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第五話:覚悟

「くそ、どうすればいいんだ」

 人ごみは全く途切れない。胸の鼓動が早くなっているのが分かる。体中嫌な汗でべとべとだ。焦った気持ちを落ち着かせるため深呼吸をする。そのとき人ごみが一瞬途切れ、その向こうで、智香らしき人影が小道の奥に引っ張られていくのが見えた。

「智香!」

 俺は再び人の波をかき分けて、全速力でその場に向かう。途中迷惑そうな顔をする人もいたが、そんなことを気にする余裕なんて今の俺には全くなかった。


 俺が汗だくになりながら小道にたどり着くと、そこにはガラの悪い三人の男と、そいつらに囲まれた智香の姿があった。

「君、可愛いね。どこから来たの?」

 智香の左に立っていた片耳に二つピアスを着けた男が智香に話しかける。しかし、智香は黙って拳を硬く握って震えている。

「こんなキモイオタクたちがいるような場所にいないで、俺たちと遊ばない?」

 今度は右隣にいた腰でズボンを穿いた、いわゆる『腰パン』をした男が話しかける。しかし、智香は相変わらず黙ったままだ。

「ほら、俺たちと楽しいところに行こうよ。案内するからさ」

 一番手前側にいた他の男に比べて、明らかに纏っている雰囲気が違う、銀の髑髏のネックレスを着けた、この男たちのリーダーらしき男がそう言い、智香の手を取ろうとする。その瞬間、さっきからずっと黙りこんでいた智香の顔が、恐怖にゆがむ。それを見た俺は、気が付くと男に向かって走りだしていた。

 くそ、なんでもっと早く動かなかったんだ。

 中学時代に相手していたチンピラたちとは、比べ物にならない雰囲気を持つ男たちをみて、足がすくんですぐに動きだせなかった。そんな自分に怒りを覚える。勢いを緩めず、智香の腕を掴もうとしている男に体当たりをかます。俺は男の体勢が崩れたのと同時に智香を連れ去ろうとするが、体勢を立て直した男に肩を掴まれると同時に顔を殴られて、横の壁に思いっきり背中を打ち付けた。口の中が鉄くさい。どうやら口の中のどこかを思いっきり切ったらしい。

「せ、先輩!」

 壁に叩きつけられて倒れる俺を見て、智香が悲痛な声で叫ぶ。

「なに人の獲物を勝手に連れ去ろうとしてんだよ。てめぇっ!」

 ついさっき手前側にいた男が俺に向かって叫ぶ。そして、智香に向かって、

「おい女。今先輩って言ったな。この男はお前の彼氏か、そうじゃなくても知り合いってことだよな」

 男は黙り込んで何か思案し始めたかと思うと、智香を舐めまわすように見て、急にいやらしい笑みを浮かべる。

「くくっ、そうだな。俺は今すっごぉぉぉくこいつにムカついています。もしかしたらこいつをここにいる三人でボッコボコにしちゃうかもしれないでぇ~す。そこで、俺からていあ~ん。お前、俺たちの物になれ。これ以上、こいつを傷つけられたくないんだったら――な!」

 男はそう言うと、倒れている俺の腹を思いっきり蹴る。お腹の中からすっぱいものが戻ってきそうになった。胃からの逆流は何とか耐えた俺だったが、痛みで景色が一瞬朦朧とし、今にも意識を手放しそうになる。

 男は倒れて起き上がれない俺の上に足を乗せ、サッカーボールのように俺のことを軽く前後に転がす。息苦しさから咳き込みながら、俺がかろうじて見える智香の顔を見た。俺の目に映る彼女は、その整った顔をひどく歪ませながら声を出さないで泣いていた。

 その瞬間、朦朧としていた俺の意識が完全に覚醒する。

 この野郎、智香を泣かせやがって!

 俺の中に今までかつて感じたことのないほどの激しい怒りが渦巻いていく。

「……分か……りました。一緒……に行き……ますから、先……輩をこれ以上……傷つけないで……。お願いします」

 智香は泣きながら絞り出すようにそう言うと、男たちの元へ歩き出そうとする。男たちはその様子を見て満足そうにいやらしい笑みを浮かべ、俺の上から足をどかした。

 ――今だ!

