アヒィイイ!
中村○一のち○こしゃぶりたい
「杉田くん!おうちに帰って布団を敷こう!」
なんかよくわかんないです。週末のノリって奴ですはい
「というわけで蘇生に三カ月を要しました」
「サボったよね、どう考えてもさぼってたよね!」
「うん」
「良い返事ね、大好き!」
「ありがとうさぎ」
「うるさいわぁ!」
というわけで三カ月が経って私は未だにスタート地点の森の中にいました。
首だけで。
「あのさぁ……」
「ここ?」
「何言ってるのぉ!?」
「日焼けしていくの?」
「何も言ってませんよぉ!? とりあえず私の胴体返してくださいよぉ!」
「ちょっと待って、アナトリウスが今補給しているから」
「補給ぅうう!?」
「君のガントレット―――B.A.S.Eを君の身体にリンクさせるために少し時間が掛かったんだよ」
「そ、そうなの……?」
「だから時間かかるけど許してチョモランマ」
「何その誰も得しないギャグは!?」
「なごむんだってお師匠が言ってた」
「おたくの師匠は何一ついいこと教えませんね!」
「あ、来た」
と言われて私は眼だけでくるりと遠くを見た。
―――なんか走ってきてる。
首だけなくて、胴体だけが全速力でドスドスと足音を立てて、何か急きたてられるように走っていていました。
うん、全裸で。
「なんですかアレぇ!?」
「君の身体」
「そろそろなんか服くださいよぉ!」
「君裸がデフォだって聞いたよ?」
「誰やねん!? そんないい加減な事言ってるのは!?」
「そこのコボルトさん達」
「お前らぁああああああああああああ!」
気がつけば、首だけで私、走っていました。
「ふォオオオふぉふぉふぉフォフォフォ、今日こそズッポリハメハメしたるぅうううう!」
「ぎゃあああああああ! おやびん助けてぇええええええ!」
「――――すごいなぁ」
「よいしょ、接続完了」
『ありがとうございます、呪術師様』
「ううん。君も大変だろうしね。少し君の機能も強化しておいたからね、僕の力が役に立てばいいんだけど」
『本当ですか!? ありがとうございますぅ……』
「―――あの、私には何か……」
「あ、君には服」
「何そのぞんざいな扱い!?」
そう言いつつ、私は胴体に首をくっつけられて、服までいただいていそいそと着替えることにした。
質素なTシャツにズボンはジーンズで簡素なもの。
その上にワイシャツが渡されて、更にトレンチコートを着込むままに私は自分の身体を見下ろした。
スタイルは変わらない―――少しだけ胸が膨らんだ?
まぁ変化はそれくらいで、私は自分の身体を服越しに触りながら、少しだけため息を零した。
「これ……本当に別の身体なの?」
「実に馴染む?」
「なんだろう、その引っかかる聞き方……」
「能力は二倍に設定しておいたよ。レベル制じゃないから、そこらへんは許してね」
そう言って、少年は同じくトレンチコートを靡かせつつ、そこらへんの切り株に座り込んだ。
そして腰に差した拳銃を手に取るままに、ガチャンと音を立ててシリンダーが開く。
「さて……レナさん、君にはこの物語をクリアしてもらう必要があるんだ」
「どうして?」
「帰りたくないの?」
「帰りたいわ」
「なら首を縦に振りなよ」
「繋がりきってないから、首を動かすのが怖いのよ」
「戯れるね、キライじゃないよ……」
ニヤリと俯きがちに零れる笑みは、同じ年とは思えないくらい妖艶で、私は女だてらにドキリとした。
そうして、彼は二連装のシリンダーに弾丸をこめつつ、静かに囁き始める。
「まぁ、理由も聞かないといけないだろうしね」
「まぁ、そうだけど……」
「顔紅いよ?」
「―――エロゲの主人公みたいな事言わないでよ」
「僕に惚れないでね」
「本気で嫌そうな顔しないでください、さすがに傷つきますから!」
「ははっ……君のご両親に頼まれたんだ」
ガチャンとシリンダーが分厚い銀のフレームに吸い込まれる。
その言葉に偽りは感じず、少年の一言一言に、私は肌蹴たワイシャツの胸元に手を添えた。
多分、それくらいしか、自分の感情を抑えられなかった。
嬉しかった――――
「……おじいちゃんは?」
「泣いてたよ」
「おばあちゃんは……?」
「君は優しい子だってさ」
「……」
「助けてほしい―――泣きながらそう言われたよ。そして僕は頷くしかなかったんだ」
「……そっか」
「―――帰りたい」
「そ」
「……ごめん」
トレンチコートを翻し、私は俯く彼に背中を向けて、少しだけ目尻から涙を流す事にした。
