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幕間:白き狼の鼓動/紅き瞳の王

オナニーしょーはっじまっるよー!

 





「すごいね……」

 更地になった街の中、少年はコートを海風に靡かせ、立ちつくしていた。

 ザクリ……

 肩に担いでいた鎌を下ろしては刃が地面に突き刺さり、影が静かに仰向けに眠る少女を覆う。

 安堵に零れる笑み。

 海風に揺れる金色の髪。

 空いっぱいに広がる水晶樹の枝葉の下、眠る少女を見下ろし金髪の少女を、少年は満足げに見つめていた。

「闇に輝く光―――例えどれだけ絶望しようと、夜明けに手を伸ばす力。希望を胸に明日を夢見る力。

 レーヴァティン……アナトリウスの兵器の一つ。『王』が抱いた神器が一つ」

「……おばあちゃん……おじいちゃん」

「君は人間だよ……アナトリウスが、君を認めた、君は人間だ……」

 フワリ……

 揺れる水晶葉が舞い落ちて、立ちつくす少年の背中を撫でる。

 その舞い散る眩さに、少年は紅く滲む瞳を細めつつ、空を見上げて舞い散る水晶葉に手を伸ばした。

 ソッと手の中に吸い込まれる小さな葉。

 その葉の熱は、まるで赤子の肌の熱の様で、少年は暖かさに優しく紅い瞳を細めた。

 そしてギュッとその白き葉を握りしめる――――

「ありがとう、白き大樹、我が父の従者よ……」

 ――――王よ……。

 ザァアアアア……

 遠く、頭上で広がる水晶の枝葉が風に揺れて、ささめき声が流れる雲の向こう、空いっぱいに広がる。

 その声は優しく、少年は自らの影を見下ろし僅かに首を振った。

「僕も、ただの人間だよ……『王』様じゃない。やりたきゃミサかミナがやればいいさ」

 ――――貴方は、紅き瞳の王……薄明の血を引く者。

「違うよ……僕は人間さ」

 ――――王よ……。

「……。アナトリウス、小言は後で聞くよ」

 そう言って、少年は土を枕に眠る少女へと歩み寄ると、コートを風に靡かせつつ、片膝を折った。

 そして仰向けの少女の背中に手を入れ、両腕に抱え上げると踵を返す。

 そして、紅き瞳を鋭く細める――――

「驚いたな……」

 ――――影があった。

 人影が一つ。

 灰の大地と蒼の空を真一文字に分ける地平線を背に、男が一人、少年の前に立ちつくしていた。

 身体を覆うのは灰色に汚れたボロボロのローブ。

 ドロリ……

 のっぺりとした紅い影が厚手の布で覆われた裸足の先から流れて、灰の大地が僅かに赤黒く汚れていく。

 顔は布で覆い目元は蒼く光って、立ちつくすコート姿の少年を捉える。

 そして風にローブを靡かせ、男が一人、立ちつくす―――

「澱しアテルの巡礼者。よくも僕の前に姿を現せた……」

「――――紅キ瞳ノ狼……」

「終末の地はみつけられたかな? 永遠に見つけ得ぬものを探す異界の旅人よ」

「苦シムコトナク……得ラレルモノナドナク……全テハ古キ地ヘト赴クタメニ……」

「その為に、父を追いかけに来たのかな?」

 ニッコリと微笑む紅き瞳の少年に、男は潮騒を背に僅かに首を振り俯きがちに視線を伏せた。

 ザッ……

 すり足の一歩に、舞い上がる砂埃。

 そして歩き始める灰のローブの男の前に少年は、鋭く目を細めてゆっくりと後ずさる。

 そして息を吸い込む――――

「――――王ノ血ハ原初ナル力……神ヲ超エ、世界スラ超エ、異界ノ先スラ貫ク、天地ヲ貫ク光ノ柱。

 即チ、王ハ『火』……

 オ前ノ血ガ欲シイ……」

「くれてやるものはない……オルカはどこだ」

「――――オ前ヲ見テイル……」

「なら引きずり出してやる……アトラシア……!」

 ―――はい……。

 虚空に広がる光の燐粉。

 潮風に揺れる純白の体毛。

 刹那、顔は険しく囁く少年の背後から大きな影が一つ、広がる地平線をかいくぐり飛び出してきた。

 スッと地面に吸いつく長い爪。

 四肢はすらりと長く、胴を覆う体毛はまるで雪のように白く光に輝く。

 フワリ……

 靡く長い尻尾。

 潮風に靡く長い体毛はまるで髪の長い少女のよう。

 突き出た口腔に艶やか牙を覗かせ、紅い瞳を日差しに輝かせ、そこには少年と同じ背丈の白き狼が立っていた。

 ヒクヒクと痙攣する長く尖った耳。

 ペロリと耳を舐める長い舌。

 歩み寄るままに突き出た鼻先を少年の顔を擦りつけるままに、白き大狼は耳元で静かに囁いた。

「今参りました……コウイチ様……」

「お師匠は?」

「あのクソバカは今はお留守番です……なんなりと」

「彼女を護って。異界の来訪者は僕が倒す」

