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第三十八話「譲れないモノがあるんです!」

「うっわ~」


 自室で私は手にしたモノをマジマジと見つめ、感嘆の声を上げた。


「これヤッバイでしょ! キャワイ過ぎだって」


 さて私が手にしているモノがなにかと言うと……下着(ランジェリー)だ。それもただの下着ではない。そう、パンダのワンポイント柄が入ったオパンツなのだ。


 私は昔から動物柄のオパンツが大好きで、大人になった今でも身に着けていたんだけど、こちらの世界に来てから、そういったものとは一切無縁になってしまい、それが大層不満であった。


 まぁ、用意してもらったショーツは艶のある刺繍糸で作られた繊細な模様に、フリルやレースがふんだんにあしらえた甘く上品なデザインのものが多い。私の世界で購入すれば、軽く数万円クラスのものばかり。


 それはそれで素直に嬉しいんだけど、でもやっぱり動物柄のオパンツが恋しいのだ。で、私はこちらの世界ではヒップが大きい方みたいで、特注扱いされるから、ならばとダメ元で自分がデザインしたものを作ってもらえないかシャルトに頼んでみた。


 そしたらだ……その意見が通ったではないか。天にも昇る気持ちで私は喜んだ。そして待ちに待ったオパンツのサンプルが手に届いたところだった。私がデザインした通り、忠実に作ってくれている。感謝感謝!


「ねえ、なにそれ?」


 そういえば、シャルトが隣にいるの忘れてた。彼がこのパンダちゃんオパンツを持ってきてくれたんだよね。「例のサンプル品が出来上がったわよ」ってね。シャルトは私が手にしているオパンツを怪訝そうに見つめている。


「なにそれって。ショーツじゃん?」

「そうじゃないわよ。その絵柄の事よ。白黒の大きさバラバラの丸が散りばめられているじゃない?」

「あぁ、パンダちゃんだけど?」

「パンダちゃん? ……っていう妖怪なの?」

「ちっがうよ、これの何処が妖怪だ! 私の世界で愛くるしい動物なんだからね!」

「へー、それがねー」


 なんかシャルトが疑り深い表情をしているではないか。腑に落ちない様子だ。


「まぁ、仕方ないわよね。今まで生きていた世界が違うんだから、感性が異なるわよね」


 ぐっ、シャルトは明らかにパンダちゃんを見下しているぞ。


「フーンだ、こんなに可愛いパンダちゃんを可愛いと思えないシャルトが気の毒に思えるよ」

「そんな事を言うなら、それの完成品の依頼取り下げるわよ?」


 うげっ、シャルトを怒らせてしまった。こんな力作のパンダちゃんを取り下げるなんて、冗談じゃない!


「わーん、冗談ですぅ~」


 私はすぐに泣き付いた。下手に毒を吐くものではないですな。


「とりあえず、そのデザインで色違い数枚を頼んでおくわ」

「恩に着るよ~」


 やったぁ、制作決行! 完成品が届くの楽しみだぁ~♪


「作成に入ってから言うのもなんだけど、それきっとキールの好みとは全くかけ離れていると思うのよね」

「はい? なんでキールが出てくるのさ?」

「身に着ける頻度を考えるのよ。それを見たキールの気が変わられても困るしね」

「はい?」


 さっきからなにを言っているのだ、シャルトは!


「キールに見せる事なんてないから、変な心配してないでよね!」

「そう? アンタなりに考えているならいいけど」


 はい? もうさっきからシャルトが、なに言っている意味わっかんなーい! なんでパンダちゃんオパンツを穿いている姿をキールに見せるんだっての! あ、そういえば……。


「キールから聞いたよ、元彼女の事」

「え?」


 私の言葉を耳にしたシャルトがハッと息を切る。


「キールに気を遣って、王もシャルトも本当の事を話せなかったんでしょ?」

「それは……」


 シャルトは答えに窮し、表情を曇らす。


「まぁ、男女の仲は複雑さもあるからね。私もキールに深くは突っ込まなかったし」

「妙に物わかりがいいのね」

「妙は余計だよ、私は大人の女性ですから」


 十六と偽っても中身は二十五歳なのだ! そして憶測だけど、キールは元彼女に未練があるとみた。だって彼の部屋には彼女の絵画が飾ってあったしね。その彼女と別れてからなのか、彼女を宮殿で見かけた事がないんだよね。


 よっぽどなにかあったのかな? それをキールに訊いたところで「オマエには関係ない」って言われそうだし、なによりプライバシーの侵害になるから、そっとしておいているけど。


「アンタが大人の女性? ちゃんちゃら可笑しいわよ」

「なんですと?」


 今、シャルト鼻で笑ったよね。超失礼しちゃう!


「十六にだって見えないわよ、その中身」

「ッカー! 私は二十五歳の才知を持ち合わせていますので」

「なにわけわからない事言っているのよ。大人の女性なら、そんな動物柄の下着なんて身に着けないわ。アンタは才知どころか品格も持ち合わせていないんだから」

「ッカー、失礼極まりないっての! とにかく私はシャルトが思っている以上に、大人なんですからね」

「はいはい」

「なにそのどうでもいいみたいな諦めた言い方!」


 シャルトは実に面倒くさそうに私をあしらったぞ! そんな彼がさらなる追い打ちをかけてきた。


「その動物柄のショーツから卒業したら、大人だと認めてあげるわ」

「それはム・リィ~」

「じゃぁ、こっちも大人だと認めるのは無理ね」

「フ――――――――ンだ!!」


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