表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/112

第二十五話「うたかたの愛の行方」

 そ、そりゃ、契りの最後といえば……そうだけど!私はカァアアーッてまた躯全体が熱に覆われ、瞳を開けていられなくなった。スルスルッて脱衣されている音が怖くて、耳に蓋をしたくなる!


 きっとキールは筋肉があって引き締まった躯つきをしているんだろうな。私はまともに見る事が出来ず、小動物のようにビクビクと躯を震わせていたら、キールがこっちに近付いて来るのが甘い香りで感じ取った。


 ――み、見られないよ、部屋も明るいし!


「……千景」

「!」


 どうしよう、どうしよう。うっすらと目を開いてみると、思っていた通り均整のとれた引き締まった上半身が映って、その下は……む、無理だ! 刺激が強いぃ! 


 ――これ以上は見ていられないよ!


 躯が沸騰しそうだ! 心臓が爆発しちゃうよ! まだ意識があるのが不思議なぐらいだった! 私は息を押し殺して瞼を閉じた!


 ……………………………。


 ――あ、あれ?


 一世一代を受け入れる覚悟を決めたのに、肝心なモノが来ないよ? 恐る恐る瞼を開いてみると……、キールがとても悩ましげな? 切なさそうな? なんとも言えない表情をして静止していた。見ようには躊躇っている様子に見える。


 ――え?


 今更そんな顔をされたら、こっちは萎える。しかし、私はキールの表情で気付いてしまった。その意味を把握した時、サァーッて熱が冷め、代わりに込み上げてくる瞳の熱に胸が締め付けられた。


 私、自分の事しか考えていなかった。自分の気持ちとか貞操とか、でも本当はキールも同じ気持ちだったのかもしれない。国を救う為に好きでもない女性ひとを抱かなくちゃならなくて。


 シャルトさんじゃなくても、大事な女性ひとがいるのかもしれない。だって私、キールから好きだとも愛しているとも一言も言われていない。彼は役目を果たす為に、気遣って優しく接していただけなんだ。私は気持ちが高ぶって瞳の潤いが深まった。


「キール」


 私はキールへと手を伸ばす。その手に気付いた彼は導かれるように顔を寄せてきて、私は彼の顔を両手で包み込んだ。一見キスをせがむような体勢に見えるけど、そうではなくて、私は自分の額を彼の額に当て……。


「……もう……やめよう。私、アナタを愛していない……」


 キールの瞳が大きく揺らぐ。


「でもアナタも私を愛していない……私、アナタと愛し合ってからしたい」


 私は涙で声が断続的になりながら伝えた。キールはなにも答えなかった。それは私の言葉が間違っていないのだと思い知らされた。でも不思議と落ち込む気持ちはなくて、安堵感が広がる。一時的な感情に流されて契りを交わしても心はなにも満たされないから、虚しさが残るだけから。


 ……………………………。


 長い長い沈黙が流れた。どのくらい経った時だろうか。気が付いたら私は深い眠りについていたのだった……。


☆*:.。. .。.:*☆☆*:.。. .。.:*☆


 視界が霞んでハッキリと見えない、意識も朦朧としている。私は微睡まどろむ感覚を押し退けて、意識を明瞭にしようと試みる。次第に視界が良好となり、瞳に入ってきたものはベビーピンク色の天井だった。


 ――あれ、私?


 どうやら私は仰向けになっているようだ。徐に上体を起こす。見渡す限り一面の壁もベビーピンク色で、可愛らしい装飾が施されたベッドの上にいる。そして右手にモゴッとした厚いものを感じて、視線を巡らせる。


「うわっ」


 やたら綺麗な男のコがスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。うつ伏せで顔だけをこっちに向けている。しかも真っ裸! つぅか私もすっぽんぽんだよ!


「あ、あれ? 私、どうしたんだっけ!?」


 長く夢の世界にいたような感覚が残っていて、すぐには記憶が追いつかず。確か私は合コンで楽しくカラオケに参加していて、自分の出番が回って歌ったら? ……ん?


 ――そ、そういえば!


 私、異世界へ飛ばされたんだ! 商人に売り飛ばされそうになったり、ケンタウルスや、やたら綺麗な人達が現れて、でもあれって夢じゃなかったの!? チラッと隣の男のコを見る。このコ、あのコだよね!


 ――あぁ――――! エッチをしちゃったコだよね!?


 わわっ、私、歌が音痴過ぎて禍だとかなんとかで、その禍から抜け出すには不思議な能力を持つ術者とかいう人と契らなくちゃいけなくて、それで術者のこのコとラブラブ行為に入っちゃって……どうなった?


 肝心な最後の記憶がないんだよぉおお!! うぅ、覚えている限りだとガッツリしちゃっていたような気がするから、最後までヤッたんじゃないかな! あ~~、会ったその日にエッチするなんてぇええ!! 私があわあわとテンパッていると、


 ――コンコンコンッ。


 室内の出入り口の扉が叩かれる音が耳に入ってきた……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