表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

19.田島さんちの恋モヨウ(1)

 翌日、日曜日。

 より子おばちゃんの家に着いたのは、昼少し前。より子おばちゃんとおじさんが、笑顔で出迎えてくれた。

「まゆちゃん、久しぶり。すっかり娘さんになったなあ」

と、おじさん。

 おじさん、病気のことがあったけど、良かった、変わらず元気そうで……って、やっぱりちょっと、いや、だいぶ変わった!

 まゆ、思わず、おじさんの頭に目がいって、視線が一瞬止まった。髪が……薄くなってる。まゆの視線に気づいたおじさんが、頭に手を当ててアハハと笑った。

「おじさん、男前になっただろ。なにしろヒカルゲンジだからね」

「ははは」

おじさんの、化石のようなギャグに、まゆ、笑い返したけど、大丈夫かな、ほっぺた、ひきつってないかな。

 そういえば、おじさん、昔からダジャレとかギャグとか、よく言ってたな。小さいころのまゆは、それを素直に笑ってたんだ。変わったのは、まゆの方だね。


 案内されてダイニングテーブルに着くと、お母さんが、合格おめでとう、と言いながら、のし袋をより子おばちゃんに手渡した。

 より子おばちゃんも、のし袋を出してきて

「はい、一平くんの入学祝」

「ありがと」

「こちらこそ」

 余談だけど、まゆは、のし袋の中の金額を知っている。両方とも、三千円だ。お母さんとより子おばちゃんの取り決めなんだって。お互いの子どもが入学するときは、お祝いしたいね、だけど、負担にならないくらいの金額で、ってことで、三千円になったらしい。だから、小学生でも三千円、大学生になっても三千円。

 まゆが中学に入学したときに、その三千円を、お母さんがまゆにくれた。そのときに、その話をお母さんに聞いたから知っているんだ。高校生になったときも、三千円もらったし。


 出かける用意をした明くんが、ダイニングに入ってきた。お母さんとまゆが、大学合格のお祝いを言うと、明くんは、丁寧に礼を言って、今から出かける無礼をわびて、出かけていった。

「ごめんね、今日デートなんだって。まだ付き合いたてのホヤホヤで、浮かれてるからね」

より子おばちゃんも、テーブルにサンドイッチを用意しながら、謝った。

「いいわよ、そんなの。おめでとうを言えたから十分よ。それより、もうカノジョできたの?」

お母さんが、飲み物の準備を手伝いながら聞く。

「うん。合格発表が終わって、すぐ告白されたらしいよ」

「へえ。同級生?」

「ううん、一つ下。高校の後輩だって」

「明くん、もてるよね。前も、たしかカノジョいたよね?」

「うん、高一から高二まで、一年くらい付き合ってたかな。さ、食べよっか」


 おじさんもテーブルに着いて、四人で、より子おばちゃんの手作りサンドイッチを賞味した。この味、なつかしいなあ。前にも、より子おばちゃんのサンドイッチをごちそうになったことがある。

 前に来たときは、明くんと、明くんより一つ上の聡くんも、まだ中学生だった。明くん、ずいぶん大人になってたな。聡くんも、きっとそうだね。聡くん、いないけど、出かけてるのかな? 

「聡くんは? 出かけてるの?」

ちょうどそのとき、お母さんがたずねた。ちょっとお、タイミング合いすぎ。

「うん、朝からバイト」

「そっか」

「あの子は、明と違って、山が恋人だからね」

と、より子おばちゃん。

「山?」

まゆ、思わず、聞き返す。

「そう。大学で、山岳部に入ったんだけどね、はまっちゃって。今では、いっぱしの山男になりきってるわよ。それで、山に行く資金を貯めるために、バイト三昧」

「へえ」

「バカがつくほどはまる、って誰かさん譲りよね」

より子おばちゃんが、おじさんの方を見る。おじさんが、ハハハと照れ笑いをする。おじさん、演劇バカだったんだよね。


 ランチを食べ終えると、心得てますとばかりに、おじさんが席を立って部屋を出ていった。この流れは、女子会が始まる雰囲気だ。

 より子おばちゃんが、お母さんの手土産のクッキーを広げて、今度はコーヒーをいれてくれた。

「まゆちゃん、男の子に告白されて、迷ってるんだって?」

「えっ?」

 まゆ、思わずお母さんを見る。お母さんは、しれっとしている。

 ま、いっか。どうせ、お母さんが、より子おばちゃんにしゃべることは、想定内といえば想定内だし。それに、より子おばちゃんとなら、そういう話するの、そんなに嫌じゃない。

「まゆちゃん、すごく悩んでるから、話聞いてあげてって。ね、はるちゃん」 

「まゆ、考えすぎて、暗くなってたでしょ」

「う、うん」

ホントはそういうわけじゃないんだけど。

「ま、あたしは、恋愛評論家だからね」

「え、そうなの?」

「ハハ、自称だけどね。恋愛ドラマの有名どころは、全部おさえてるから」

なんだ、そういうことか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