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ガントレットちゃんのわくわく説明/ぶぅき♡

なんだろうこの感覚。こうなんというかなんというか。

ネタ切れ(*´ω`*)飛ばし過ぎた

『では次に防具の説明に入らせていただきます。単語などの細かい説明は後ほどでよろしいでしょうか?』

「オッケー。システムの根幹をまず喋って。後は歩きながらなんとかするから」

『では防具の説明を。防具はそれぞれ頭身体脚の三つに装備ができます。腕に付けられる物は武器に大別しますのでご容赦を』

「……腕は全部武器?」

『はい、原則は。

 防具は大別して二つあります。

 一つは鎧、アーマーと呼ばれるものです。

 一つは服、クロスと呼ばれるものです。

 アーマーは防御力がとても高く、戦いに適した特殊能力を持った物も、この世界には多くあります、耐久度も高く、少しのことでは壊れません。

 反面重く、走るのが困難になるとすら思えるほどの重装備も存在します。

 またアーマーはあまり多くのMODを装備できません。大半のアーマーにはソケットがそれほど多くないからです。

 次に服。服は防御力が低く、付与されている特殊効果も本当に特殊なものばかり、また壊れやすく、扱いに困る面もあります。

 しかし服はとても軽いです。マスターが付けている〈コボルトの服〉は、マスターの奇抜すぎる動きを妨げる事が決してないでしょう』

「ねぇ。本気で外してほしいの?私頑張るよ、あなたぶち殺すために世界中走り回るわよ?」

『本気でやりそうだからご勘弁ください……。

 ―――また服はMODソケットが多くありまして、元々付与されている特殊効果の上に更に可変特殊効果を付与することができる服が多くあります。

 マスターの〈コボルトの服〉は火炎耐性30付与、及び火炎効果無効率30%の特殊効果が付与されています。

 MODソケットは三つ。更にマスターが持ってる〈コボルトのお守り〉は火炎耐性を25上げる効果があります』

「なるほど。伊達に戦闘説明で出したモブじゃないのね。DoTは序盤じゃきついし」

『ご理解ただけて何よりです。

 主にアーマーは先陣を切って戦う戦士や騎士ジャンルにとても好まれますし、特殊な服はそれに応じたクラスに好まれます。

 では、次にクラスの説明と、選択を行っていただきます』

「ふぅ……疲れた」

 そう言いつつ、私は脚を止めず、深い森の奥を歩いていく。

 そろそろ説明も終盤だろう。

 森を出て、物語を進めるために、私はこの一歩を強く踏みしめ、ラスボスまで全てなぎ倒していかないといけない。

 ――できるだろうか。

 ふと不安が胸をよぎる。

 ……らしくない。

 怖いのも、辛いのも全部慣れている。

 死んだら終わるだけ。

 ちっぽけな命よ。

 安いものよ―――私は、小さく息を吐き出し、ゴワゴワとした獣人服の胸元に強く手を当てた。

 ドクンドクンと心音が聞こえる。

 これがゲームのサウンドだとしても、私はこれを現実だと思う。

 私は、ここで生きている。

 木漏れ日を見上げ、目を細め、小さく息を吸い込み、私は止めていた脚を進めまた一歩を踏み出す。

「……よしっ」

『情緒不安定ですね……』

「これでも花の中学生だからっ」

『え?』

「いや中学生―――」

『―――マスター。嘘をつくなんて親御さんが泣いていますよ』

「なんで信じないのよぉおお!」

『だって貴方どう見てもゴリラかアマゾンの原住民―――』

「……説明進めて。私は森出る準備するから」

『あ、自覚はあったんですね』

「ぶち壊すわよ……」

 ――泣きそう。

 不幸だわぁ。

『では、無職のあなたに職を探す機会を与えます』

「だから無職はやめて。もう私、なんか死んだ親に顔向けできないじゃない……」

『ハロワに通われては?』

