第1話苦痛
痛い、痛い、痛い!!
針を全身の穴と言う穴に刺されているかのような激しくそして言葉では言い表せない痛みが全身を包み込む。
男は必死にもがく、水中で溺れて空気を吸おうとするかのように。だが激痛は収まらない。男の感覚からしてどれくらいの時間が過ぎただろう、『永遠』と言っても言い程の時間が過ぎる。男はもがく事を止め身体から力を抜き横たわる。その目には気力は無い、それどころか目には何の感情も宿っていない。
『精神崩壊』男の精神は苦痛によって木っ端微塵に欠片も無い。
《精神の崩壊を確認しました。これより精神の再生及び、能力の付加に取り掛かります》
そんな文章が男の頭の中に直接表示される。文章が表示される瞬間には痛みがあったが男からしては数分前の『地獄』よりはマシである。マシと言うより、ほぼ痛みを感じなくなり痛みがどれくらいか分からないのである。
《精神再生率86%能力付加率59%》
《精神再生率96%能力付加率86%》
男は頭の中に文章が表示されるが何の反応もしない。
《精神再生率100%
能力付加率100%
精神再生に成功しました。
能力喰魂
魂の支配者
能力付加に成功しました。
それでは第二の人生を存分に満喫してください。正義になるも悪になるも自由。それではごきげんよう》
頭の中で文章が表示され、そして閉じると男の身体が一度跳ねる、心臓マッサージをされたかのように。跳ねると次に男の身体が小刻みに震え出し白目を向く。そして口からは悲鳴にも叫び声にも似た何とも言えない声がスピーカーで大きくなった声のように鳴り響く。髪の毛を掻き毟る。
やがて絶叫は終わり男は気が付く。
「ここは…森か?」
男は立ち上がると周囲を見渡し現在自分が置かれている状況と今自分がいる位置の情報を必死で集めようとするが今いる場所は森としか分からず、そして自分の置かれている状況は全くと言ってもいい程に分からない。
「くそ!! ここはどこなんだ!! そして私は誰なんだ」
あまりにも状況が分からずついつい口から言葉が出る。顔には焦りの色が濃く出ている。
このまま私はここで野垂れ死ぬのか?
このまま私は自分の名前も分からず死ぬのか?
「ふざけるな~~!!」
近くの木を殴りつける。
「???」
男は何か木を殴った感触がおかしかったらしく殴った場所を見る。
「どうゆう事だ?」
男が殴った場所は異様なまでに凹んでいる。
「何故痛くない?」
そして何より痛みを感じない。物を触った時の感触や肌を風が撫でる感覚はちゃんとある、なのに痛覚だけ綺麗に抜け落ちている。
「どうゆう事だ? 何故痛みを感じない?」
木を殴った手をジッと見る、まるで見ていれば何か分かるかもしれないかのように。
キャアアアァアアアアァァアアア!!
森の西の方から悲鳴が聞こえる。
「悲鳴?……丁度良い。悲鳴があったとゆう事は何かしらのトラブルがある筈。ならば助けてこの世界の事を聞き出そう」
男は悲鳴の聞こえた方角に走る。だがその走りは風のように疾走である。