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第四十七話「再び街へと繰り出します!」

 お、恐ろし過ぎる! 若さ故にエネルギーが有り溢れているのだろうが、私には全く理解が出来ない領域だった。一昨日のスイーツ事件後、キールの仕事が始まるまでの数時間、彼からたっぷりとお仕置きという名の調教が行われていた!


 そして仕事の時間が始まる少し前、キールは眠気の様子を全く見せず、むしろ何故か清々しい表情をして部屋から出て行った。


 今宵、部屋に戻って来たキールはさぞかし眠いだろうと、すぐに安眠へと入るかと思っていた…………が、またしても人をすっぽんぽんしては、あんな事やこんな事と、とても口に出来ない事を好き勝手にしていた。


「昨日ろくに寝てないのに、なんで寝ないんだよ!」

「調教ってのは一回こっきりで出来るモンじゃないんだよ。しかもオマエ、相変わらず口が減らないし、今日は少しハードに教え込まなきゃな」

「や、やめてよぉ、あぁぁん」


 しかも描写型や質問型といった言葉責めをして人を辱める。さらに人に答えさせようとしてさ、「どこに?」「なにを?」「どうして欲しいの?」ってさ! どんだけドSサディストなんだ! 何処でそんな事を覚えたんだろうね、フンフン!


 と、まぁ調教ではなく、ただのキールのエッチし放題としか言いようがない。でも絶対に最後まではしようとしないんだよね。べ、別にそれがもどかしいとかは全然思わないけど。しかし、どうしたらあんな色情狂というか精力絶倫が生まれるのか!


 そういえば、スイーツ事件からキールの物腰が柔らかくなったように感じるな。前まではどこか一線張られていたというか、それが弾けて屈託のない接し方をしてくれているのは嬉しいと感じたいが、今はただのエッチなヤツだとしか言いようがない。


「どうしたの、千景? 顔が赤いけど発情期?」


 午前中のシャルトとの勉強会の時間を迎え、部屋で彼を待っていたのだが、シャルトは来た早々とんでもない事を口にしてきた。


「顔が赤いなら普通は熱でもあるんじゃないでしょ!」


 全くさ、人を色情狂扱いしないで欲しいわ! それはアナタのご主人様でしょうっての! 私が心の中でブーブーと文句をたらしていると、


「だって、なんかスイーツ事件から千景、雰囲気が変わったわよね? なんていうか……」


 シャルトが無駄にジーッと見つめてくる。なんか意味ありげで怪しい眼差しだぞ。も、もしかして、このニ日間たっぷりとキールからエッチな事されまくっていたから、い、色気とかフェロモンムンムンとか艶めかしさとかが増して、雰囲気に出ているんじゃ!


 ――有り得るぞ!


 私は焦燥感に駆られ、アワアワ怪しい動きをしてしまう。


「べ、別になんも変わってないと思うけど?」

「そう? あ、キール?」

「でぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 私は素っ頓狂な奇声を上げ、シャルトが向けている視線の先へと身を翻した。


「嘘よ」

「はい?」

「だからキールいない」


 確かに入口の扉には誰の姿もない。まさか……。


「なに嘘ついてんだよ! やめろよな、そういうの!」


 私は憤慨してピシャリと怒鳴った。


「ねぇ、千景」

「フンだ!」

「今日の勉強会だけど、街の見学に行こうと思っているの」

「ふぇ?」


 私はフンフンッと怒っていたが、シャルトの言葉に怒りがしぼんだ。


「そ、外? だってあれだけ出ちゃいけないって。しかも危険が潜んでいるんでしょ? この間みたいな事が起こったら」

「宮殿近くの安全な所までよ。千景が勝手に外に出たのは頂けなかったけど、キールも言葉を覚えたアナタとの約束を決行しなかったのも悪かったと言っていたわ」

「そ、そうなんだ」


 何気にキールも考えてくれていたんだな。実は昨日も私をずっと寝かせておいてくれたんだよね。シャルトに勉強会を休ませるように伝えてくれいてたみたいでさ。自分はきちんと仕事に行ったのにね。


「もう外に出るの?」

「すぐに行くわよ」


 立ち上がって部屋から出ようとするシャルトの後に私も続いた……。


☆*:.。. .。.:*☆☆*:.。. .。.:*☆


 相変わらず恐ろしく広い宮殿だ。門まで行くのに十五分近くかかったばい。どんだけ広いんですかね! 私は正門から出る直前、キョロキョロと辺りを見渡した。


「なに探してんのよ?」

「いや、だってキールは?」

「キールって、なんでキール?」

「外に出るなら一緒かと思って」

「キールは仕事があるもの。来られないわよ」

「そ、そっかぁ」


 なーんだ、てっきりキールも一緒に来るのかと思っていたんだけどな。


「キールじゃなくて悪かったわね」

「そんな事ないよーだ。シャルトで十分だって」


 まぁ、ちょっとは残念な気はあるけどね。キールと一緒に色々見て回ったり、カフェでお茶したりしたら楽しいかな……なんてね。


「千景、アンタ……」

「え?」

「……なんでもないわ、行くわよ」

「?」


 なにか言いかけてやめるなんてシャルトらしくないな。でも私は気にせず、シャルトの後に続いた。正門から十分ほど歩いたこところで、既に凄い人だかりがあった。


 この間は具合が宜しくないと思って、宮殿近くの商店街を敢えて見なかったけど、ここが一番活気づいているかな。それほど人がわんさかとごった返していた。


「絶対に私から離れないようにね?」

「わかってるよ」


 言われて私はシャルトの近くに寄る。


「気になる商品があれば、買っても構わないわ。でも食べ物だけは駄目よ」

「え、いいの?」

「キールから許可取っているし、いいわよ」

「やったぁ~」


 私は素直に喜んで、あっちゃこっちゃのお土産さんを訪れた。実は私は大のショッピング好きで、気になるお店があれば、一つのお店に何十分もいたりしていたんだけど、シャルトは気にする素振りを見せず、ずっと付き添ってくれていた。


 見ていると、あれもこれも欲しくなったけど、とりあえずは女子の必需品、ハンドタオルと肌寒い時に膝かけように、ショールのニ点を数枚買ってもらった。ちゃっかりマグカップも。


 喉が渇いた時には使用人さんが、わざわざ持って来てくれるけど、出来れば好きな時に、自分で飲める方がいいもんね。何気にカップをニつ購入しようとしていたら……。


「色違いにしてもカップの一つ、男性が好みそうな色よね? なんで?」

「うん、こっちはキールのにしようかと思って」

「キール?」

「そう、せっかくだからさ」

「なんか色違いでペアみたいね」 「そ、そうかな」


 ペアと言われて私は妙に動揺してしまった。やっぱそう思われちゃうかな~。でも一緒にお茶とか飲むかもしれないしね。そしてシャルトはマグカップのニつも買ってくれた。


 帰り道を歩いている間、私はお土産を買ってもらえた嬉しさのあまり、ウハウハルンルンとしながら歩いていた。そんな時だ、ふとシャルトから、こんな言葉をかけられた。


「千景、アンタ元の世界に帰りたいって思わないの?」


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