「だから私中学生よぉおおおおおおおお!」

『あははっ、この嘘つきさんっ』

「何、可愛く言ってんのぉおおおお!?怒るわよぉおおお!」

『では次にクラスの説明を受けていただきます。

 この世界のPCには全てクラスが設定されており、それに応じた武器が使用可能となっています』

「はぁ……そう」

『逆にいえば他の武器は使えない仕様になってるって言ってんのよ話し聞けやクソ無職』

「もう先にクラス選ばせてぇええええええ!」

『はい、ではまず選べるクラスを紹介いたしますね。私B.A.S.Eガントレットちゃんを見てくださいねっ』

「妙にぶりっこなその設定、そろそろやめない……?」

『いやでございますお客様^^』

 私は言われるままに、自分の右腕についている忌々しいまで真っ黒で紅いラインの入ったガントレットを見下ろした。

 ――フワリと浮かぶ七つの言葉。

 手の甲の紋章から、小さな文字がまるで紙吹雪のように舞い上がり、七つの言葉を空中に形成した。

 そして私の目の前に漂う言葉の螺旋。

 文字の羅列はどれも見たことの無い不思議な言葉だけど、その内容は自然と頭の中に流れ込んできた。

 私は虚空に漂う光る文字列を一つずつ目で追って頭の中で読む。

『ファントムキラー』

『ミスティックダイバー』

『ブレイドダンサー』

『白き大樹の巡礼者』

『パワーグラップラー』

『天輪魔術学院初等部』

『ていうかお前おっぱいなさすぎるんだが』

「殺すぞぉおおおおおおおおおおおおおおお!」

 地面に大型クレーターができるくらい、私は力一杯ガントレットごと足元を拳で殴りつけた。

 ドゴォと地面に激震が走り、大地を走る大きなひび割れ。

 それこそ、世界が壊れんばかりに地面を殴りつけてもガントレットは傷一つ付かず私の手に収まっている。

 すごい硬さ。

『満足しました?』

 ――むかつく。

 むかつくけど……これかなり使えるわ。

 苛立ちに大きく息を吐き出すと、クシャリと髪を掻き上げるままに、手元のガントレットを睨みつけた。

「一つ一つ……何装備できるの?」

『一つ。一つのクラスには二つの得意武器があります。得意武器を使って倒す事で武器の熟練度が上がりますし、武器の中には特殊なアビリティが設定されており、得意武器ではそれらのアビリティを引きだす事が出来ます』

「つまり、それ以外の武器はできない―――ファントムキラーは?」

『ファントムキラーは杖と魔術本です』

「ミスティックダイバーは?」

『小剣と素手になります』

「……素手?」

『素手には既に二つのウェポンアビリティが設定されています。それはグラップリングとスローイングです』

「あれ今のギャグ?ギャグのつもり?ねぇねぇねぇねぇ」

『うるさい無職がおるわ』

「――――生きててごめんちゃい」

『では続きを。

 グラップリングは言葉通り掴む力。戦闘では物を拾ったり、拾ったもので攻撃することはできません。

 例えば、戦闘中偶々武器を拾い上げたとしても、攻撃力は0ですし、ウェポンアビリティも引き出せません。

 しかし、素手は違います。

 戦闘中、あらゆる武器を広い、あらゆる道具を拾い、或いは奪う事が出来ます。或いは戦闘中砂を拾い敵に投げつけ目くらましを行う事が出来ます。或いは偶々見つけた道端の薬草で回復を行う事も出来る』

「……戦闘は、あらかじめ用意した武器で戦え、と?」

『はい。あらかじめ我々B.A.S.Eに武器、防具、回復システム等などを設定頂く事でその武器全てをアクティベイトにします。もちろん素手も、『素手』と武器欄に設定してください。

 我々はある意味、システムの監視役を担っています。その辺りどうかご了承を』

「わかったわ」

「素手のの攻撃力は、PCの筋力に直結します。マスターは筋力がありますし、小剣でスタミナを保ちつつ連続できるスタイルはとても素早い動きのマスターには似合うものかと思われます。