別に寂しいわけじゃない。
永遠の別れというわけじゃない、だってすぐに会いに戻れるんだから。
だから、これは――――嬉しいんだ。
嬉しいと、泣いているんだと、私は思う。
「……おばあちゃん、おじいちゃん……私……私……」
「――――さて、さっきも言ったけど、君にはこの物語をクリアしてもらいたいんだ」
「ん……」
「だから、僕も手伝う。君の両親に頼まれたんだから、イヤとは言わせないよ」
―――涙は最後に流すものよね。
「……。わかってるわよっ」
目尻を拭いそう言って踵を返せば、そこには立ち上がる少年がいて、その手には大型のリボルバー以外に何かが握られていた。
それは蒼い球体のような、何かだった。
何か光を帯びた――――
「まずはこれを渡すよ」
「何これ?」
「グレイプニール。万物に偏在する存在の『起源』たるを組み込んだシステムツールだよ」
「……?」
「―――ていう設定。このゲームじゃアーティファクト扱いだよ。ぼくもあまり知らないけど」
「へ、へぇ……」
「ガントレット。これを装填して」
そう言われて蒼い光の石握りしめれば、重々しい音を立てて変形していく右腕のガントレットちゃん。
刹那、蒼い光が溢れだして、私の手の甲を包みこめば、それは右腕を覆った。
私は、眩さに後ずさる―――
「何これっ?」
「システムツールだよ。……君は実質的装備可能武器は素手と短剣だけったよね。それを少しだけ変えるよ」
「つまりどういう事!?」
「『枷』を外す―――」
「枷……?」
「強さの枷。……君はこの世界のどのプレイヤーよりも強くなるんだ」
光が収まっていって、残ったのは少し青みがかったガントレットちゃんが残っただけだった。
他に何も変わっていなくて、私はまじまじと右腕の機械を覗き込む。
『―――くさっ』
「……。何も変わってないわよね」
「君は今後、あらゆる武器をあらゆる場面で能力劣化することなく装備することが可能になった。
今の制限解除はこれくらいかな?」
そう言って、ニコニコと微笑む少年に、私は奇妙な薄気味悪さを感じつつ、彼の言葉に頷いた。
「じゃあ次にこれ」
と言って差し出したのは、小さな色のついた石が数個。
後、世に言うPDAのような薄型の機械が一つ―――私は全部受け取るままに、首をひねった。
「何これ?」
「MODだよ。君の『服』に装着することで、色々なアビリティを引き出す事が可能になっている。
……MODの話はしたかな?」
『イエスですマスター』
「あれぇ!? 私がマスターですよねぇ!」
『……』
「なんで黙るわけですかぁ!?」
「あはは、とにかくそれを服に押し付けてみたらいいよ」
言われるままに、私は渡された色のついた石を胸のワイシャツに押し込んでみたら、スッと石が消えた。
それだけ。
服の色も変わらず、何も変化はなく、ただ沈黙が広がる。
「……ガントレットちゃん」
『はい確認しました。アタックエフェクトアップ。ファイアレジスト50、ヴォルトレジスト40、スピードアップ、発動可能MODは以上になります』
「おお……」
「とりあえず四つ。必要になったら適宜外して。B.A.S.Eはその為にあるからね」
「……これは?」
と言って残りのPDAを差し出せば、彼は右腕に装着したガントレットを叩くような振りを見せた。
無言の指図に、私は頷いてその薄型の機械を押し付けた。
カシャンと音を立てて開く表面装甲。
と、そこには機械を差し込むコンポーネントが剥き出していて、私は恐る恐るそこに薄型の機械を嵌めこんだ。
そして装甲が閉じて、ガントレットちゃんが自然と語り始める。
『――――シールド装填完了。このシールドは現在の体力を保護するためのエネルギーフィールドを自動で生成します。
リチャージは随時回復タイプでフル回復で300秒となります』
と、紅いラインの入ったガントレットの表面に、もう一本蒼いラインが覆い被さって、私の体力を隠した。
「……シールド?」
「説明受けた?」
「―――ううん」
「シールドは体力と同じ扱いでね、蓄積ダメージを肩代わりするの。そして体力と同じく自動回復する。
そしてシールド自体にMODを付けることでシールドの強化、或いはステータスの強化を行う事が出来る」
「……ゴテゴテしすぎよね」
「それを前提に戦う事もあるから気をつけてね。
それと炎の特殊効果はモータルデス、つまり常に体力のみに蓄積ダメージを行う効果があるの。
後雷ダメージは――――」
バチィ!
