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冬休みの初日。今日は修と二人だけで公開されたばかりの映画を見に行く。なんとなくそんな実感はなかったけれど、これって、デートだよね。こういう、「普通のデート」は初めてかもしれない。待ち合わせの駅前のロータリーへ向かう、駅から延びる大通りは、街並みも歩く人たちもクリスマスで活気づいている。
今年も明日からジルエットの手伝いをする事になっている。もちろん、修も一緒に。思わずうきうきして、刺すように冷たい北風すら心地よく感じる。駅前の広場には、やはり待ち合わせをしているのだろう、一〇代から二〇代くらいの男女で混雑していた。時間には少し早いけれど、修の姿を探して俯きがちにケータイをいじっている人たちを見回すと、すぐにその姿をみつけることができた。深めにかぶった濃いグレーのニットのキャスケットからは、最近「寒いから」という理由で伸ばしている髪が、帽子で押さえられている分、実際よりも長く輪郭にかかっている。以前、顔を隠したくて使っていた大きめのメガネをかけ、裾の広がった、確か、えりかに見せられた雑誌で、Aラインと呼ばれていたデザインのグレーのコートを着て、真紅のマフラーをしている。体系を隠すはずの組み合わせなのに、修の細い顎とうなじを際立たせて、いつもより華奢に見える。どこか楽しそうに、クリスマスらしく飾られた駅ビルを見上げて立っている。
声を掛けようと近づいていくと、僕より数歩分早く、二十歳前後くらいの男が二人、修のそばに寄って何かを話しかけた。きょとんとしてその二人の顔を見比べる修に、斜め後ろ側から、ゆっくり様子を窺いながら近付く。
「ね、待ち合わせしているの? 高校生?」
「彼氏、来ないの? 俺たちと遊びに行こうよ」
「そそ、俺たちの専門学校で面白いイベントやっていてさ」
脱力。これってやっぱり、どうみてもナンパですよね。そういう体質ってあるんだろうか。修の周りには、どういうわけか、こんな面白エピソードがやたらと発生する。あの、と声を掛けると三人の視線が集まる。
「お待たせ?」
「ああ、伊月、おはよう」
舌打ちするように僕を見ていた二人は、修の声に驚いたように振り返る。野太いというわけではないけれど、声だけ聞けば、女の子に間違えられる事はないだろう。
「えっと、知り合い?」
「ううん、今、声を掛けられて。勧誘? セールス?」
そうか、勧誘か。修の脳内には、自分が女の子に間違えられてナンパされるというシュチュエーションはないんだろうな。でもまあ、誤解も解けたんだし、すぐに退散するだろう。
「あの、僕は大学進学を目標にしているので、
専門学校は考えていないんです」
「修、あの、いいから、ね?」
何を言い出すんだこの人は。慌てて言葉を遮ろうとすると、少し離れたところに立っていた二十代前半らしい女の子が、くすっと笑うのが聞こえた。
「どうしたの?」
「なんか、女の子と間違えて、男の子ナンパしちゃったみたい」
「うそ、ウケる」
聞こえていないと思っているのだろうか。僕たち男四人、正確には修以外の三人、気まずい空気に沈黙する。