 私個人の物言いとするのなら、とてもお勧めのクラスであります』

「へぇ……」

『もうひとつ、クラスにはそれぞれ一つ、固有のアビリティ『ドライブ・アビリティ』が設定されています。

 今しがたお勧めしましたミスティックダイバーでしたら『ミスティックドライブ』を使用できます。効果はご自身でお確かめいただけると』

「焦らすわね、嫌いじゃないわよ……」

『今からしてもいいですよ』

「却下。じゃあ、クラスはミスティックダイバーに決めるわ」

『お早い決断ですね』

「あんたがソレ言うんだ……」

『じゃあ、初期装備として、素手とショートソードⅠを転送しますので、手を掲げてくださいね』

 足を止め、私はガントレットに言われるままに掌を森の薄暗い闇にソッとかざして指を開いた。

 ――ガントレットから零れる光る粒子。

 小さな白い光は私の身体を舐めまわす様に、周囲を漂い、そして私の手の平へと集まっていく。

『―――うわっ、犬の濡れた様な匂いがする』

「やかましいわぁあ!さっさと出さんかい!」

『はいこれ私の剣です。お小遣いで買ったんでちゃんと使ってくださいね』

「お小遣い制だったの……?」

 光が手の平に集まり、光の膜から出てきたのは、刃の長さが50cm程の長い両刃剣だった。

 装飾は一切なく、ただ木の柄と鞘だけの簡素な剣。

 鍔は少し曲がり、相手から身を守るよりかは、武器を絡め落とす様にも見えた。

「……軽い」

 持てば、弾いて飛ばせる羽の如き軽さ。

 クルクルと手でプロペラのように虚空に剣身を回しながら、ヒュォオオオッと風をうねらせる音が静かに森に響く。

 静かなさえずりが、これが質量を持っている事を教えてくれる。

 それは同時に、人を斬る感触――

「……」

 振り回していた手を止め、グッと両手に握りしめる鞘。

 振り抜くままに、地面を抉り刃を抜けば、土と雑草を巻き込んだ衝撃波が抉れた斬痕から波飛沫の如く舞い上がる。

 土は私の頬を掠め、足元に落とした視線の先にあるのは、白い刃。

 少し厚みはないものの、それでも人を切るには十分な切れ味を両の刃に覗かせ、木漏れ日を照り返す。

 そしてそこには私の顔が映る。

 剣を持ち、子供のように僅かに愉悦に歪んだ私の顔―――

「……はぁ」

 ――醜い。

 私は革のベルトに鞘を捩じり刃を収めると、次に両手をそっと虚空に差し出した。

『では次に素手武器をインストールします』

「お願い……」

『―――何かありました?』

「考え事……」

『魚より小さな脳味噌してるのによく考えるなんて事できますね』

「頭の中に立派に詰まってますぅうううう!」

『じゃあインストール終わりました』

「はい……」

 そこには指先にびっしりと描かれた黒い模様。

 手の平には円形の魔法陣みたいな模様が描かれていて、その模様がガントレットの裏側から肩まで続いている。

 袖で隠しても、見えてしまいそうなくらい、立派なタトゥーだ。

(――こりゃ、暗器には使えないかな)

 そう考えながら、私は両腕を下ろし、また森の奥へとある手行こうと思い、地面を足でける。

『最後にクラスを設定します。

 ミスティックダイバーは黒き大狼神ゼノアトラの加護を受けたクラスです。各地に点在する黒狼神の石碑を巡ることで、クラスの能力が解放、ドライブアビリティ能力が向上していきます。

 是非とも巡っていきましょうね』

「ふぅん……戦闘中武器は何個設定できるの?」

『持てるだけ―――と普段は説明しますが、素手武器を選択した方には一応15種類を選択いただけます』

「持てる数?」

『はい。それ以外の武器種を持つと、攻撃力が半減しますのでご注意を』

「―――了解」

『クラスの説明はもう少しありますが聞きますか?』

「森の出口はどこよ……」

『私の話が終わるまでっ』

「……聞くわよ」

『はいっ。

 マスターのクラスは現在一次クラスのミスティックダイバーとなっていますが、各地の石碑を巡り、或いはPCを倒す事で得られるポイントを充てんすることクラスをランクアップさせることができます』

