13.恋モヨウ、いろいろ(3)
まゆが家に帰ると、ちょっとした驚きが待っていた。
晩ごはんの前、料理をテーブルに並べるのを手伝っていると、お母さんが、ニタニタしながら、ちょっと声をひそめた。
「一平がね、女の子に告白されたんだって」
「うそーっ」
まゆのほうは、大声になる。あの一平が女の子に告白されたなんて! しかも、あたしが告白された日に!
「だれに?」
「同じクラスの竹田さんて子」
「へえ、もの好きな子だね」
「なんかね、一平のことが好きだから、卒業の記念に、いっしょに遊園地に行ってほしい、って言われたらしいよ」
「それで、一平はどうしたの?」
「竹田さんのことは、好きじゃない、フツーだって。だけど、遊園地は行ってもいい、って言ったんだって」
「何それ」
「言葉通りよ。竹田さんのことは、好きとかそんなんじゃないけど、遊園地は好きだから行ってもいいってことよ」
「うそぉ。一平って、ほんとバカだね」
「バカっていうか、子どもよね」
「まさか、遊園地には行かないよね」
「うん。だったらいい、って言われたって」
「そりゃそうよね。それにしても、一平、そんなこと、全部お母さんに話したわけ?」
「ううん。服部くんが、今日遊びに来てね、教えてくれたのよ。さすがに、一平も、言うなよ、って怒ってたけど」
「ふうん。一平もだけど、服部くんも子どもだね、そんなこと、お母さんに話すなんて」
「ハハ、そうだね」
「男子って、六年でもそんなもんなのかな」
「どうだろ、男の子のほうが幼いっていうけど、一平たちは、とくにそうなのかもね」
そんな一平に告白して、フラれた竹田さんが、かわいそうだ。
「竹田さんて子、傷ついたよね、そんなふうに言われたら」
「ま、そうなんだけど、竹田さん、そのあと、鶴見くんを誘ったらしいからね」
「うそー、何それ」
「鶴見くんは、OKしたらしいよ」
「ハア?」
思わず語尾が上がる。いったい、今どきの若い子はどうなってるんだ!
「腹へったー」
一平がお尻をボリボリかきながら、二階から下りてきた。テーブルに着こうとする一平に、
「手!」
お母さんの号令がかかって、一平は洗面所に方向転換する。
幼稚でバカ正直な一平だけど、姉としては、とんでもない女に引っかからなくて良かった、と安心するまゆだった。
一平は、竹田さんの申し出を、あっさり、いや、半分断ったけど、さて、あたしはどうしようかな。一平たちの恋愛ごっことは違うんだから、ちゃんと考えなきゃね。
それとも、もっと軽く考えたほうがいいのかな。えりちゃんみたいに、カレシがいるのって、いいなって思うし。
まゆの脳裏に、結城君の優しい笑顔が思い浮かぶ……まだ、好きとかそんなんじゃないけど、好きになれそうな気もするし……
あっ、そうだ。今思い出したけど、鶴見くんて、たしかあのイケメンの子だよね。鶴見くんよりも先に一平にコクるなんて、竹田さん、なかなか見る目はあるじゃない。




