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幕間:暗闇より這い出す憎悪

ネーミングセンスのなさに驚き(*´ω`*)もっとこうハッキリとぱくりましたセンセンシャルとかいえばいいんだけど。恥ずかしいから言えない///ゴメンチ( ・`ω・´)



「はぁ……はぁ」

 正直に言うと、かなりきついのが現状。

 紅い雨は未だに続いて、止む様子はなく、私の身体に降り注ぐたび、服が重たく滴り身体を縛る。

 更に紅い水たまりがそこらじゅうに出来て足音が激しく直ぐに見つかる。

 アルテスの街が入り組んだ古い街だとしても、場所はすぐにわかる。

 しかも向こうは、結構前から戦っている人間らしく、場数はかなりこなしていて動きは直ぐにわかってしまう。

 ていうか、三カ月もブランクを作ったのはどうしようもなく、彼なんですけど。

「せやろか?」

「出てくんなし……!」

 水を跳ねる二つの足音。

 黒い雲の下紅い雨降りしきる赤黒い街を走りながら、私は幸一と並走しつつ街を駆けていた。

 目の前にはやはり敵意は見えず、だけど紅い雨のカーテンは変わらず視界を塞ぐ。

 鬱陶しい―――

「ねぇ幸一ッ」

「いや」

「まだなんも言ってないでしょうが……!」

 ―――ヒュンッ

 耳元を掠める風の音色。

 パシャッと跳ねる紅い水しぶき。

 息を止めて後ずされば、私がいた場所には鋭い紅い水晶のような透明や槍が地面に突き刺さっていた。

 紅い氷が私を捉えている。

 すごい力。

 おそらく、この街にいる限りは、どこにいようと確実に狙い撃たれるだろう。

「くぅ……」

 そう呟く暇もおしく、立て続けに黒い雲の下から降り注ぐ氷の剣から、私は身をよじった。

 だが身体を縛るのは水属性の特殊効果、スローストリーム。

 避ける動作すら緩慢になり、私は息をするのも辛く、重しを脚で引きずりながら石畳を蹴る。

 その足跡を氷の刃が追いかけ、私は横目にチラリと景色を覗き込む。

 そこには平然と走る少年の姿があり、苦笑いが自然と零れる。

「ホント……あんたは人が必死な時にへらへらしてぇ……!」

「そうでもないさ。どうするの?」

「あいつのクラスって何?」

「ガントレットに精査してもらわないの?」

「壊れかけて使えない……!」

「―――シュトゥルフの呼び水と呼ばれるクラスだね。異界神の庇護のないクラスでね、文字通り水属性攻撃を得意とするよ。

 使用武器は魔法、そして杖だね。……他はいい?」

「……魔法も武器なんだ」

「庇護のないクラスはいわゆる他の十クラスに分けられた人間を狩ることでクラスポイントを貰うんだ。

 ドライブアビリティはアシッド・ブラッド・レイン。

 水属性の攻撃で、蓄積ダメージはなし。その代わり特殊効果の発動率は100%で効果持続時間は1時間だよ。

 効果範囲は、言うまでもないね。効果時間は5分で切れてリキャストは3時間」

「……酸血雨……か」

 程なく空から降り注いでいた氷の槍は止まり、私は雨宿りの為に建物の中に身をひそめつつ呟いた。

 濡れた服の裾を絞りつつ、零れるため息。

 腰に濡れたワイシャツを括りつけ、下着だけになった私を見上げ、幸一は表情は変わらず頷いた。

「うん、可愛いね」

「……褒めてる?」

「気持ち悪い?」

「どうだろう……それよりもっと適切なアドバイスが欲しいな」