「智香を……泣かせてんじゃねぇぇぇぇぇっ!」

 俺は男の足を掴むと思いっきり引っ張る。気を抜いていたリーダーの男は下半身を思いっきり引っ張られたことでバランスを崩し、地面に頭を打ち付ける。一瞬、死んでしまってないかとヒヤッとしたが、どうやら大丈夫そうだ。

 残り二人は、突然の状況の変化に思考が追い付いていないようで、唖然としたまま完全に固まっていた。俺はそのチャンスを逃すまいと、勢いよく立ち上がり、男二人のお腹を殴りつける。

 しかし、男たちは一瞬顔を歪めただけで、すぐに体勢を持ち直し反撃してくる。当然さっきまで倒れこんでいた俺に反撃する力など残っておらず、男たちの攻撃をかわすので精一杯だった。どうやら男二人は俺に反撃されたことへの怒りで頭に血が上っているようで、攻撃が大振りで見切りやすい。そのためヘロヘロの俺でも、なんとかしばらくかわし続けていられたのだが、ついに、それにも限界が来る。

 ピアスの男の蹴りを、横にかわすことでなんとかかわした俺だったが、その後ろにいた腰パンの男の、下から上に振りあげた拳がついに俺を捉え、微かに残っていた体力を一気に抉り取る。 

 今までなんとか気力で立ち向かっていた俺だったが、お腹を殴られたことで、体中に溜まっていたダメージが一気に爆発する。膝が震えてもう立っていられず、そして――気が付いたときには、俺はコンクリートの冷たい床に倒れていた。

「じゅん……せんぱ……いぃ」

 智香の、心が締め付けられるような泣き声が聞こえる。その声を遮って、俺の腹を殴った男が荒い息を吐きながら、大声で叫ぶ。

「はぁ、はぁ、手こずらせやがって。お前みたいな正義感バリバリのお子ちゃまが、俺は一番嫌いなんだよ! ったく。おい、女! こっちにきやがれ!」

 男は声を荒げながら、智香に近づいていく。

「いやっ! いやぁぁぁぁああ! 助けて! 助けて、純先輩!」

 智香の悲痛な叫び声が聞こえる。


 ――おい、俺。何倒れてんだ。お前の大切な後輩が泣かされているんだぞ。大声で助けを求めているんだぞ。こんな時に、何呑気に休んでやがる。

 立て……立ち上がれ。

 俺は今ここで立てなかったら……、拳を握って立ち向かえなかったら……。


 ――絶対に一生後悔することになる!


「おい……俺の大切な後輩に……智香にそれ以上汚い手で触れるんじゃねぇぇっ!」


 俺はしっかりと大地を踏みしめ、立ち上がる。男たちが驚愕の表情を浮かべたが、そんなことは知ったことじゃない。ふらつく身体に喝を入れて足に力を込めると、全力で駆けだす。そしてその勢いのまま、智香を押さえつけている腰パンの男を全力で殴り飛ばす。 

 男は智香の腕を抑えるのを止め、俺の攻撃を防ごうとするが、突然の俺の攻撃に防御が間に合わず、壁に向かって吹っ飛びそのままズルズルと倒れこむ。

 すぐに俺が立ち上がってピアスの男を睨みつけると、奴と視線が合った。智香の足を抑えていたピアスの男はビクッと震えてあたりをキョロキョロ見回すと、智香の足から手を離し、「く、くそぉ。だから嫌だって言ったんだよ!」と、俺にはよくわからないことを呟き、ナイフを取り出して俺に向けて構える。

「あ、あはははは。こ、こっちくるなよ。俺はナイフを持っているんだからな。こっちに来たらお前を刺すぞ。脅しじゃないぜ」

 男はまくしたてるようにそう言うと、何度も前に突き刺す仕草をしながら後ろに下がっていく。どうやら逃げるらしい。俺には二つの選択肢があった。

 一つは目の前のこいつを見逃すこと。おそらくこちらのほうが安全だろう。しかし、俺は迷わずもう一つのほうの選択肢を選んだ。それは、目の前の男を倒すことだ。確かにこちらのほうが危険だ。だが、こんな最低な屑を野放しにはしておけない。なにより智香を泣かせたこいつをこのまま逃がすなんて、俺には到底許容できなかった。それに、俺にはこいつを絶対に倒せるという確固たる自信があるのだ。

 確かにナイフは危険だ。だが、それは使い手がうまく扱えた場合である。男のナイフを持つ手は震えている。そのうえ、奴のナイフを振る仕草があまりに不慣れな様子だったため、俺は『こいつはあまりナイフを使うような状況に陥ったことがない』と予想した。

 智香が目じりに涙を浮かべて、不安な目で俺を見つめてくる。俺はそんな智香に笑顔で頷き、ピアスのほうに大きく一歩踏みだした。すると、男はひどく慌てて、

「来るなっての! 死にたいのか」

 と、叫んだ。間違いない。こいつはナイフを使ったことがない。

 それなら!

 俺は拳を振り上げ、男に向かって駆け出す。すると男は涙と鼻水まで流しながら、

「来るなぁぁぁぁあああ!」

 と、叫びながら下がるのを止め、ナイフを両手で前に突き出して突撃してきた。俺と男の距離が縮まっていく。あと三メートル……二メートル……今だ! 

 拳をおろし、俺は片足を軸に、体を一回転させナイフをよける。男は俺のとった行動に驚き、目を見開いて振り返ろうとする。しかしもう遅い! 

