十三、早く服を着なさいよぉぉぉ!!
洞窟の火は揺らめき、トールとガイルの対峙を浮かび上がらせていた。
二人の間に満ちる気配は、まるで巨浪と山岳の衝突のようで、神力の火花が空気を裂き、呼吸すら困難にする。
ガイルは冷笑し、黒紅の巨剣を地面へと引きずる。鎧の血焔はさらに激しく燃え上がり、洞窟全体を飲み込まんばかりだった。
「どうした、純潔の信徒よ? 女神に恐れを教えられたか?」
嘲る声と共に、巨剣が跳ね上がり、血色の光がトールへと斬りかかる。
トールは本能で身をひねり、魔棒を掲げてピンクのハートで刃を受け止めた。
「キィン――!」
鋭い金属音が洞窟に響き、衝撃でトールは数歩後退する。石床が砕け散った。
彼は低く呟く。自問しているようであり、助けを求めているようでもあった。
「聖典には……無辜の者を攫う者は火で浄化せよとある……これは、どういう意味だ?」
「戦いの最中に迷うな!」
ガイルが怒号を上げ、巨剣を連続で振るう。柳のように軽やかでありながら破壊の重みを宿した一撃が、トールを押し込み続ける。
その時だった。
「トール! 聞いて! 聖典の『火の浄化』は殺すことじゃない! あなたの心を燃やして、純潔の信念で敵の戦意を打ち消すことよ!」
フレイヤの声が響く。
その瞬間、トールの中で歯車が噛み合った。彼は手の中の魔棒を見つめ、聖典の言葉とフレイヤの声が、霧を払う陽光のように頭の中で交錯する。
「信念……純潔……殺すのではなく、守る……?」
彼の目から迷いが消え、握る手は震えを止め、気勢が一変した。
ガイルはその変化に気づき、怒るどころか興奮する。弱い相手を倒しても面白くない。しかし敵が強くなればなるほど、それが戦士の宴だ。彼は笑いながら両手で剣を握り直し、血焔を心に燃やし立てる。
「芝居をするな! 戦神の意志は——全ての偽りを粉砕する!」
巨剣が咆哮する龍のように振るわれた。
トールもまた応じる。しかし彼の心にはまだ迷いが残っていた。
狂暴なガイルを前に、彼は気勢を取り戻したとはいえ、何とか互角を保つのが精一杯だった。修道服は刃に掠められて次第に裂け、布が雪片のように舞い散る。露出した肌にはかすかな血痕が残された。致命傷ではないが、これ以上迷えば次は命を奪われると分かるほどだった。
ガイルの怒りはさらに燃え上がる。制御不能な憤りではなく、戦士としての高ぶりだった。
その時、フレイヤの声が再び響く。
「トール! もう一句! 聖典は言ってる——『敵を愛せ』!」
小さな指がガイルを指し、その声は戦闘の轟音を貫いて響く。
「それは罪を許せという意味じゃない! 純潔の力を見せることよ! あなたの信念で、戦争だけが答えじゃないと彼に分からせるの!」
その言葉が、最後の迷いを吹き飛ばした。
「おお……! 見せる……純潔の力を!」
トールは全身を震わせ、目の霧は完全に晴れた。深く息を吸い込み、胸は力と信念で膨れ上がる。
言葉が終わらないうちに、彼は猛然とガイルの巨剣へ向かっていく。魔棒と巨剣が激突し、耳をつんざく火花が散った。
二人の武器は拮抗し、トールの両足は地面に深く根を張ったように一歩も引かない。この瞬間、彼は勝負のためではなく、「純潔」の意志を守るために立っていた。一歩でも下がれば、それは自分の立場と信仰が崩れることを意味していた。
魔棒のピンクのハートが眩い光を放つ。その光はトールの怪力と共に猛然と押し寄せ、初めてガイルの体を押し返した!
