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第六十六話「想いの先に待っていたもの」

「本当に? 本当に?」


 私は食いつくように何度も確認をする。だってあのキールから好きだなんて信じられないもん。強く望んでいた言葉なだけに、実は偽りや夢落ちだなんて嫌だ。そんな私の必死の様子にキールは苦笑する。


「本当だって」


 キールの答えに私の心の中は一気に花が咲き誇る。ま・さ・に・愛の花だ! なんとも言えない熱い想いが込み上げてきたぞ。


「オマエがマルーン国に拉致られた時、正気を失いかけたよ。ようやく想いが重なった時に、略奪されるなんてさ。それに相手はあのマキシムズ王だ。世界一美しい人と讃えられている高尚な方だからな」

「中身は世界一美しくないぞ」


 私はキールのマキマキ王に対する讃えを否定するかのように突っ込みを入れた。あの王の美顔の裏には悪の心が渦巻いているからな。


「言えてらぁ~」


 キールも同感だったみたいで破顔した。間近で笑顔を見るのはドキュンものだ❤ そのキールの笑顔にポワ~ンと私は惚けてしまう。キールと想いが重なった事がまだ信じられなくて、私はさらに突っ込んで訊く。


「私が妃になってもいいの? 素質や品格がないって思っているんでしょ?」

「でもオマエ、オレの為に妃として頑張ってくれるんだろ? 言葉を覚えたようにさ」

「うん、覚えるよ」


 私は満面の笑顔で返した。キールの為ならマナーや作法だって苦にならない。愛の為なら頑張れる。躊躇いのない返事を返すと、フッと目の前が翳りを帯びた。


 ――あっ。


 なにが起こるのか予感した時には、もう唇がキールの唇に塞がれていた。深く重なり、すぐにキールの舌が入ってくる。私も応えるように舌を差し出すと、互いの舌が絡み合い、優しく上下に動かされる。


 もう何度もキールとはキスをしているけど、初めて舌を絡ませた時のように鼓動が高鳴る。キールの舌は器用に舞い続け、私の躯は何度も跳ね上がった。


 次第に熱は高まり、頭の中がフワフワと気持ち良く、目もトロンと恍惚感を帯びてくる。キールとのキスは本当に気持ちいい。温かい愛情を躯中で感じるんだもん。


「……ん、んぁ」


 暫く深く濃厚に舌が絡み続け、私はノックアウト寸前になりかける。そこで舌が離れていく。やっと満足に酸素が吸える安堵感とキスを惜しむ複雑な気持ちで、キールを見つめる。


 彼も熱を含んだ表情で私を見つめ返している。そんな互いの熱視線が重なると、また私の鼓動が躍り出す。もうキールに見つめられるだけで、全身が蕩けてしまいそうだ。


「千景、この間の続きをしよう」


 物欲しそうな表情でキールは言う。この間の続きとはまさに「契り」の事だろう。私はその言葉を聞いて、ドクンッと心臓が跳ね上がり、顔が紅色に染まる。


「う、うん」


 うんなんて素直に答えるの、かなり恥ずかしかったけど、断る理由もない。むしろ私も早くキールと一つになりたかった。私の返事にキールも笑顔を覗かせたが、すぐにフッと真顔に変わり、そして私の躯をベッドの上へと沈める。


 ――ドクンドクンドクンドクンッ。


 これまでにキールとはエッチしているのに、今日は本当の本番かと思うと、緊張が一段と異なる。ドキドキし過ぎて心臓が破裂してしまいそうだ。


「やっと契りの時が来たな」


 キールの感慨深い言葉を聞いて私は微笑んだ。そうだ、やっとやっとキールと結ばれるんだ、身も心も。躯が興奮して火照り始める。キールから蕩けそうなキスが繰り返しされ、頭の中が真っ白に染まっていく。キスは耳裏、首筋へと徐々に落ちていき、この間のマキマキ王の時とは違って甘く酔いしれる。


「……ん、んぁっ」


 自然と熱に浮かされている声が洩れ、私の全身が真っ赤に浸透していく。そこから寝巻の胸元を開かれ、キールの唇は胸の上部へと落とされた。


「ふぁっ」


 敏感な部分に近づかれ感度が上がる。唇が胸の突起へと触れようとした時だった。


「え?」


 キールはなにかに反応して呟いた。私は恥ずかしさで伏せていた瞼を開くと、キールの凍り付いた表情が映り、私は妙な緊張を走らせた。


「ど、どうしたの? キール、顔が……」


 さらにキールの表情は蒼白としていき、私は瞠目する。そしてキールは乱暴に私の胸元を引き裂いてきた!


「ちょっ、キール! いきなり乱暴にしないでよ!」


 力づくでキールが胸元を開いた為に、寝巻の布が破れてしまった。


「な、なにするんだよ! こんな乱暴サイッテーだぞ!」


 豹変したキールの行動に、私は困惑と怒りがごっちゃ混ぜになって彼を睨み上げる。


「千景、胸元を見てみろ」

「え?」


 キールの酷く低い声に私は嫌な予感が過った。


 ――ま、まさかマキマキ王がキスマークでも付いていた!?


 でもバーントシェンナへ帰国中、泊まった宿で湯浴みした時にはなにも躯には付いてい……な……かった? 私はキールに言われた通り、胸元へと視線を落とす。刹那、凍りつく。


「な、なにこれ!」


 私の胸元の上部から淡い光が放られていて、なにかのマークが浮き上がっていた。このマークは……?


「刻印だ。マルーン国のマキシムズ王が付けたものだ」


 キールの言葉に私は血の気が引いていく。見た事のあるバラのようなマークだと思ったら、マルーン国の紋章だ!


 ――ど、どうしよう、マキマキ王に少し手を出された証拠になるのかな。キール、凄く怒っているみたいだし、ど、どうしたら。


「マキマキ王とはなんにもなかったよ!」


 私は瞳に涙を滲ませ弁解する。あんな王との一時的な出来事で、せっかく結ばれたキールにお別れされたくない!


「千景。よく聞いてくれ、それは禁断の刻印だ」

「禁断の刻印って?」


 あのキールが今にも崩れそうな表情が私の胸を切なく締め上げる。


「その刻印がある限り、オレ達は契りを交わす事が出来ない。刻印を解くにはマキシムズ王を手掛けなければならない」


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