4.友だち以上、恋人未満(2)
進路についての三者面談の翌日。
「まゆ、どうだった? 昨日」
「なんかあっけなかったよ。この調子でがんばれって、言われて、あとは、ほぼ雑談。あたし、山本先生、三年目でしょ。お母さんも、なんか慣れちゃって、世間話みたいなことになってた。保くんは?」
「オレも、まあ、一応、北高でオーケーってかんじ。だけど、うちの担任、陸上部の顧問だろ。陸上がんばるなら、藤ヶ丘もいいぞ、とかけっこう勧めてくるんだよな」
「え? じゃあ、藤ヶ丘にするの?」
まゆ、急に心配になる。
「しないよ。あそこの陸上部、めちゃくちゃしんどいらしいからな」
ほっとするまゆ。だけど、ちょっと強がってみせる。
「優勝目指してるんなら、ビシバシ鍛えてもらったほうがいいんじゃないの」
「北高だって、鬼コーチいるだろ。あ、来年から入るだろ」
そう言いながら、保がまゆの方を見た。
「ちょっと、それあたしのこと言ってんの」
「いやいや。それに、オレ、褒められると伸びるタイプだから」
「そうだったの」
「まゆに褒められたら、がんばるんだけどなー」
まゆ、ちょっと赤くなる。
照れ隠しに、話題を変える。
「それより、えりちゃんがね、ちょっとキビシイって言われたらしくて」
「原口も北高志望だよな」
「うん。えりちゃんち、北高の裏門からすぐ近くでしょ。お兄さんふたりも北高だし、絶対、北高に入りたいって、言ってるんだけど」
「そっか。裏口入学なら、簡単にできそうなのにな」
まゆ、保を軽くにらむ。
「保くん、その冗談、笑えないんですけど」
「あ、ゴメンゴメン」
保、シュンとなってうなだれる。
「だけどさ、三組の鈴木先生、けっこうキビシメに言うらしいから、絶対無理、って言われない限り、可能性あるって話だよ」
「そうなんだ。鈴木先生、超生真面目だもんね。うちの山本先生とは、大違い」
「だから、あきらめずにがんばれって、言ってやれよ」
「うん。って、あたしたちも、受かったわけじゃないんですけど」
「アハ、そうだよな。オレたちも、がんばらなくちゃな」
「うん、三人とも合格して、みんなでお祝いしよう」
「おう」