「くらえ!」

 俺は残る力をすべて絞り出し、男の背中に渾身の回し蹴りを放つ。男は背中に直撃を受け、その場に倒れこむ。これは昔、不良相手にやった戦法である。俺が念のため男に近づき様子を確認すると、男は泡を吹いて気絶していた。

「すぅぅ、はぁぁぁ」

 俺は大きく深呼吸をして、気を落ち着かせるとナイフを男の手からもぎ取った。そしてすぐに警察に電話し、男たちの居場所と、どういった被害を受けたかだけを簡潔に伝え、電話を切る。俺たちの素性は伏せておいた。なぜなら、これ以上面倒なことになる危険性は排除しておきたかったからだ。正当防衛とはいえ、学校に喧嘩がばれると面倒くさいことになりかねないと考えたのである。


 俺たちは、急いで大通りに戻ってきた。警察に電話したとはいえ、男たちはそのまま放置してきたため、目を覚まして追いかけてくる可能性がある。そのため、まだ気を抜くわけにはいかなかった。先ほどの路地裏からは駅のほうが近い。

 では、なぜ駅ではなく大通りに出たのかというと、大通りに出ればもし男たちが起きすぐに追いかけてきたとしても、駅より人通りの多いこの場所では面倒だと考えて、追いかけるのを止めるはずだと考えたからだ。

 結論を言えば、男たちは追いかけてこなかった。駅に無事につき、智香の無事を確認しようと彼女のほうに向きなおると、彼女は俺の顔を見た途端、大粒の涙をこぼし始める。そして、次の瞬間に大声で泣き出してしまった。俺はそんな智香に何も言えず、頭を撫でてやることしか出来なかった。

 しばらく経ち、智香は落ち着きを取り戻すと、「もう少し春木野を見ていくか?」という俺の提案を断って帰ることを望んだため、俺たちは帰路につくことにした。帰りの電車は行きと違いとても静かで、智香はあんなことがあって疲れたのか、俺の肩に頭を乗せて規則正しい寝息を立てながら、静かに眠っていた。

 俺はその様子を見て、心の底から『この子を守ってあげたい』と思うようになっていた。しばらく智香の寝顔を見ていた俺だったが、戦いの疲労と心地よい電車の揺れが相まって、いつの間にか眠りについてしまった。

 俺たちの最寄りの駅に着くと、智香は俺の手をまた握って、

「純先輩。お願いがあるのですが……」

 と、俺の顔を見ながら上目づかいで言ってくる。その様子が反則的に可愛かったため、しばらく思考が固まってしまった俺だったが、ふと我に返り、慌てて答える。

「ど、どうした? そんな改まって言わなくても聞いてやるって」

 俺が平常を装って言うと、智香は俯いて少し体を震わせながら、

「わ、私の家に来てくれませんか? 一人だと、怖くて……」

 と、俺の手を握る力を少し強くしてお願いしてきた。俺はその時、今日の出来事が想像していた以上に智香を苦しめていることを痛感した。

「……それで、智香の家は何処にあるんだ?」

 気付くと、俺の口からそんな言葉が飛び出していた。それを聞いた智香は、「え?」と言いながら顔を上げて、俺が笑って頷くのを見ると、非常に安心した笑みを浮かべる。そして俺に向かって、

「ありがとう……ございます」

 と、小さくお礼を言った。

 智香の家は駅から十五分程度のところにあった。いかにも一軒家というイメージのクリーム色の外装をした綺麗な建物で、俺が想像していたよりも少し大きかった。

「先輩、なにしてるですか。早く入るですよ。せっかく女の子の家にこられたんですから、心いくまで堪能していけばいいのです、デュフフ」

 智香がいつものにやけ顔で減らず口を叩いてくる。いつも通りだな、こいつ。もう放っておいて帰っても平気なのではないか? そんなことを考えながらも、確かに智香がどんなところに住んでいるのか気になってきたので、素直にお邪魔することにした。

「お、お邪魔します」

 俺が緊張しながら智香の家に入ると、先に入っていた智香が走ってきて、

「お帰りなさい、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ・た・し?」

 と、クネクネしながら言ってきた。……くそ。真一なら容赦なく十字固めの刑だが、智香がやると、嘘でもわりと嬉しいため、物凄く対応に困る。だが、ここで乗ってしまうとこいつは調子に乗るので止めなければいけない。

「お前で!」

 あれ? 俺は何を言っているんだ? 止めるはずではなかったのか。俺の返答が予想外だったのか、智香は顔をトマトのように真っ赤にしながら固まってしまった。

「お、おい、智香。大丈夫か?」

 俺が慌ててそう聞くと、智香は顔を真っ赤にしながら、

「だ、大丈夫なのですよ。この程度でま、負けるわ、わ、私ではないのです。……正直ノックアウト寸前でしたが」

 と言ってきた。最後のほうは声が小さくて聞こえなかったのだが、とりあえず言いたい。

「お前は何と戦ってんだよ!」

 俺がツッコミを入れると、智香は目を見開いて、

「自分自身と、その他愉快な仲間たちとです!」

 と、胸を張って言った。おいおい、なんだよ、それ。

 百歩譲って自分自身はいいとしてもだ。愉快な仲間たちって――仲間と戦ってどうするんだよ! 

