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第三十九話「宮殿の外へと繰り出します!」

「外に出たい、外に出たい、外に出ーたーいぃぃー!」


 回廊の窓から差し込むポカポカの陽射しに照らされたら、思わず叫んでしまった。だってさ、こっちの世界に来てから、既に一ヵ月半も経っているのに、一度も宮殿から出てないんだもん。


 約束していたこっちの言葉もだいぶ覚えたのにさ。約束が違うってシャルトに抗議をかけたら、キールの許可が出ていないからダメだって言うし、ならばとキールにお願いしたら、アッサリ駄目だと言いやがった。


「なんでだよ、ちゃんと言葉を覚えただろ」


 とある昼下がり、移動中のキールにバッタリと遭遇した私は彼を呼び止めて訴えた。回廊の隅で叫ぶ私の声が響き渡る。


「駄目だ。オマエを連れて行く時間がない」

「一人で散策に行くもん」

「宮殿内でも迷うオマエを一人で行かせるわけないだろう」

「宮殿内が複雑なだけだもん、外は一人で行けるってば」

「駄目だ」

「ケチケチケチ、行かせろよ! 約束守らないなんて卑怯だぞ!」

「なんとでも言え。駄目なものは駄目だ」

「いつならいいんだよ?」

「時間が出来た時だ」


 キールの明らかに濁らせている答えが腹立だしかった。


「フンだ、勝手に出てやる」

「千景、言う事をきかないなら、今すぐここでブチ込むぞ」

「!?」


 マジ切れしているのか、キールは殺気立てながら私に近づいて、スカートの裾を掴んできた。わわっ、そのまま裾をたくし上げようしてきたぁああ!


「やめろぉ! エロエロ大魔神! 昼間から卑猥な事を言って、エ、エッチな事しようとするなんて最低だ!」

「言う事をきかないオマエが悪い」


 私は必死でスカートの裾を下ろしながら、抵抗を見せるが敵わない。私のセクシー太腿とお気に入りワンポイントパンダちゃんのオパンティーが露わになったぁああ!


「やめろやめろやめろっ、誰か来たらどうするんだ!」

「あぁ、そうだな。だから早く終わらせないとな」

「!?」


 キールはいきなりパンダちゃんオパンツに手を伸ばして、下にずらそうとしてきた。


「や、やめてよぉ……」


 私は涙目になって叫んだ。するとキールの動きが止まり、ショーツから手が離れる。


「う、うぅ……」


 恥ずかしさと悔しさで、私はボロボロに涙を零していた。


「う、う……こんな事して酷い」

「オマエが聞き分けないからだ」


 キールに悪そびれた様子はなく、逆に私が悪いと言い切った。


「キールなんて大嫌い!」


 そう叫ぶと、再びキールの手が伸びてきて私はビクッと慄く。またなにかされるんじゃいかと思って、硬く瞼を閉じた。そしてキールの手は私の頬に流れる涙を拭う。


「千景……」

「大嫌い」

「嫌いで構わない。でも今は外出禁止だ」

「……っ」

「それと……ショーツ、もう少し色気のあるのにしろよ」

「!?」


 い、色気のあるショーツって? な、なんで私がキール好みのオパンツを穿かなきゃいけないんだ! パンダちゃんオパンツはわざわざイラストを描いて特注してもらった超お気に入りなんだからね! フンフンッ。


「あ~あー、外に出たいよ」


 私は回廊の窓の外に広がる景色を眺めながらボヤいた。最近チナールさんの姿も見てない。どうしたんだろう、前は週に二回ぐらいは来ていたのにな。つまんない、つまんなぁい。


 私は大きなバルコニーの前まで足を運んで、宮殿の外の景色を眺めた。青空の下でチュンチュンって鳴きながら飛んでいる小鳥が羨ましいよ。空を自由に飛べたら気持ちいいだろうなぁ。


 ――ん?


 そ、そういえば、初めてこの世界に来た時、私ってば躯を宙に浮かせていたよね? かなり遠い記憶ですっかり忘れていたけど。確かキールも私を抱えて飛んでいたし。こ、こっちの人って実は皆飛べたりするのかな?


 で、でも他に飛んでいる人を見た事がないしな。も、もしかしてだけど、今飛べちゃったりする? 私はキョロッ、キョロッと目線をチラつかせる。…………今は周りに誰もいないぞ。それを確認した私は思い切って地を蹴り、上へとジャンプした。


 すると……………………………………な、なんと、躯がフワッと浮き上がったぁああ! 前のめりの不格好で浮いてしまっているけど、そんな事より、う、浮いているなんて! し、知らなかった、こっちの世界では私は飛べるんだ!


 あ~この事実、今まで忘れていたなんて勿体ないすぎたぁああ! そして私はハッと息を呑む。このまま外に出られたりする? これなら正門を通らずに行けるから、止められたりしないよね。普段、私は正門から出られないようにされていた。それが今出られると思うだけで瞳が歓喜に潤う。


 よぉおおし、このまま人目につかないように、空高く舞い上がって街へと繰り出すぞぉおお~。この時の私はキールから忠告を受けていた外出禁止の意味を軽率に考えていて、それが(のち)に如何に愚かで取り返しのつかない事であったと、とんでもない後悔をするのであった……。


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