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獣の眼光:効果/行動値を二つ増やします

 

「いたっ……くそっ、血が出た」

 ぶつくさぶつくさそんな事言いながら、可哀想な私は森の中をトボトボと歩いている。

 歩けば棒にあたるとは言わんが、所々に木の枝が飛び出たりして、その度にふくらはぎや太ももや○○にあたったりするんだ。

 もう傷だらけ

 太ももや○○なんてもう十字傷がいくつも入って、これで私も死神から日村豚芯ね。

 声優も咳さんから真四さんに変わって私も一本満足(フゥフゥッ!)

 いやでもアレよね。

 咳さん声はどう考えても十四歳の設定じゃなくて教師向け――

「……教師、か」

 そう言えば、ここに入る以前も大概生傷の絶えない生き方してきたなぁ。

 まぁ教師なんて腐るほどなぎ倒してきたけど。

 ―――宿題を、忘れた、だと?

 ―――許しなさい。それで鼻の骨だけで済ましてあげる。

 ―――貴様ぁ……それが教頭に向かっての物言いと言うかぁ!

 ―――私の方がお前より偉い人間だって言ってるのよ、このバーコード。

 ―――許さん!やれ国語の花村先生!

 ―――笑止!うぬに浴びせる拳は持たぬわ、貴様など……!

 ―――ぐぁああああああ!

 ―――脚の一本で、十分だ。

 うーん、この教師陣。

 正直うちの中学校は、周りの教師よりも生徒の方が強い、というより化け物が多かったわよねぇ。

 というか、中学生かどうかも怪しい人達が多かったけど。

 ―――ほぉ、学校一強い俺と……戦うと?

 ―――御託は要らん、さっさと掛かって来んか。それとも腰が引けたか?

 ―――後悔するぞ?

 ―――させてやるって言ってんだよ間抜け、負けたらその●ン●切り落として部屋に飾ってやるよ。

 ―――ぬかしおる……行くぞぉおおおおお!

 ―――はぁあああああああああああ!

 強かったなぁ、あのゴリラ。

 あれ絶対中学生じゃなくて、どっかの高校生よね。

 まぁ宣言通りに女の子になったわけだけど。

 まぁそんな事を考えても仕方ない。 

 だってここは学校じゃないもの。どんなルールが適用され、どんな事態が起きるか正直予想ができないわ。

 何が出てくるのやら―――

「……あ、そう言いえば」

 あの偽物おっぱいがくれたガントレット。まだいじってなかったわ。

 っていうかあのおっぱい絶対偽物よね。

 それもシリコンとか、そんなレベルじゃなくてもはや水よ水。水風船を詰め込んでおっぱいもまれた時に「おっぱいビームッ!」「ぎゃああああ!母乳が口にぃいいい!」「母乳プレイなんて変態プレイを求めるからよバカが、それは母乳ではなくて特殊溶液、これを飲んだ相手の精子を牛乳に変えて、●ン●の長さを五センチ縮める。これでお前はおしまいよ!」「く、クソぉおお!覚えてろよ偽物おっぱいがぁああああ!」「悪は滅びた」(完)

 ……………。

 なんだっけ。

 そうそう、なんとかシステムって言ってたわね。

 PDAみたいなものかしらね。

 私はそんな事を考えながら、適当なところで脚を止めて紅く線の入った黒いガントレットを覗きこんだ。

「あれ……?」

 紅い線が少しだけ縮んでる。

 ――これは『命』、あの偽物おっぱいはそう言ってた。

 てことは、私の生命力が減ってる?

 ……木の幹の根元に腰掛けながら、足元を見下ろせば、柔肌に浮かぶ小さな切り傷がいくつもあった。

 でも痛みはそれほどないし、多分それは大したことじゃ――

(……。そっか、その為のHP制なのね)

 痛みは与えず、感じさせず、その代わり自身の生命力を『ゲージ』として振り替えておく。

 おかげでプレイヤーは死ぬまで死をあまり感じることなく闘い続ける。

 バーサーカー。

 他者を顧みず、事故も顧みず、ただ闘い続ける人。

 前にゲーセンで死体蹴りを何度も受けてさすがに切れたんだけど、そのプレイヤーが言った事を思い出す。

(いいじゃん、あんた蹴ってるわけじゃないし)

