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P20

「伊月君も何か言ってよ!」


えりかの矛先がこっちに来て、我に返る。言えって、何を? いいぞ、もっとやれ、じゃなくて、ええと。


「えりか、あの。パンツみえているよ」


僕の言葉に、これ以上ないっていうくらいの驚きの表情を浮かべて、ばっとスカートの裾を抑える。やば、そういう事を言うべきじゃなかったのか。でも、あんなに丸見えじゃ、やっぱり先に指摘した方が。いくら白だったからって、いや、色は関係ないか?


「おい、かんざきってのはお前か?」


人垣から男子生徒が一歩踏みだしてきた。制服を着崩して、茶色に脱色した髪を跳ねさせたりして無造作に伸ばしている。野性的というか、男性的なイケメンだけれど、ちゃんとしたお店のアルバイトは、見た目で断られるタイプ。ちょっと待て、状況に頭がついていかない。


「いや、あの、こうさきですけど」


「てめえ、なに人のオンナに手、出してんだよ」


はああ? 昔、遊んでいた女関連の何かなのか? 今忙しいんだよ、後にしてくれ。てか、あんた誰だよ。ピンバッチの色は緑、三年生だ。


「先輩!」


立ち上がってその三年生に駆け寄るえりかを振り返る。


「え、待って、ヒトの女って、えりかの事なの?」


「私は、誰のものでもない。

 でも、伊月君、ごめん。あなたも先輩も、同じくらい好きなの。

 どっちかなんて選べない!」


その瞬間、すごく呆気なく、すうっと何かが抜けていった。目が覚めるとか、憑き物が落ちるって、こういう事を言うんだろう。えりかに寄り添われて、イケメンヤンキー先輩が顎を上げて睨んでくる。


「お前な、顔が良くて頭もよくて、

 バイオリンとか上手くて金持ちで人気者だからって、

 いい気になってんじゃないのか?」


それだけ揃っていたら、多少いい気になったっていいだろ。だいたい、けなしたいのか褒めたいのかどっちだよ。好感持つぞ、このやろう。


「おい、かんざき、えりかをかけて俺と勝負しろ!」


「もうやめて、私のせいで争わないで」


「あの、どうぞ」


えりかと三年生が、ぽかんと僕を見る。


「僕は遠慮しますんで。先輩、どうぞ」


「え、いいの? じゃ、こっちがもらっちゃうっていう事で」


あはは、どうぞどうぞ。思わず乾いた笑いがでた。


「ちょっと待ってよ、私の事、好きだったんじゃないの?」


「うーん、そうだけど、でも、フタマタはないなあ」


「なに! えりか、お前、二股かけてたのか!」


なんだろう、眩暈がする。先輩はきっとすごくいい人なんだろうけれど、こんなのと僕が同等ってどうよ? ていうかさ、周りからは、僕も同類だと思われているんだろうな。今まで築き上げてきた何かが、音を立てて跡形もなく崩壊していく気分だ。

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