると、お母さんが声をかけてきた。

「お母さん、もうすぐ出るけど、昼は冷蔵庫の肉じゃが食べといて。一平は、まだ給食あるから」

「うん」

昨日食べるはずだった肉じゃがだ。お母さんは、昼間三時間くらい、スーパーでパートをしている。小五の一平も給食があるから、昼はひとりだ。


 部屋に戻ると、まゆは、なんとなく掃除を始めた。

 あの、保への手紙をめぐる一件以来、まゆは、自分の部屋は、ちゃんと自分で掃除をするようになっていた。ただ、受験が近くなったころから、適当にしかしていなくて、今は、かなり散らかった状態だ。

 いったん始めると、まゆは、掃除と片付けにのめりこんでいった。床はもちろん、棚の上、窓や、窓枠まで、きれいに拭いていった。卒業式は、昨日終わったばかりだけど、中学で使った教科書やノートも整理して、本棚やクローゼットに仕分けしていく。

 こうして、掃除や片付けをしていると、無心になる。その間は、辛さを忘れていられるんだ、って、まゆは気づいた。


 遅めの昼ごはんを食べ終えて、リビングのソファでぼうっとしていると、お母さんが帰ってきた。

「ただいま。今そこで、えりちゃんに会ったよ」

「えっ?」

お母さんの後ろから、恵理子がリビングに入ってきた。

「ハハ、来ちゃった」

恵理子は、照れ隠しみたいに笑った。正直、恵理子にでも、ぱんぱんの目を見られたくなかったけど、もう逃げられない。


 ピカピカになったまゆの部屋で、恵理子とまゆは、床に座ると、並んでベッドに寄りかかった。

「ごめん、連絡せずに来ちゃって」

「うん。でも、顔、最悪でしょ」

「そうでもない。最悪よりはマシ」

「ハハ、何それ」

「でも、やっぱこたえてたんだ。まゆ、大丈夫って言ってたけど、なんか違うぞって、感じがしてさ」

「それで、偵察に来たわけ?」

「イエス」

 話は、やっぱり昨日のことになる。

 恵理子は、昨日の電話と同じように、憤慨して、同じことを繰り返した。その状況なら、誰だってコクるって思うでしょ、って。

 同感! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