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10.ハートブレイク(3)

「ところでさ、西條さんて、通信制のフリースクールに行くんだって。知ってた?」

一通り昨日の電話と同じ話を繰り返すと、恵理子は、保が付き合う相手、つまり、こういう言い方したくないけど、保のカノジョのことを話題にした。

「ううん、知らない」


 保と西條さんは、たしか一年と三年で同じクラスだった。だけど、西條さんとまゆは、一度も同じクラスになったことがない。恵理子もそうだ。だから、西條さんのことは、よくは知らないのだけど、体が弱くて、学校を休みがちだ、というのは、同学年ならみんな知っていることだ。心臓の病気で何度も入院している、という話も、聞いたことがある。

 小柄で色白ではあるけど、ぱっと見、病弱なかんじはしない。目がくりっとしていて、むしろ活発なイメージだ。こんなことを言うと、まゆはおもしろくないだろうけど、見た目は、ちょっとまゆに似たかんじがする。いや、似ていると言うと言い過ぎだけど、見た目のかんじをごくごく大雑把にタイプ分けすると、まゆと西條さんは同じカテゴリーに入る、くらいは言っていい。


「西條さん、中学で、けっこう休んでばっかだったでしょ。高校に行っても、ちゃんと通学するのは難しいらしくて、通信制にしたんだって」

「ふうん」

「あのさ、こんなこと言ったら、西條さんに失礼だと思うけど、はっきり言って、田辺は西條さんに同情したんだよ」

 まゆだって、そう思ってはいたけど、恵理子のように断定していたわけではなかった。たぶん同情したんだ、って思っていた。恵理子がこんなふうに言うと、そうだよね、って確信がもてる。

 恵理子が、まゆのほうを向いて、あらたまった。

「だけどね、まゆ、同情にしろなんにしろ、田辺は、まゆじゃなくて西條さんを選んだんだよ」

 恵理子のストレートな言葉が、まゆに突き刺さった。そんなこと、わかってる。だけど、まだ、そんなにはっきり言わないで……

 まゆの目がうるんできた。それでも、恵理子は言葉を続ける。

「田辺は、優しいやつだけど、優しいからそうしたんじゃない。田辺は、バカなんだよ。バカだから、そうしたんだ、ってあたしは思う」


 これから後、保のことを思い出して辛くなるたび、まゆは、この言葉で自分を慰めた。

「保は、バカなんだ。大バカヤロウなんだ」って。

 

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