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番外編④「喜悦な心と複雑な想い」

今回は一話こっきりの番外編の話となります!ほのかに甘糖な話です!これは前回の番外編③の翌日の夜、または五十七話の千景が床についた後の話となります!

 ――眠れないな……。


 どうしたんだろう。なんだか眠れないんだよね。消灯した部屋のベッドの中で、私は一人考え事をしていた。キールは隣でぐっすり綺麗サッパリに眠っている。こうやってキールと一緒のベッドで寝るのもあと少しになるんだな。


 その内、隣に眠る相手は……チナールさんに。ぐふふっ❤ 思わず私はニンマリとしてしまう。相当ニヤけているだろうけど、もう明かりは消されているし、仮にキールが目を覚ましても、今の私の顔はわからない。


 そんな事より、さっぱり眠れないのがヤバイな。この間キールと喧嘩して、暫く寝るのが別々になっていたけど、昨日からまた一緒に眠るようになって、グッスリと眠れたていたんだけどな。また眠れないのは……興奮しているからだよね?


 もしかしたら、近い内にチナールさんと一緒になれるかもって思うと、興奮が治まらない……と思いきやどちらかというと、モヤモヤしていた。さっき寝る前にキールと会話した後からなんだよな、なんか鬱っぽいというかなんというか…。


 なんだろう。別にキールとこの間みたいな喧嘩をしたわけでもないのにな。わっかんなぁーい! 考えてもわからなくて半ば投げやりになる。あ~あ、私がチナールさんの所に嫁いだら、キールはちょっぴし淋しい思いするのかな?


 ――……ん? まさかまた夜な夜な美女と寝られると思って逆に喜んだりしないよ……ね?


 なんだか輪をかけてモヤモヤし始めてきたぞ。た、確かに私はもうチナールさんがいるし、キールが誰と過ごそうが寝ようと全く関係ないし、気にもしないけどさ。その内にキールにも好きな人が出来て、その人と一緒に寝るようになるんだろ……う……し。


 モヤモヤが今度はチクチクに変わる。私にしてたあんな事やこんな事を今度はその好きな女性(ひと)とするんだろうな……。あ、あれ? なんだかチクチクからズキンッズキンッに変わって痛いな。


 そういえば、キールって今好きな人いるのかな。少し前までは実は私の事を好きなんじゃないかなって思ってたけど、一向に想いを伝えようとしてこなくて、結局、私を好き説は間違いだったって思い知ったんだけどね(実に苦い思い出になった)。


 それに私にけっこう熱いエッチな事してくる割には一度も好きだとも愛しているとも言わないしね。別にそれが悲しいとか淋しいとか全く思わないけどさ! キールの部屋に飾ってある絵画の元カノとはニ年前に別れたって言ってたけど、あれから好きな人はいないのかな?


 んで、私の次に一緒にベッドで寝る相手には好きだとか愛しているって言うんだよね? そりゃ、恋人同士なら当たり前だけどさ。私もチナールさんから言われるからいいんだけどね。んー、さっきから無性にモヤモヤ、イライラ、ズキズキと、色々な思いに駆られて、気が付いたら頬に涙が伝っていた。


 ――な、なんで?


 自分でもわけがわからず、ビックリして涙に疑問をもちつつ、チラリと横で眠っているキールに視線を向ける。消灯しているから、彼の顔はわからない。


 ――なんだろう。なんでこんなにモヤモヤとするんだろう。


 私はチナールさんが好きだし、彼と一緒になるという事はキールとのこの生活からもサヨナラしなきゃで、そしたらキールも新しい彼女と一緒に過ごすようになるわけで。


 お互い別々の生活をするのが当たり前……になる筈なのに、どうしてこんなに悲しい思いに駆られるんだろう? 涙は止めどなく出てきて、どうしたらいいのかわからず、鼻をズズッとすすった時だった。


「眠れないのか?」


 ――え?


 私は目を大きく見開いた。今の声……。


「キール、起きてたの?」


 キールは目を閉じたら数秒で眠れるぐらい寝つきの良い子だ。なのになんで今日は起きているんだろう?