 ――脚が止まる。

 ゾッと噴き上がる冷や汗。

 私は目を見開くままに、慌てて黒きガントレットを覗きこむと、可愛らしい顔を引きつらせた。

「……なんて言ったの?」

『はい?』

「なんて言ったのよ、ポンコツ。PCを倒せばポイントゲット……?」

『聞こえてるんじゃないですか……』

「……スポン地点はここよね」

『この森は常に場所を変え生き続ける彷徨いの森です。リスキルは早々ないかと』

「同レベル帯のPCを倒すのと、初心者探して狩るのとどっちが楽って話よバカ」

『断然後者ですねっ』

「……わかってくれて嬉しいわ」

 深くため息をつきながら、私は途方に暮れて森の枝肌から零れる光を見上げて芽を細める。

 こんな能天気な物言いはどこかで聞いたことがある。

 ――なるほど、あのおっぱいと同じ、か

 殺す気、か。

 どうしたものか。

 むざむざ外に出て嬲り殺されるのだろうか。

 それとも永遠にこの森に居続けて、外の世界に戻れなくなるのだろうか。

 私は―――――

(……パパ……ママ)

 ―――死にたくない。

 せっかくもらった命をここで散らす気なんて、さらさらない。

 だって、私の為に多くの人が死んだ。

 なら生きる義務が私にはある。

 この世界の空気を吸い、冷たい風を切り、地面を蹴って孤独な道を歩き続ける義務が私にはある。

 私は死ねない――

(……行こう)

 前に進むって決めた事を今更変える気なんてない。

 深呼吸して、深呼吸して―――深呼吸してからの……!

「ソニックブームッ」

『?そんな技ないですよ』

「アメリカ軍人ってみんなあんなのできるんだろうか」

『?』

「――森の出口はどっち?」

『行きますか?ここから先はモンスターもPCもいます。決してあなただけが有利な世界ではありません』

「不平等もあれば生きてる痛みも意味があるってものよ。

 努力なくして得られる痛みはない。

 強く生き、自らを誇ることを選べ―――二つ前のおじいちゃんはそう言ってテント張って死んだわッ」

『……』

「道を示しなさいッ、踏み砕いてやるわッ」

『……。では―――行きましょうマスター』

 ガントレットから光が漏れる。

 その光は掌をかざすままに、ラピュ●を示すが如く、木の間をすり抜け真っ直ぐに森の奥へと走っていく。

 そしてスゥと射線が細く小さくなっていく――

 ――ゴゴゴゴゴゴッ

 足元からつき上がる地響き。

 刹那目の前を重く塞いでいた森の薄暗い闇に、縦に真っ直ぐ白い線が走った。

 それは光。

 森の闇が左右に裂け、光零れる大きな城門の如く入り口が開いていき、光に長い影が私の足元から伸びる。

光の向こう、外の世界からの手招きが見える。

 嗤っている―――

「……むかつく」

『何がですか?』

「殺してやるわよ……異存ないわねッ」

『もちもち』

 ゴゴゴッ……

 足の裏からつき上がる地響きが止み、目の前の光が広がりきって、楕円形に目の前に聳え立つ。

 光の奔流が輪郭を作る、開いた森の大きな扉。

 くぐりぬけるには、十分な大きさ。

 私は強くショートソードの柄を握りしめる。

 グッと手の平に力を込め、地面を蹴り上げる――――

『あ、マスター。最後に一つだけ言いたい事が』

「何よ」

『―――頑張りましょうッ』

「……うんっ」

 光の中、私は僅かに微笑んで、森の扉を潜った。

 光の向こう、視界が広がっていく―――



これからは普通の路線で行くわぁ。誤字?知らんな

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