「雨をよければいいじゃん」

 肌を伝う紅い滴を拭いつつ、私は苦い表情を浮かべては、顔を引きつらせつつトレンチコートの少年へと振り返った。

 そこにはスッと右手をこちらにつきだす笑顔があった。

 掌には、ズラリと青い光を放つ石ころ―――MODがいくつもあって、私はため息を零した。

「これの効果は……?」

「一つはドライブアップ―――ドライブアビリティの効果時間、効果を全体的に10%向上させるよ。

 残りは全部スピードアップ+++だよ。中々レアだからね」

「……走れと?」

「うん」

「つけていいの?」

「戦闘システム管制のジャッジマンたるガントレットに聞いてみれば?」

「……ガントレットちゃん?」

 そう呟けど、ザザッと雑音を響かせるだけで声は聞こえてこなくて、私は濡れた髪を払いつつ首を振った。

 少年は満足げに頷いて、濡れたガントレットを摩った。

「じゃあ―――グレイプニールを起動してみて」

「グレイプニール……?」

 そう呟いた瞬間、蒼く光を放つ機械装甲。

 刹那、ガントレットの形が僅かに変化して、より尖ったスタイルに変化したのを見て、私はため息を漏らした。

「……何これ?」

「僕がつくった最高の戦闘補助プログラム。人格を旧戦闘補助プログラムへと移植しているよ。

 ガントレットちゃん?」

『……はいっ』

 紅く、そして蒼く表面に走り始めるライン。

 回復を始めるシールドゲージとすり減った体力ゲージが見えて、私はホッと肩を落としつつガントレットちゃんに話しかけた。

「大丈夫?」

『はい……えと、細々とした仕様が変わっているんですけど』

「何が変わっているの?」

『わかりません……』

「何それ?」

『えと……パスコード所有者、水木幸一さんということで、所々のブロックにロックが掛かっているんです。

 今は……魔法が武器として使用可能になっています……』

「……なによこれ」

「という事で魔法を使って倒せばいいよ」

 そう言いつつ、私に蒼い宝石をいくつも渡していて、私はげんなりとした気持ちを奮わせつつ、胸に宝石を押し込んだ。

 スゥと吸い込まれていく蒼い宝石。

 ソレと共に、身体が軽くなったような感じがして、私は深い吐息と共にガントレット―――グレイプニールを見下ろした。

「どう?」

『ま、待ってください、グレイプニールシステムにまだ慣れてなくてぇ……』

「なんか大変ね……」

『だったら一気に装着しないでくださいッ―――スピードアップ+++が四つにドライブアップが一つですね。処理完了しました。

 後一つだけスロットが開いていますが、どうします?』

「私の愛でも詰め込んでいて」

『糞尿より劣るものを詰め込むと私の頭がパンクしちゃいます』

「なにそれ!?」

『でも幸一様……よろしんですか?』

 幸一は微笑みは絶やさず満足げに頷いて、腰にコートの裏をまさぐりつつ呟いた。

「うん。本当は使わせる気もなかったんだけどね、システムブレイクは僕もアンフェアだと思うし。

 なにより、君が嫌がると思ってね」

「……早く帰らせる気はないの?」

「君の口からソレを聞けるのならいつでも」

「―――むかつく物言い……」

 ま、私もここまでやってるからには後に引く気もさらさらないわけで、複雑な笑みを滲ませた。

「まぁ……オルカがシュトゥルフと巡礼者アテルを呼びこんだのは正直驚いたよ。アポクリファスも来訪者の訪問は予定外じゃなかったのかな?