 ――そう言う事じゃない。

 他者を思わなければ、自分のことを顧みれるわけがない。

 逆もしかり。

 他者を顧みるのは、他者が痛むと知っているから。

 自分が痛みを覚えることを知っているから。

 おそらく、この世界のプレイヤーは、殆どの人がリアル感を追求しながら、相手を顧みない人達が多いかもしれない。

 おそらく、その先にあるのが――

(……PK……あり得るわね)

 実利を求めて、或いは快楽を求めてのどちらかは知らないけど、確実に人が敵になる可能性は孕んでいる。

 まずい。

 装備はおろか服すら持っていない状況で、PC相手に戦える自信は正直ない。

 さっきの怪力だって、本物かどうかも怪しい。

 使えるものは―――

「うーん……どうすれば?」

『マスター・レナ―――マスター・レナ』

「……喋るんだ」

 私小学生じゃないけど、なんだかおかし気分。

 とりあえず、ガントレットから聞こえてくる新しい友達の声に、私は耳を傾けつつ尋ねた。

「あなた、誰かしら?」

『はいマスター・レナ。私はB.A.S.Eシステムです』

「略称?」

『戦闘の補助、および、物体索敵、および代謝促進を主な目的としています。他に様々な機能があります。

 機能の詳細をお聞きになりますか?』

「はいを押します」

『サンキューレッナ』

「いきなり馴れ馴れしいわね……まぁいいけど」

『まずは戦闘の補助から説明させていただきます。この世界、アポクリファスの古戦場では貴方はまずクラスを選択いただけます。

 貴方の世界で言うなら、職業ですね。

 つまりあなたは今、無職です』

「え?」

『無職です』

「いや……二回も言わんでも」

『む・しょ・く!です』

「……生きててすんません」

『構いませんよ。この穀潰しをいやでも生かし続けるのが私のお仕事ですから』

「あのおっぱいといいなんなんこの待遇……?」

『現在あなたは無職です』

「もういいよ……心が砕けちゃう」

『その為この森、アトラの森からは出られません。森の外には魔物が設置されておりましてたいへん危険ですので。

 逆を言えばこの森にはモンスターはいません。プレイヤーもいません』

「つまり一人?」

『あなたのようなひきこもりにはお似合いですねっ』

「……外そ」

 そう言って私は黒光りするガントレットを外そうして。

 ――外れない。

『あの偽物おっぱいから説明を受けませんでした?これはあなたの『命』です』

「あ、あれやっぱ偽物なんだ……」

『そらそうよ―――というわけで、貴方の生命は既にこのガントレットが全て吸収してます。

 無理に外せば、あなたは死にます』

「それ呪いのガントレットやないですかぁああああああ!」

『やぁ、僕はマッシュ。僕と一緒に冒険をしよう』

「やかましいわ顎ォ!」

『このガントレットはクリアするまで外れません』

「逆に考えるの……逆にね」

『クリアしなけりゃいいじゃん』(いいじゃん)

「違いますぅううう!クリアすれば外れるからいいじゃんって考えるのぉおおおお!」

『はい、というわけで死ぬまで私と付き合っていただきます、マスター・レナ』

「死ぬこと前提で話さんといてぇ!」

 こ、こんなクソオペ子とクリアするまで共にしなきゃいけないの……?

 まじで?

 じ、人格矯正システムとかないの?

 ないのぉおおおお!?

『ほら泣いてないで。早く説明始めますよ?』

「うう……もうやだぁ……」

『早くしないとヤバいですよ』

「なんでよ……」

『いわゆるスクリプト沸きって言う奴です』

「はぁ……?」

『この戦闘説明を始めてから一定時間たつと』

 ――カサカサッ

『戦闘デモとして、この森に数体敵が湧きます』

「先に言えやごらぁああああああああああああ!」

 確かにヤバい。

 気配が近い。

 しかも近づいてきている。

 明らかに足音もこっちを向いているし、こっちに気づいている。

 こっちを見ている。

 私は慌てて口を塞ぐと、すぐさま立ちあがって地面を蹴り上げると出来る限り太い木を選んで、身を隠した。

 そして、木の幹の影から草むらの敵意の源を覗きこむ――

「ヒヒヒッ親ぶぅん、今見ましたぁ?」

「ああ。あそこの影だな」

「中々貧相な女でしたが、いやぁ若くてペロペロしがいのありそうな女でしたなぁ」

「お前、またペロペロすんの?あの後ギトギトになって触りづらいと言うか……」

「やかましい!女をペロペロせずしていつペロペロするんだよ!」

「……。いや普通に飴とか?」

「うーんこのメンバー最悪や」

 そこには全身が茶色い毛に包まれた、他のゲームじゃ獣人と呼ばれそうな人達が四人程いた。

 全員服を着ている。

 アレを奪えば―――ん?

