表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/39

P15

文化祭が終わって、四組内の元一組対二組の関係悪化は一応終息したらしい。といっても、完全に和解という意味ではない。文化祭の準備と言う、対立する材料がなくなったっていうだけ。共同作業をした事で、一部、和解が進んではいるらしかったけれど。数日後、早瀬と岡田さんから声が掛かって、また購買部裏の通路に僕と湊と、四人で集まった。


「何かあったのか?」


湊が心配そうに聞く。


「いや、心配してもらうような事じゃないんだ。

 件のあれ、何とかなりそうだよ」


何とか? 早瀬の言葉に、僕と湊の声が重なる。


「すごいの来ちゃったよ。いきなりチェックメイト。

 佐倉君、彼女ができたっぽい」


岡田さんの言葉に、早瀬も頷く。僕と湊は同じような表情を浮かべていたと思う。唖然。


「え、マジか? 誰?」


湊の言葉に、僕も身を乗り出す。


「一年の永島さん? 三年の小野さん?」


「どっちもハズレ。二の一の藤森さん」


うちのクラスの、藤森麻琴か。活発で清潔感のある元気系女子。見た目の可愛さも、二年の中でTOPクラス。何より、気取らない面倒見のいい性格で女子に人気が高い。同性に好かれる子は、当然のように男子からも好感度が高い。女を感じさせる、というより、付き合ったらきっと楽しいだろうなと思わせるタイプ。


「今までそれらしい動きはなかったみたいなんだけれど、

 最近、急にうちのクラスに来て佐倉君を呼び出すようになって」


「僕も一年二組で少しだけ話したことあるんだけれど、

 すごく感じのいい子だと思う。

 中学が祥沢二中で、修君と一緒なんだよね」


ふむ、と湊が顎に手を当てて考える仕草をし、ちらっと僕を見たのに気付いた。


「実は、んっと、神崎君にはちょっと辛い事言っちゃうけれど、

 佐倉君に彼女ができたら、対立に巻き込まれたりするんじゃないかって、

 心配だったの。

 でも、藤森さんだったら大丈夫。

 彼女自身、直接何かを言われても負けていないと思う。

 佐倉君が、藤森さんとうまくいっていて、

 もう北澤さんの事を変に意識していないって事になれば、

 付きまとっているとか嫌がらせされているとか、

 そういう話の信ぴょう性は崩せるし」


「確かに、えりかの事をそういう風に言われるのは、ちょっと辛いかな」


半笑いで言うと、だよね、ごめん、と肩をすくめる。


「修君に、最近藤森さんと仲良いねって話を振っても、

 前から仲良かったよ、とか、照れた風にあいまいな態度で。

 なんとなく、その話題には触れて欲しくなさそう、っていうか。

 現状であんまり突っ込まない方がよさそうだし、

 だからまだ、正式に付き合っているとかそういうのはわからない。

 けど、これで全部が沈静化してくれたら、いう事はないと思うんだ。

 ただ、なんとなく落ち着かない。もう一波乱ありそうでさ。

 もう少しの間、気を付けて動きを見守ってもらいたいんだ」


早瀬の言葉に、湊が、俺は何にもやる事ないなあ、と空を見る。


「そんな事ないよ。

 修君の話とか、聞いてあげてもらいたい。

 やっぱり、僕には言い辛い事もあるみたいだし」


「了解。何事もないのが一番だしな。いっちも、あんまり気、つめんなよ」


「うん」


少し前に覚悟を決めたばかりだったのに。いつか、そうなったらいい、修には僕の事を忘れて、幸せになって欲しいなんて、思っていたのに。修に、彼女が。修に、彼女が。その言葉だけが頭の中をぐるぐると駆け回っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