 近いうちにドグナ本体も現れるだろうし……こりゃ厳しいねぇ」

「来訪者?」

「異界からの来訪者―――――暗がりの獣、異界の神と相対する存在だよ。『炎』をもたない異端の存在だよ」

「……?」

「あはは、直ぐに会えるよ。この紅い雨が降っている内は、彼らはこの世界に固着できるんだからね」

 そう呟く声は軽くて、彼は建物の入り口から赤黒い雨のカーテンをじっと見つめていたのだった。

 私はというと、意味がわからず首をかしげつつ、紅い雨に濡れた服を絞る。

 その水が木の床を滴り、染みていく。

 どろりと紅い血溜まりが広がる――――

「――――」

 ―――殺意。

 背中を貫く、純粋なまでの敵意。

 ハッとなって振り返れば、何もなくて、そこには古びたアパートの1階の廊下がずっと奥まで伸びていた。

 奥の勝手口は閉じていて、何もない。

 壁は左右に広がり、何もない。

 何もない。

 あるのは『暗闇』だけ。

 窓は一つもなくて、出口もなくて、ただ底抜けの暗闇が一本の長い廊下に広がっているだけで。

 ただ、赤黒い光が勝手口から漏れ出していて―――

 ――――ギィ……

 木の擦れる音。

 勝手口が開く。

 扉の隙間から滴る外の雨の音が深く暗い廊下に響いて、外の赤黒い光と雨の匂いが漏れてくる。

 雨の……匂い。

 違う……。

 血の匂い――――ゆっくりと扉が開き切り、薄暗い街の路地裏が見える。

 それだけで、他には何もなくて――――

 ――――ヒタリ……

 聞こえるのは、濡れた足音。

 床にうっすらと足跡が見える。

 化け物だ……。

 それは15本の指と巨大なカエルのように広がった脚の裏が、床に映されていた。

 一回の足音で、それは八つ同時に浮かんだ。

 その八つの足跡は、ゆっくりとこちらへと地下づてくるのが見える。

 ヒタリ……ヒタリ……ヒタ、ヒタヒタヒタ……

 壁に無数の手形が浮かんで、濡れた足跡が、小刻みな足跡と共に長い廊下へと数珠つなぎに走ってくる。

 こっちに来る。

 何かが来る――――

「行くよ……!」

「何アレ!?」

「―――異界からの来訪者だよ。本来どの世界にも属せないはずの存在だよ」

 そう告げる彼と共に建物から飛び出せば、足音は重なってドンドンと路地を駆け、水たまりを跳ねる。

 そして紅い雨の下、見えない何かが近づいてくる―――

「早い……」

「シュトゥルフは遠い昔の【浸食】の際に生まれた化け物でね、時間の始まりと終わりを繋ぐ鎖の錆から産声を上げたんだ」

「何言ってるのよぉ!」

「時間を操り空間を捩じり、彼の者は常に神の死を望み続けるってこと」

「て、敵ってこと!?」

「さようで」

「なら―――」

 ―――気配が重なる。

 紅い雨の下、増えるいくつかの気配。

 踵を返す気概すら萎えさせる程の大量の気配に、私はゾクリと背筋を凍らせ地面を蹴った。

「……な、なんでよぉ」

「紅い雨は異界への門を開く―――彼を倒さないとね」

「でも、アシッド・ブラッドレインって効果は3分じゃ!」

「時計塔でも見れば?」

 そう言われて、走りながら赤黒い雨のカーテンの向こうを見つめ、私は顔を更に引きつらせた。

 ―――動いていなかった。

 ピクリともしない時計の針の様子に、走りながら涙が零れそう。

「……これも、ドライブアビリティの効果?」

「シュトゥルフに支配された世界は全て因果律の外に放り投げられる。明日という事実は永遠に存在しなくなり、過去が永遠に繰り返す世界となる。

 世界は圧縮されて消滅し、その世界の欠片を喰らい来訪者は次の世界へと赴く」

「つ、つまりどういうことだってばよ!?」

「現状、ゲーム自体がフリーズしている、あまり膨大なデータが【外】から流入しているからだ。

 故に彼のドライブアビリティは、後ろのお得意さんが死ぬか、彼が死ぬまで消えないし、彼らも消えない」

「……それって……こいつら!?」

「そう言う事、恐ろしいね。死に体の『神』を追いかけこんな所まで追いかけてくるんだから、奴らには頭が下がるよ。

 或いはオルカ……君はそこまでして……」

「よくわかんないけど走れってこと!?」

「ややこしいことになってきたね、本当なら君が目覚めるまでの3カ月でケリを付けたかったんだけどね」

「わかんないわよ、倒せばいいんでしょ!」

「その為にシステムを破った、行こう。システムを暴走させる彼を止めないと」

 ぎこちなく微笑むままに、少年は私を手招きして、赤黒く染まったアルテスの街の中を駆け抜ける。

 紅い雨は降り注ぎ、それでも身体は萎えることなく速度を上げて街を駆ける。

 急ごう。

 後ろに化け物は明らかに危険で、出口は敵を殺す事でしか解決しない。

 やらないと―――

「はぁ……はぁ……くそぉ!」

「シュトゥルフ、アテル、ドボロフ……デイズ―――大婆様はこの事、ご存じだったんだろうか……お師匠……」

「何の話よぉ!?」

「……。なんでもないっ」

 向かうは、街の中心の大広間。

 敵の気配、雨の気配もそこに集まっている。

 いかないと――――



でもま、この子が倒れるまでしばらくこの路線で。いつかネタが尽きたらまたフッとこのネタ湧いて出てくるのでその時はよろしこ(*´ω`*)


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