痛い!
彼が私に触れた瞬間、頭の先からつま先まで何かものすごいものが流れたみたいで、私はアヒィとなった。
「ひぃいん!?」
「雷ダメージの説明は受けた?」
そう言って崩れ落ちる私を見下ろし、彼は平然とした表情で首を傾げる。
く、口が動かない。
「あ、受けてないみたいだね。
電撃属性ダメージは電撃属性に弱いキャラに対してダメージを上乗せするよ。更にDoTが発動し、『機械』が全て停止する」
「……シールド、効かなかったわね。痛かった」
「正解。シールドは機会だから電撃属性の特殊効果を受けるとすべて消失する。そして全てのMODが戦闘中一定時間停止するんだ」
「MOD全部……?」
立ち上がる私に、彼は満足げに頷いた。
「そうだよ。だから鎧とか取り外し不可な特殊効果以外のMODエフェクトは消える。鎧が服と同じく重宝されるのはここら辺が原因だね。
アーマーは殆どのダメージを軽減するんだ。炎ダメージも含めて」
『――――うう、シールドリチャージ開始しますぅ』
「あ、起きた」
「ごめんね、無理させちゃって……」
困ったように笑う彼は、やっぱり年相応で私は安堵に肩をすくめつつ、首を振った。
「まぁいいわ、続けて」
『このマスター、最低ぃ……』
「ん。他のMODの種類としては、クラスMODがあるね。
これは自分が所有しているクラスに別のクラスを付与、或いは自身のクラスレベルをMODレベルに応じて向上させるんだ。
使用可能ドライブアビリティが一つから二つ増えることになるね」
「やったね、ガントレットちゃん」
『やめて!』
「クラスの成長と、クラスアビリティの付与は成長してからおいおい説明してあげてね」
『はぁい、御主人さま!』
「違いますよぉ! 私が今の所有者ですよぉ!」
『くっさいくっさい女はぽいーで』
「ええええええええええ!?」
「じゃあ、一通り説明も終えたことだし、行こうか」
そう言いつつ、彼は腰に何かがまだ残っているようで、適当にまさぐるとコートの下から何かを取り出した。
「はい、これ」
「―――私、装備可能武器は短剣と素手なんだけど」
それは小さなナイフが二本、それに小型の拳銃が一丁。
渡されるままに、私は腰のホルスターにそれぞれの武器を収納すると、歩きだす彼に尋ねた。
「妙な武器チョイスするわね。私の選択武器知ってるのよね」
「銃にはウェポンアビリティが存在しないんだ。だから誰が使ってもいい基本的には同じ効果がある。
差が出るとすればクラスアビリティかな?」
「ナイフは?」
「取り回しの良い武器を選んだだけ。君のドライブアビリティは懐に飛び込むタイプだよね。
ちなみにそのナイフにウェポンアビリティはないからね」
「あるのくださいよぉ!」
「たはは、もうお金なかった……」
「全部自腹ですかぁ!?」
「グレイプニール以外はね。……さぁ行こう、君はこの物語をクリアするんだ」
―――結局この世界が何で、わたしが今何をしているのかは、正直今でもわからない。
でも目標はあった。
元の世界に戻る。
それは果てしなく遠いのかもしれない。
だけど、この世界に私を引きずりこんだ連中を倒し、彼についていけばそれは必ずかなうような気がして。
私は地面を強く蹴りあげた。
この先に未来があると信じて。
―――風が気持ちいい。
森が拓けて、風にトレンチコートが靡いて凄く始まりって感じがして。
私は表情を強張らせた。
その向こうには灰の大地が広がっていて、そして古びた戦場の痕が私と彼の目の前に広がる。
敵のうよつく、さびれた地平が。
そしてゴールが見える――――
というわけで、これからまた再スタートと言う形で入らせていただきます。
なんか時間かかりましたが、まぁこれもこんな形でチビチビと続けられたらいいなぁって事で。