「意のままに……貴方の為に」

「―――少し近い……」

「いい匂いなんですもの……遠くても、いつでも私は貴方の傍に……」

 優しく囁いて耳を軽く噛むと、白き狼はソッと眠る少女を差し出す少年の頬に鼻先を擦りつけた。

 そして大きな口腔を開き、首根っこを咥えこんではくの字の垂れる少女。

 ヒュンッ

 風を斬り裂く鋭い刃の音色。

 そのまま後ずさる白き大狼を背に、少年は地面に突き刺した巨大な鎌を振り薙ぎ肩に担いだ。

 そしてコートを潮風に靡かせ少年は、灰のローブの男と向き合う。

 にやりと笑う――――

「さぁ、やろうか。アテルの巡礼者よ。アテル本体がやってくる前に相手をしないとね」

「――――我ラニハ勝テヌ……我ラ、コノ世界ノ外ノ理タルモノナリ」

「グレイプニールは全てを縛る。……システム外の存在は全てのシステムをこちら側に引きこみ、そして縫いつける。

 まだわからないの? アポクリファスは君たちをここから出さない気だよ」

「――――何……?」

「グレイプニールはあらゆるシステム外の存在をシステムの内側に無理やり組み込むツール。

 わかるかい? 君の存在には、今HPとMPが設定されているんだよ?」

 ニヤリとほくそ笑む口元に牙が伸びる。

「三カ月、彼女の魂を覚醒させるのに時間が掛かった。更にグレイプニールを作成するのに時間が掛かった」

「――――貴様……我々ガ来ルコトヲ望ンデイタ……?」

「ミサ姉ちゃん程僕は頭がおかしい人間じゃない。だけど厄の芽は摘む、いずれ人が人らしく生きるために」

 フワリ……

 コートの裾から伸びる長い尻尾。

 白い体毛に覆われて、その右腕は風に体毛を靡かせながら、強く巨大な鎌の柄を握りしめる。

 そして、長い爪が力強く地面に食い込み、紅い瞳が日差しの下にぎらつく。

 そして突き出た口腔が開いて、僅かにニヤリと裂けた口元に笑みを浮かべ、牙がぎらつく。

 ヒクリと突き出た耳は長く、潮風に揺れる―――

「……普通に生きていくのに、世界に君達は不要なんだ。事あるごとに色んな世界を破滅させて、そろそろ消えてもらうよ」

「――――システムニ取リ込モウト……我ラハ倒セヌ」

「倒せるさ。HPを削り飛ばせば、僕の、アポクリファスの勝ちだ」

「同ジク……貴様ニモ言エル事」

「故に争いが生まれる。同じ土俵に立つがゆえに人は人と戦いあわねば生きていけない生き物さ。

 そして誰かが上に立たねばならない、『王』と呼ばれるものがソレを為す」

 ――――風を斬る鋭き銀の大鎌。

 ニヤリと牙を覗かせ微笑む口元。

 突き出した刃は正確にローブ姿の男を捉え、そこにはコートを潮風に靡かせ白き狼男が立っていた。

 全身を覆う純白の体毛。

 首から上は、真っ白な毛皮で包まれ、顔は狼のように口腔が突き出て耳が天を指してい尖っていた。

 ぎらつく紅い瞳はスゥと細まり、白き狼男はローブ姿の男を捉える。

 ニンマリと笑う『黒きアテルの巡礼者』を睨みつける――――

「―――王ノ力……紅キ瞳ノ狼……!」

「欲しかったんだろう? 取りに来いよ、少しだけ相手をしてやるポンコツが」

「殺ス……コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!ヒハハハハハハハッハハハッハハハ!」

「さぁ、やろうか。友達が用意してくれた舞台だ。血が花を咲かせるまで刃で空を斬り払おう。

 行こうかバァル……行こう、アポクリファス!」

 ――――グォオオオオオオオッ!

 空に猛々しく走る咆哮。

 その音色に背中を押され、巨大な鎌を振るい、コートを潮風に靡かせ白き狼男は地面を蹴って飛び出した。

 紅く尾を引く瞳の残光。

 ニィと歪む口元。

 その長い尻尾は風に揺れて、狼の背中を追いかける。

 そしてその白き背中はまるで疾風の如く、地平線を走り、僅かに飛び上がって刃を振り上げる。

 振り上げた刃の先に、少年はローブ姿の男を捉える。

 虚空を斬り裂き、力強く振り下ろす――――

「息絶えよ……!」

「ヒハハハハハハハッ―――――ー」

 笑い声すら切り裂き、虚空に一文字、刃の閃きが斬痕となって、うっすらと浮かび上がった。

 そして後を追いかけ、金切り音が空全体に響く。

 フワリと長い尻尾が風に揺れる――――


考えなしに書いてるのでかなりぐだぐだ。でもようやくワンコ出せたので個人的にはかなり満足(*´ω`*)

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