 あの顔……。

 あの顔、もしかして……!

 ―――わ、わ………!

「ワンコぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ヒッ!?」

「ワンコぉおおおおおおおおおおお!」

 ドォオオンッ

(僭越ながら、ここから先は私が朗読させていただきます、よろしこ(*´ω`*))

「ワンコ、ワンコ!ワンコぉお!ホォオオオオオオオッ!アタタタタタタタタッ」

(そう言って女は、自分が身を隠していた木の幹を、拳一本、まるで流星が降るが如き回数と速さで打ち抜いた)

(ええっと、その力に耐えられる物は何もなく―――文字通り煙となって木屑が舞い、木の幹に大穴があいた。

(四人のコボルトは、その突然の獣の如き奇声と巨木に空いた大穴に目を剥いた)

(その大穴の向こうに、探していた――であろう裸の女が立っていた)

(否)

(両腕をだらしなく垂らし前かがみに立ちつくす、その紅い目をした人影は、『魔物』であった)

「ワンコぉ……ワンコぉおおおおおおおおおおお!」

(……怖すぎわろえない)

(えと……口から煙を吐き、四つん這いになり、女は巨木に空いた大穴を這い、巨木の前にやってくる。

 妙に早い足取りで、四人のコボルトの前へと歩み寄ろうとする)

(ニヤニヤと笑いながら近づくその目は、獣の目だった)

(四人のコボルトは確信する)

(―――殺される)

「に、逃げろ、できるだけ遠くへ!早く――――」

(そう言った親分格へと獣の長い両腕が伸びていき―――最初に掴まったのは彼であった)

「ぎゃああああああああああああああああ!」

「お、おやびぃいいいいいいん!」

「―――ふふっ……逃がさない……!」

(逃げていく三人のコボルト達)

(そう言って化け物は親分格のコボルトの首根っこをひっつかむと、あろうことかその親分を持ったまま走ったではないか)

 ドンドンドンドンドンドンッ

(一歩一歩に爆弾がさく裂したかのような足音を立て、女は三人のコボルトを追いかけ、近づいていく)

(ブンブンブンッと片腕を大きく振る音が、森の暗闇の中近づく)

(爆音の如き足音がどんどんと気をすり抜けながら近づいてくる)

(振り向いてはいけない)

(早く遠くへ逃げなければ、早く遠くへ―――)

「――――捕まえたァ……」

「ぎゃあああああああああああああ!」

(悲鳴が遠のいていく)

(一人が捕まった。残りは二人)

 ドンドンドンドンドンドンドンドンッ

(再び遠く、巨木連なる森の闇の深みから聞こえてくる激しい足音。ズルズルと何かを引きずりながら走ってくる)

(だがさすがに二人を捕まえたままなのか、速度は遅くなり足音は徐々に遠のく)

(撒いたか)

(やったか……)

「お、親分……子分1も……やられちまった」

「ていうか俺ら名前もないし……」

「モブですしおすし……」

(そう呟きながら、遠のく獣の気配に生き残った二人のコボルトは互いに互いを賛美しあった)

(そして、森の奥へと逃げか隠れようとする――)

「―――みぃつけたぁああああああ!」

(頭上を覆う、影)

「ひぃいいいいい!」

「ワンコぉおおおおおおおおおおおおお!」

(全裸の女が頭上の木の枝を伝い、両手を広げている)

(風を切り飛び降りてくる)

(その目は、暗闇の中にあって、真っ赤に輝いていた)

(まさに、獣であった)

「ワンコぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

『ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!』

(二つの悲鳴が折り重なって、森の闇に響いた)

(朗読終了。ご静聴、ありがとうございました)

(引き続き、ゴリラ女の暴走特急、お楽しみくださいね(*´ω`*))





予想外に早くうpできて僕満足(*´ω`*)でも誤字も多いし、なにより暴走してるから気をつけて読んでね。この小説は瘴気が充満していますから

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