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18.ゆれる心(2)

 お母さんは、「えっ」ってびっくりして、かたまった。どっちの意味で驚いたのかな。あたしが、男子に告白されたから? それをお母さんに言ったから? たぶん、両方だね。

 ふっと息を吐いて、かたまりが溶けた。

「同級生の子?」

「うん。同じクラスの子。結城君ていう子」

もういいや、こうなったら話しちゃえ。お母さんが、ちょっと考え込む。

「もしかして、まゆ、断りづらくて、悩んでるの?」

「え?」

「なんか、まゆ、元気がないっていうか、沈んだかんじだから」

「えっ、そんなんじゃないよ。色々悩んでたら疲れちゃって」

とっさにごまかす。

「そう」

「うん。結城君て、すごくいい人だし。だけど、好きとか、まだそんなんじゃなくて」

 で、まゆは、結城君がどんなにいい人かを話して、こんなにいい人だから、迷っちゃうでしょ、っていうのを強調した。あーあ、なんであたし、こんなこと、お母さんにムキになって話してるんだろ。

 お母さん、また、ちょっと考え込む。

「どうするかは、まゆが自分で決めればいいけど、」

何それ、当たり前でしょ。まゆ、ちょっとイラッときた。ちょっと待て、まゆ。自分で言い出したことなんだから、ここは、落ち着け。

「悩んでるんなら、お母さんの意見、一応言っとくね」

「……」

「親としてはね、そんなにいい人がまゆのカレシだったら、安心よね」

「……」

「だけど、先のことはわからないけど、今はまだ、好きってわけじゃないんだよね。そんな気持ちのままでつきあって、大丈夫なのかなって思う」

「……」

「まゆ、無理しちゃうんじゃないかなって。まゆは、なんていうか、正直で、まっすぐな子だから」

 ……正直で、まっすぐ……まゆ、不覚にも、目頭がキュンと熱くなった。お母さん、あたしのこと、そんなふうに見てたんだ。まゆは、目をパチパチさせて、ごまかした。

「わかった、もうちょっと考えてみるから」

 あたし、何をしようとしてたんだろ。結城君を利用するようなこと、考えたりして。


「それより何? なんか用事あったんじゃないの?」 

「ああ、それね。明日、お母さん、よりちゃんとこ行くんだけど、まゆも一緒に行かない? 明くん、大学合格したから、お祝い持っていくのよ。明日、お父さんも一平もいないし、まゆ一人だから、一緒にどうかな、って思って」

「お父さんと一平、どっか行くの?」

「お父さんは、会社の人の結婚式。一平は、遊園地」

「えっ、まさか、あの、何ていう子だっけ」

「アハ、竹田さんとじゃないよ。服部くんたち、友だち四人で行くんだって」

 そうだった。竹田さんは、鶴見くんと行くことになったんだった。


 より子おばちゃんの家には、小学生のとき以来行っていない。だけど、より子おばちゃんには、何度かうちに来たから会っている。ミコトの記憶を見たあと、初めてより子おばちゃんに会ったとき、まゆ、思わず、まじまじと、より子おばちゃんを見てしまった。やっぱり、ずいぶん変わったなって。

 おじさんには、ずっと会っていないし、久しぶりに行ってみようかな。それに、普段とは違うことをして、気を紛らわせるのもいいかも。

「じゃあ、あたしも行く」


 お母さんが出ていって、一人になると、また苦しさがよみがえってきた。保と西條さんの肩寄せ合う姿が、目に焼き付いて離れない。さっきとは違う理由で、目頭が熱くなる。

 それに加えて、自分の愚かさも身に染みる。あたし、竹田さんのこと言えないよね。こっちがダメなら、あっちって……

 だけど、そうやって、自分を省みることで、前向きになれることもある。

 あたし、ちゃんとしなきゃ。泣きそうになる心で、自分に言い聞かせるまゆだった。



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