表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

5.友だち以上、恋人未満(3)

 北高、合格発表の日。

 まゆは、恵理子といっしょに、他の大勢の受験生に混じって、合格者の番号が張り出されるのを待っていた。まゆの少し斜め後ろで、保も、他の何人かの男子生徒といっしょに発表を待っている。

 番号を書いた紙が張り出されると、すぐに、まゆの目に、自分の受験番号が飛び込んできた。よしっ。

 次は恵理子。まゆが番号を探し始めると、恵理子が、まゆの腕をぐいぐい引っ張った。

「あった、あったよ、152番! まゆのも、あるよね」

「うん」

「やった、やったー!」

あとはもう、言葉にならない。恵理子が、まゆに飛びついて、ふたりで抱き合いながら、ぴょんぴょん飛び跳ねた。

 突然、恵理子が立ち止まって、まゆも止まる。

「田辺は?」

「うん」

 まゆが斜め後ろを振り向くと、すぐに保と目が合った。保は、ニコニコ顔で、まゆに向かってブイサインをする。まゆも、ブイサインと、とびきりの笑顔を保に返した。


 その翌日。

 朝、いつものように保に会った。合格おめでとうを言い合って、恵理子がものすごくがんばったことなんかを話した。これから始まる高校生活のことも、いつもの調子で話をした。

 だけど、まゆは、ほんのちょっと緊張していた。保には気づかれないくらいの緊張だけど。

 なぜって、昨日、合格発表のあと、まゆは、どうやって保に想いを伝えるか、真剣に考え始めていたからだ。そんなことを考えている状態で、保に会うのって、なんだか気恥ずかしい。

 ミコトにも誓ったし、告白は必ず実行するつもりだ。高校生として、新しい生活が始まるんだもん。きちんと想いを伝えて、「友だち以上、恋人未満」から、ちゃんと恋人に昇格したい。もしも、もしもだけど、フラれるってことになったとしても、けじめをつけるなら、今だ。


 卒業式までは、あと一週間。明日あさっての土・日をはさんで、来週の月曜日は、学校は休みだ。火・水は、卒業式の予行や準備なんかがあって、木曜日がいよいよ卒業式。

 まゆは、お母さんのように手紙ではなく、直接、想いを伝えることに決めていた。じゃ、どこで? 学校でもいいけど、誰かいたら、なんか落ち着かない。ミコトに見られる可能性も大だ。うーん、だったら、さつき公園なんて、どうかな。

 さつき公園は、噴水の広場や芝生の広場、こどもの広場もある大きな公園だ。校区外だし、家からはちょっと遠いけれど、まゆのお気に入りのすべり台があって、小学生のころ、保といっしょに、何度か遊びに行ったことがある。思い出の場所だし、手入れの行き届いた公園で雰囲気もいい。

 卒業式が終わったら、「話があるから、あとで、さつき公園に来て」と声をかけよう。時間は、そのとき決めればいいよね。でも、一応三時にしておこうかな。それとも、前もって話しといたほうがいいのかな。突然だと、都合もあるし。ううん、前の日なんかに言ったら、へんに構えちゃうかも。都合が悪かったら、そのときは、そのとき。後日でもしかたないよね。

 よし、段取りは、これで決まり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