5.友だち以上、恋人未満(3)
北高、合格発表の日。
まゆは、恵理子といっしょに、他の大勢の受験生に混じって、合格者の番号が張り出されるのを待っていた。まゆの少し斜め後ろで、保も、他の何人かの男子生徒といっしょに発表を待っている。
番号を書いた紙が張り出されると、すぐに、まゆの目に、自分の受験番号が飛び込んできた。よしっ。
次は恵理子。まゆが番号を探し始めると、恵理子が、まゆの腕をぐいぐい引っ張った。
「あった、あったよ、152番! まゆのも、あるよね」
「うん」
「やった、やったー!」
あとはもう、言葉にならない。恵理子が、まゆに飛びついて、ふたりで抱き合いながら、ぴょんぴょん飛び跳ねた。
突然、恵理子が立ち止まって、まゆも止まる。
「田辺は?」
「うん」
まゆが斜め後ろを振り向くと、すぐに保と目が合った。保は、ニコニコ顔で、まゆに向かってブイサインをする。まゆも、ブイサインと、とびきりの笑顔を保に返した。
その翌日。
朝、いつものように保に会った。合格おめでとうを言い合って、恵理子がものすごくがんばったことなんかを話した。これから始まる高校生活のことも、いつもの調子で話をした。
だけど、まゆは、ほんのちょっと緊張していた。保には気づかれないくらいの緊張だけど。
なぜって、昨日、合格発表のあと、まゆは、どうやって保に想いを伝えるか、真剣に考え始めていたからだ。そんなことを考えている状態で、保に会うのって、なんだか気恥ずかしい。
ミコトにも誓ったし、告白は必ず実行するつもりだ。高校生として、新しい生活が始まるんだもん。きちんと想いを伝えて、「友だち以上、恋人未満」から、ちゃんと恋人に昇格したい。もしも、もしもだけど、フラれるってことになったとしても、けじめをつけるなら、今だ。
卒業式までは、あと一週間。明日あさっての土・日をはさんで、来週の月曜日は、学校は休みだ。火・水は、卒業式の予行や準備なんかがあって、木曜日がいよいよ卒業式。
まゆは、お母さんのように手紙ではなく、直接、想いを伝えることに決めていた。じゃ、どこで? 学校でもいいけど、誰かいたら、なんか落ち着かない。ミコトに見られる可能性も大だ。うーん、だったら、さつき公園なんて、どうかな。
さつき公園は、噴水の広場や芝生の広場、こどもの広場もある大きな公園だ。校区外だし、家からはちょっと遠いけれど、まゆのお気に入りのすべり台があって、小学生のころ、保といっしょに、何度か遊びに行ったことがある。思い出の場所だし、手入れの行き届いた公園で雰囲気もいい。
卒業式が終わったら、「話があるから、あとで、さつき公園に来て」と声をかけよう。時間は、そのとき決めればいいよね。でも、一応三時にしておこうかな。それとも、前もって話しといたほうがいいのかな。突然だと、都合もあるし。ううん、前の日なんかに言ったら、へんに構えちゃうかも。都合が悪かったら、そのときは、そのとき。後日でもしかたないよね。
よし、段取りは、これで決まり。




