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第二十八話「昨夜の続きなんてまっぴらゴメンです!」

「はぅー、参ったな、さっぱわからんばい」


 私は用意された部屋に入るなり、深い溜め息と一緒に弱音を零した。だってだよ、異世界トリップした翌日の今日から、早速勉強会という重苦しい生活が始まったんだもん。


 禍と称され、やたら綺麗な十七歳の少年キールと無理に契りを交わされそうになったけど、未遂に終わって。でもそれは一時的に保留となっただけで、結局私はここでの生活を無理にせざるを得なくなった。


 こっちでの生活の不自由を少しでも緩和する為に、勉強する羽目になったわけさ。普通はウフフッ♪ といった豪華な生活を送るもんではございませんかね? フンフンッ。はぁー、それになんといっても勉強会がキョワすぎる。講師は私の付き人「シャルト」さんだ。


 しかも彼女はキールの恋人かもしれない。私はキールと契りを交わす相手なのに、キールもよりによってなんで彼女に託すんだ。どうやら私の世界の言葉を話せる人が限られている為、彼女しか教えられる人がいないという皮肉さ。


 こちらとしては非常に気まずいっての。それに輪をかけて勉強のカリキュラムが恐ろしい。ほんの数時間の勉強会だと思っていたのに、実際は一日八時間とみっちりなのだ。一仕事と同じ時間だよ。


 勉強は言語から始まり、生活習慣やら歴史やらと瞼がくっ付いてくれと言わんばかりの内容だ。しかし、シャルトさんの教えは厳しい。少しでも眠る素振りを見せたものならば、怒号の嵐が吹き荒れる。初日なんだから、お手柔らかにお願いしまっせ!


 でもね、わからん。本気でわからんのだ。特に言語なんて、てんでダメなんだよね。なんかこっちの言葉って、日本語にはない独特のアクセントが多くて、あっしはギブでございます。時間をかけてもダメだね、きっと。その内にシャルトさんが諦めてくれる事を検討祈ろう。


 ――数時間後。


「ふぅ~、お腹もいっぱいで躯もキレイキレイになったし、余は満足じゃ! 後は寝るだけ~」


 お腹も心も満たされた私はベッドに入った。明日も例の勉強会があるからな。朝が早いし、もう寝ようっと。あ~、この天蓋付きふかふかベッドは最高だ! 枕も二つあるし、外国の高級ホテルみたいだな。めっちゃ疲れているし、グッスリと眠れるぞ。そして躯をベッドに倒した時だ。


 ――ギィ――――。


「ん?」


 部屋の扉が開いたような……気のせいかな? とはいえ、私は上体を起こして扉へと視線を向けてみると、


「あ!」


 キールがいるではないか。なんか勝手に人の部屋へズカズカと入って来てますけど? 彼はきめ細やかな刺繍が施された、やたら美しい礼服を身に纏って立っていた。その美顔で、その礼服って何処の王子殿下様ですかね?


「なんでキールいんの?」

「は?」


 私の言葉にキールは思いっきし、しかめっ面を見せよる。レディの部屋にノックなしでズカズカと入って来る神経の人にはわからんのかね。


「湯浴みに入って来る」

「は……い?」


 キールの言葉が理解出来ず、そのまま彼の向かう先を目で追うと、なんと! 言葉の通りバスルームへと入って行ったではないか!


 ――どういうこっちゃいな!


 ここはあっしに用意された部屋ですよね? ベビーピンク色調のお姫様デザインだもん。どう見てもキールの部屋には見えないのになんなのさ。


 ――あー、本当にシャワーの音が聞こえてきたよ。


 ハッ! このシチュって、な、なんか現代でいう愛のホテル部屋で、相手を待つ時みたいな気分じゃない!?


―――いっやぁああ~!


 昨日のキールとの行為もあって、私はシュボボ~と顔を赤らめ、その恥ずかしさからか、掛けシーツを頭の上までスッポリと被った。


 ――ま、まさかとは思うけど、キール昨日の夜の続きをしに来たとかじゃないよね?


 シュボボボボォオオ―――!! さらに全身が真っ赤になってくる感覚に、私は雄叫びを上げた!


 ――ひょぇぇえええ~~~!!


 数十分後、キールがバスルームから上がって来たようだった。「よう」というのは既に私は躯をベッドの中へと埋め、掛けシーツを頭まで被っている為、キールの姿が見えていなかった。とはいえ、なんとなーく気になって目だけを覗かせてみた。


 ――うぉ!


 思わず叫びそうになった! キールの姿を目にして、不覚にもドッキンとしてしまったよ! 彼は清潔感のある真っ白なカフタンの服の上に、薄いローブを羽織っていて、あれは寝衣(パジャマ)なのかな?


 シャワー浴びたての湿った姿が妙に艶っぽく色気を醸し出していた。な、なんだ、このフェロモンムンムンは! 少年のくせに大人の女性を誘っているのか! へ、変にドキドキしてきたぞ。


 そんな姿を目にしたせいか、昨日のアレが生々しい映像化となって、私の頭の中で回っているんですけどぉおお!! なのにキールの方は全く気にする素振りもないようで、優雅に髪を乾かしていた(何気に乾燥機がある)。


 八歳も年下のくせに、恥じらいってもんがないのか! 暫くして髪を乾かし終えたキールが……何故か黙って私の方へと寄って来るではないぁああ!! な、なに目的ですか!?


「千景……」


 キールは私の前まで来よって名を呼んだ。私が視線を上げてみると、キールの表情が無駄に熱を帯びて艶めかしく見える……って事はだ……やっぱり、もしかしてぇぇえええ!?


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