「オマエの気が妙に乱れているから」

「え? 気?」


 言われている意味が把握出来ず、私はキョトンとしてしまう。明かりがないから、今キールがどんな表情をして言ったのかがわからない。


「ちょっと考え事をしていただけ。もう眠るよ」

「なんで泣いてんの?」

「え?」


 ――どうして私が泣いているってわかったんだろう?


 部屋が暗いから表情は見えない筈なのに。私は怪訝に思いながらも、泣いている事を知られて気まずく思い否定した。


「泣いてなんかないよ」

「なにかあるから泣いてんだろ?」


 うぅ、やっぱりキールは鋭いから誤魔化せないな。なんか透視能力でもあるのかな? 不思議な力持っているみたいだし。私はなんて答えたらいいのかわからなくて、躊躇っていたけれど、無意識の内に質問をしていた。


「……キールってさ、好きなコいるの?」

「それを気にして泣いてんの?」

「ちっがうよ!」


 な、なんでそういう風に受け止めちゃうんだろう! それって私がキールの事を好きみたいな言い方じゃん! 私が好きなのはチナールさんだっての!


「気にすんの、それ?」

「ただふと思っただけだよ!」


 せっついて訊いてこられても、私の気持ちは変わらないもん。すぐ自信過剰に受け止めるからな、キールは。


「ふーん。なぁ?」

「なに?」

「キスしよっか?」

「え?」


 人の質問に答えず、何故そんな発言を出してきたんだと疑問に思い、私は躯を引きそうになる。


「ダ、ダメだよ」

「なんで?」

「なんでって……」


 だって今後はチナールさんと一緒になれるかもしれないっていうところに、違う人とキスするなんて! チナールさんに不埒な女だって思われたくないもん。


「昨日、散々ヤッておいて今日はダメなんだ」

「そ、それは……だって今日……」


 ゴニョゴニョと言葉が濁ってしまう。た、確かに昨日は最後までしようとして、でも女のコデーになってしまったから、お預けになっちゃったわけで……。でももう私はチナールさんと一緒になるって決めたから、キールとキスとかエ、エッチな事はしちゃいけないんだ。


 それをキールに伝えづらくて黙っていたら、いつの間にか唇が重なってきて、ビクンッと躯が反応する。抵抗を感じて口を開けられずにいると、キールの舌が捻じ込むように侵入してきた。またビクンッと反応する。


 ――ど、どうしよう。


 このままチューしてたら、チナールさんに嫌われちゃうよ!


 ……………………………。


 ダメだダメだと思いながらも、早一時間はチュータイムをしてしまっていた。相変わらず甘く蕩けそうなチューに没頭してしまって。私は頭がボ~として瞳も恍惚感で潤っている。しかも熱が籠っているせいか、気が付けば大胆な発言をしていた。


「もう他の女性(ひと)とチューもエッチもしちゃダメだよ?」

「それってオマエ以外って事?」

「そ、そう」

「フッ、ははっ」


 な、なんでここで笑うんだ、コヤツは! 私は思いっきし顰めっ面を見せたけど、部屋が暗いからキールには表情がわからないんだろうな。


「いいかげん気が付けっての」

「なにをだよ!」

「他の人と出来ない分、オマエでさせてもらわないとな」


 私の突っ込みはフルシカトされ、再びキスが降りてきた。舌が重なって優しく絡んでくる。そして何度も何度も深く絡んで、また熱が帯び始めた。暫くして唇を離され……。


「生理、終わったら昨日の続きしような」

「え?」

「嫌?」

「い、嫌じゃないよ」


 答えてさらにカァーと熱が上がり赤面となる。


「最後までしような」

「う、うん」


 私が答えると、また濃厚な熱いチュータイムが始まった。そしてキールとチューが始まる前のモヤモヤやズキズキはいつの間に嘘のように消えていて、今はとてもフワフワッとした甘い気持ちに溢れていた。このままキールが眠りに入るまで甘い時間は続いて、最後眠りにつく前に彼はこんな言葉を残した。


「やっと恋慕の花が満開になったな」


 その言葉の意味はわからなく、そしてキールに訊く間もなく彼は眠りに入ってしまい、そして私も続いて深い眠りへ入ってしまったのだった…。


翌日がチナールとの恋の結末の話へと繋がっています!

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