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第二話「勘違いは幸せを運ぶ」

「うっわ~、なにこれ!」


 この世界に来て第一声がこれだった。もう一度説明をすると、私は合コンのカラオケで熱唱していた。採点不可の結果を出して気付いたら、この世界の光景に変わっていた。断片的な記憶を繋げていくと、落ち着きを取り戻してきたぞ。


 ――本当にきっかけはなんだったんだろう。


 今をときめくKKATの歌は人の心を鷲掴みにしただけあって、人の想いが強く、その因縁が私の歌声に感化されて、新しい世界へと導いてしまったとか。いやいや、もっと突き詰めて考えてみれば、あの歌の採点かな?


 カラオケの機械は私のあまりに歌が上手いという想定外の出来事に対応が出来なくなって、パニックっちゃったんだよね?あぁ、こんなに才能があるとわかっていれば、歌手になって人を感動させる道を選べば良かったのかな。私は急に自分が選んで来た道を後悔し始めた。


 いやいやいや、私の夢は温かい家庭を作る事だもん。何事も無難が良い、平凡が一番なんだ。歌手なんてならなくて良かったんだよ。気分を取り直した私はもう一度、辺りを見渡す。視線を下に移せば、不思議な事に水面となっており、その地の上に自分の足は着地している。


 私が思い描いていたファンタジーの世界とは似ても似つかない目の前の光景は本当になんにもなくて、水と空気だけが存在している。これを世界と言うべきか。うーん、なんにもないから発想も乏しくなる。


「こんな所に生物いるんかいな?」


 私は水面の下に片足を突っ込んでみると、ピチャピチャッと弾ける水の音がした。


「おぉ~」


 興奮した私はパシャパシャとさらに足を振る。水となんの変わりない柔らかさがある。その上に自分が立っている感覚が不思議で(たま)らないわ。どうやら生物が生息している気配は感じない。


「水面にちょこっと立っている時のカモメの気持ちってこんなもんかね?ウシシッ、実は飛べちゃったりしてー?」


 力を抜いて冗談半分で両手を広げてみると、フワッと躯が引き上げられる感覚がする。


「あんれ~?」


 気が付けば、本当に躯が宙に浮いていた!


「うっそーん」


 驚くよりも感動の方が勝り、胸の内が爆発しそうになる。


「凄い、凄い! 本当に飛んでるー、鳥になった気分!」


 私はハイテンションとなって、どんどこ空高く舞い上がって行き、空中を自由に飛び回る。空中で前回り後ろ回りもお手の物! この涙ちょちょ切れる思いをどう言葉に表したらいいの! こっちの世界では鳥類ってやつですか。


 そういえば、昔からよく空を飛び回る夢を見ていたな。あ、これも潜在意識から作り出された夢の世界なのか。パニックッてこっちに導かれた原因とか考えていたけど、よくよく考えてみれば、これは夢かぁ~。


 なんでもっと早く気付かなかったんだろう。いや、そもそも自分の夢を夢だとわかったりはしないもんか。今日は夢だとわかっているんだから、目覚めるまでの残り時間を堪能しようっと!


 テンションがHighになった私は空高く拳を上げて気合いを入れた。そうと決まればレッツらゴーゴーさ! 見渡す限り景色は変わらないけど、ここから行動を起こさないと、なにも変わらない気がする。これは私の夢なんだから、勝手な妄想で楽しませてもらうぞ~。


☆*:.。. .。.:*☆☆*:.。. .。.:*☆


 私はひたすら突き進んで行く。肌に風圧が当たるのを感じると、あー本当に私って鳥になったなぁって実感する。ニマ二マ。こんな怪しい顔をして誰かに見られでもしたら、間違いなく不審者扱いをされて捕まるレベルだけど、それほどの嬉しさが滲み出ていたのだ。


 ――どのくらい飛んでいったんだろう?


 かれこれ数十分は飛んでいるが、一向に景色は変わらなかった。このままなんの変化も得られず、夢から覚めてしまうのは勿体ない。諦めずに私はさらに先へと進んでいった。暫くすると前方にある物体が現われた事に気付く。このなにもない空間に揺れる二つの影。


 ――あれは?


 私はそれらにゆっくり、ゆっくりと近づいて行く。


 ――あれは……人だぁ―!!


 感動して思わず声を上げそうになったが、我慢して口元を押さえ込んだ。身の危険を案じて上空から凝視する。どうやら人以外にも馬なのか? ラクダなのか? はたまた足して二で割ったような、よくわからない動物までいる。


 動物の後ろには荷車があり、見た感じ一貫性のない大きさの荷物がいくつか置かれていた。商品かな? っていう事はあの人達は商人か? んー、アラビアン風のドルマンコートを身に纏い、顔立ちもあっち系の彫の深さだし、肌の色も褐色系で濃いもんね。


 ――えっと、ここはアラビアンの世界なのか?


 勝手な想像で実際はわからない。いや、私の夢の世界なんだから、アラビアン世界の商人に違いない。上空からだと彼等の声が全くといって聞こえず、私は思い切って降りてみる事にした。


 荷台の陰に身を隠して様子を窺う。異国の服装ではあるが二人の男性だ。彼等の会話を聞いてみると……? 大体異世界の言葉って、そのまま日本語だったりするからウケるんだよねー。


「!?」


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