 はぁ、このままじゃ埒があかない。そう思った俺は、このやり取りを終わらせることにした。

「智香、もうこの話は終了にしよう。とりあえず上がらせてくれよ」

 俺がそう告げると、智香はまたにやけ始めて、

「早く私の家に上がりたいなんて、そんなに女の子に匂いに飢えていたのですか? ごめんなさい先輩、気が利かなくて。どうぞ上がって心行くまで堪能していってくださいな、デュフフ」

 いつも通りの変態発言をする智香。だが、このとき俺の中は智香の様子に何かが引っかかった。なんとなく、無理していつも通りの姿を演じているように見えたのだ。

「……なぁ、お前なんか隠してないか? だったらもう無理するな。最初に言っただろ? 俺に対して遠慮や気遣いなんていらないから」

 智香は俺のことを気遣ってはっきり言えないのではないかと俺は考えた。半分は直観や勘違いかもしれないと思っていたのだが、予想は当たっていたようで、智香の顔から笑みが消えていく。

「……分かりました。なら、言わせていただきます」

 智香の顔が今まで見たことがないくらいに歪んでいく。そして、次の瞬間、大声で泣きながら俺の胸を叩いてきた。

「じゅんせんばいのばがぁ! なんであんな無茶したんですか。一歩間違えたら大変なごどになっだがもじれないんでずよ! 私のぜいでじゅんせんばいが大怪我するなんて……危険なめにあうなんて……そんなの! ――そんなの……私は嫌でず」

 泣きながら何度も胸を叩いてくる智香の様子に、俺が今日どれだけこの子に心配をかけたのかを、これでもかというほどに知ることとなった。

 俺は堪らなくなって、智香を抱きしめそうになる。しかしなんとかその衝動をおさえて智香の頭を撫でるだけにとどめた。それだけでも良かったのだが、彼女の手が震えているのに気付き、空いている左手で彼女の手を握る。智香の手は俺より小さく、少し冷たかった。

 それからも、智香はしばらく泣き続けていたが、ずっと頭を撫でていたからか、それとも時間が経って落ち着いたからなのか、とにかく泣きやんで静かになると、俺の顔を見て微かに微笑んだ。

「純先輩の手……あったかいですね。安心……します。まるで……」

 智香は小さくそう呟くと、急に俺の体に倒れこんできた。俺が倒れないように踏ん張って支えると、智香はすごく安心した顔で気持ちよさそうに眠っていた。

「あんなことがあったもんな。ゆっくり眠れよ。お前が起きるまでそばにいてやるから」

 勝手に家に上がるのも気が引けたが、このまま玄関先にいても仕方ないと考え、智香の部屋に彼女を運ぶことにした。

 智香を、俗にいうお姫様抱っこをして運ぶ。

 部屋を間違えたらどうしようと、内心ドキドキしながら彼女の部屋を探してみると、それっぽい部屋を見つけたので開けてみた。そこはたくさんのフィギュアが置かれた部屋だった。どうやら一発で目的の部屋を見つけられたらしい。

 俺は安堵のため息をついてから、近くにあったキャラクター柄のシーツがかけてあるベッドに智香を横たわらせる。智香を運び終え、一息ついていると突然さっきまで忘れていたことを思い出した。……俺たち二人きりじゃないか。しかもここは智香の部屋だし。いや、だからといって何かするわけじゃないし、する気もないけどさ。俺にとって智香は大事な――。

「……なんなんだろな」

 前までは大切な後輩だと思っていた。なんだかんだ言いながら、俺は二次元研究会に入ってよかったと思っている。最初こそ違和感しか無かったあの場所だが、いまや俺にとってあそこで過ごす時間はかけがえのない大切なものになっている。そんなかけがえのない場所を俺にくれた智香に俺は――。

 考え事をしていると、疲労感がドッと押し寄せてくる。やばい。意識が……。俺はなんとか意識を保とうと抗ったが、戦いの疲労感は増すばかりで去る様子がない。

「あぁ……駄目だ」

 段々と気が遠くなっていく。それを認識した途端、俺の意識はどんどんと闇に落ちていった。

「純先輩。今日は本当にありがとうございました。また……助けてくれましたね」

 意識が途切れる寸前に、智香のそんなつぶやきを聞いた気がしたが、それを考える暇もなく俺の意識は暗い闇へと落ちていってしまった。

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