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第2話 怪人アンサー

怖くないです。

遅れてすみません。

誕生日だ。

某長期連載警察漫画の主人公ではないが、誕生日は嫌いだ。

何故なら誕生日=彼女イナイ歴を更新することになるからだ。

そんな哀愁?に浸っていると唐突にドアが叩かれた。

ノックではない。

空腹の熊が獲物に百烈拳を叩き込むようなそんな叩き方だ。

あわててドアを開けに玄関に走った。

ガコン!

何かが外れる音がした。遅かった。

音がしてから玄関に向かう数秒の間にドアのチェーンは破壊されていた。

「壊すこと無いだろ」

俺はそういって目の前の長身の人物を睨んだ。

「あ〜暑い」

会話にならない。

男は自慢の茶髪を掻き毟りながら部屋に上がってきた。

この無礼な奴は山峰太郎。ハンドルネームは『山峰Z』。

高校からの同級生だ。

自己中心的で一日の大半をパソコンの前で過ごすネット依存者だ。

だがただのネット依存者じゃない。

「ほらよっ!プレゼントだ」

山峰は手に持っていた箱を投げてよこした。

結構重い。

俺は中を見た。

中にはびっちりとステーキ用の生肉が詰まっていた。

この暑い中保冷もせずに運んできたらしく異臭を放っている。

茶髪の悪魔はニヤニヤしながら俺を見ている。

「何だよこれ」

「ハァッピィバースデー!」

聞いちゃいない。

こいつが居るとこれが日常だ。

天然で馬鹿なのか悪魔なのか分からない。

「おいおい食べないのか?」

多分こいつは悪魔だ。







1時間後。

箱いっぱいの肉塊を台所に放置したままいつものように雑談が始まった。

「俺って十年後どうなってると思う?」

山峰は視線を肉塊へ送った。

「あんなふうにはなりたくない」

「いや、多分アレだ」

「レクター博士かゴジラに会わない限りそれは無い」

「賭けてみるか?」

「どうやって」

山峰は微笑を浮かべた。

悪魔の笑みだ。

「『怪人アンサー』に聞く」

出た。

山峰は一日の大半をオカルトサイトで過ごすネット依存者だ。

こいつと話すと絶対にこういう話を避けて通れない。

「何だよそれ」

山峰が言うには何の変哲も無い都市伝説だ。

十人で輪になりお互いに隣の人に電話を掛ける。

すると誰にも繋がらないはずなのになぜか繋がる。

そしてその繋がった相手が『怪人アンサー』だそうだ。

アンサーはどんな質問でも答えてくれるが十人の内一人の体の一部分を持っていってしまう。

別にそこまでして俺の未来が肉塊かどうか知りたくない。

「分かった。分かった。俺は肉塊になるって事でいいよ」

「よくない!親友の生死の問題だぞ」

そう言うわりに顔がにやけている。

「でも俺八人も友達呼べないし」

「俺が呼んでやる」

だめだ。セカンドインパクトが起きても人を呼びそうな勢いだ。







更に一時間後。

一人目。ハンドルネーム(以下HN)アムロ。ロボット大好き。太っている。

二人目。HNもえやん。ハルヒ大好き。太い。

三人目。HNユーゾー。コスプレ大好き。脂肪が多い。

四人目。HN名無しさん。2チャンの住人。丸っこい。

五人目。HN竜也。同人誌の達人。体が重そう。

六人目。HNユミッチ。男。肉団子に似ている。

七人目。山峰Z2号。山峰の愛犬。でかくて毛むくじゃら。

八人目。麗子。警察漫画のヒロインの1分の1フィギュア。足が長くて金髪。

「暑苦しい」

俺の呟きも熱気にかき消された。

「さあ始めるぞ」

「待てよ。あれ人じゃないだろ」

「気にするな」

「あれ生きてないだろ」

「気にするな」

「何でデブばっか……」

「うるせぇ!」

山峰の逆切れによってアンサーの呼び出しは始まった。






30分後。

「どうする?」

輪になった暑苦しい6人と1匹と1つ。

そして輪の真ん中に居るシルクハットをかぶった黒尽くめの男。

「シツモンヲシロ」

さっきからずっとこればっかり言っている。

「おいユミッチ。お前から聞け」

「わたしぃ?」

「お前だよ。」

「でもぉ……」

なんかうざい。

「いいから早く俺に回せ」

山峰も苛立ってる。

「じゃあぁ……。私に素敵な王子様は来ますぅ?」

「ゲイジャダメダ。セイテンカンシロ」

「ひど〜い」

熱源が一人走り去って行った。

「次。」

「じゃあ俺が」

竜也が立ち上がった。

「最近スランプなんスけどどうやったら抜け出せまスかね」

「スランプモナニモソレガオマエノジツリョクダ」

「うお〜」

また一人走り去って行った。

床が抜けないか心配だ。

そうこうしている内にとうとう俺と山峰だけになった。(人は)

「じゃあ俺から行くからな」

「シツモンヲシロ」

「そこに居るしょぼくれた男に彼女は出来るか?」

何聞いてやがる。

「肉塊のこと聞けよ」

「うるさい!自分のことは自分でしろ!」

なんて奴だ。

「カノジョヲツクルノハムズカシイ。ダガ、フカノウデハナイ。カネヲヨウイスルトイイ。」

心が折れそうだ。

「ほら、早く聞け」

心の傷が塞がらないまま俺は切り出した。

「俺は将来肉……」

「オマエノカラダヲモラウ」

マジで?

本気らしい。無理も無い。

残っているのは人形と犬だ。

アンサーが俺をじっと見つめる。

山峰が電話をしている。助けか?

「仏壇ってどの位からありますか?」

あの野郎。

アンサーがこちらに近づいてくる。

もう手で触れられる距離だ。

生臭い息がかかる。

山峰が紙を見せている。

『棺桶はL?M?S?』

お前が死ね。

「イラネェ」

え?

アンサーは麗子を抱えて液晶の中に吸い込まれていった。

なんだったんだ。

ピロ〜ン。

俺の携帯にメールが届いた。

from:アンサー。

件名 無題。

恐る恐る本文を見ると上野クリニックの広告が貼ってあった。

「何のメールだ?」

俺は携帯を夜の闇に放り投げた。

どこかで誰かの笑い声が聞こえた。






































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