「若いな! ただの力任せめ!」
ガイルは驚愕するが、戦意は衰えない。両手で剣を握り直し、剣を連続で振るう。一撃ごとに風雷の威力を帯び、剣勢は巨波が岸を打つようだった。トールも迷いで鈍ることはなくなったが、ガイルの卓越した戦技の前に再び互角へと戻される。
武器が打ち合うたびに洞窟は震え、盗賊たちは余波で転がり、少女たちは驚きの声を上げ、その目には恐怖と抑えきれない涙が浮かんでいた。
トールは歯を食いしばり、雷鳴のような声を洞窟に響かせる。
「フレイヤの名において! 純潔の炎は、全てを浄化する!」
その瞬間――。
フレイヤはこの一瞬の好機を逃さなかった。両手を高く掲げ、少女たちから集めた信仰の力から光を汲み取り、低く神術を唱える。その背中に、淡い羽根の幻影が浮かび上がる。柔らかく、神聖だった。
「煙火術!」
彼女の叫びと共に、トールの手にある魔棒が応えて震える。魔棒は果実の殻のように割れ、ピンクのハートが開き、内部から無数の光粒が現れる。
「ドン――!」
最初の炸裂音と共に、光粒が流星雨と化してガイルへと襲いかかる。
「ドン! ドン! ドン!」
花火がガイルの周囲で次々と炸裂する。赤、青、金、白の光が滝のように降り注ぎ、洞窟全体が白昼のように照らされた。
ガイルは驚愕に目を見開き、巨剣を振るって防ごうと怒号を上げる。しかしその光は鮮やかなだけでなく、純潔神力の温もりを帯びていた。その光は殺戮ではなく、心に直接働きかける浄化だった——彼の心の中の狂熱と憎しみを消し去ろうとするかのように。
「これは……何の魔術だ……!」
ガイルの声は掠れ、咆哮の中に震えが混じる。
「この弱々しい光ごときが……!」
トールは好機と見るや、猛然と踏み込み、魔棒を高く掲げる。ハートの光が流星のように咲き誇り、ガイルの血焔の巨剣に叩きつけられた。
「純潔は勝つ!」
トールが咆哮し、その声は雷霆のようだった。信念の力が彼の体内に奔湧し、魔棒の光はさらに眩しくなる。
「戦争こそ真理だ!」
ガイルが怒号し、その両眼は血のように赤い。巨剣の血焔は極限まで燃え上がり、光を飲み込まんとしていた。
武器は幾度も打ち合い、火花と衝撃音は絶え間なく続く。二人が注ぐ神力が高まるにつれ、魔棒と巨剣は次第に白熱し、表面には無数のひび割れが浮かび上がった。トールの攻勢はますます激しくなり、ガイルは法術の加護で何とか耐えていたが、次第に防戦一方となっていった。
そして――限界が来た。
正面からの激突の後、轟音と共に、魔棒と巨剣は同時に崩壊した。破片は無数の光の粒子となって舞い散り、《純潔》聖典と《戦争》聖典は塵と化し、紙片が雪のように舞い落ちる。強烈な神力の衝撃が炸裂し、トールの修道服とガイルの戦鎧は光圧で同時に粉砕された。
衝撃が収まった後、全ての視線が戦場の中央へと集まった。
そこに立っていたのは――トール、全身裸で立つ巨躯の修道士。その筋肉の線は火光に照らされ、大理石で彫られた英雄像のように輝いていた。彼は何も隠さず、まさに最も純粋な姿で、純潔がついに勝利することを世に宣言しているかのようだった。
ガイルは片膝をつき、胸は激しく上下し、戦意を完全に失い、見るも無惨な姿だった。
「これが純潔の勝利だ!」
トールは両腕を高く掲げ、その声は岩壁を震わせた。
「……認めない……」
ガイルは歯を食いしばり、その両眼は無念に満ち、声は掠れて震えていた。
「純潔とは——無惧、無垢、無畏だ! お前の戦争は破壊しかもたらさない。しかし女神の恩寵は……希望をもたらす! 希望は、ついに勝利する!」
トールは大股に踏み出し、見下ろすように語りかける。その口調は荘厳で、さながら審判のようだった。
少女たちはその言葉に心を撃たれ、目の曇りは完全に晴れた。その代わりに溢れ出したのは涙と笑顔だった。
「純潔は……本当にあったんだ……」
彼女たちは低く祈り、ますます敬虔になっていった。
ガイルの親衛たちが駆け寄り、敗れた主を支える。その表情は、徹底抗戦の覚悟に満ちていた。
「処刑は終わった。首領を連れて立ち去れ。」
トールは手を上げ、冷ややかにガイルとその親衛たちに告げた。
親衛たちは心を震わせた。今回もまた見逃すとは思わなかった。しかし誰も余計な言葉を発せず、トールに戦士の礼を捧げると、慌てて洞窟から撤退した。
残った盗賊たちはすでに神力の加護を失い、士気は瓦解していた。彼らは武器を捨て、地面に跪き、震える声で許しを乞うた。トールは淡然と笑みを浮かべ、自ら盗賊たちを縛り上げた。
火光が揺らめき、トールを見上げる少女たちの姿を映し出す。彼女たちは彼の周りに集まり、その瞳は崇敬と感謝に満ちていた。
「女神に感謝します……あなたの使徒に感謝します……」
彼女たちの唇はささやくように祈りを紡いだ。
そして――。
ようやく正気を取り戻した芙蕾雅は、頬を真っ赤に染め、両手で顔を覆いながらも声を出すわけにはいかず、心の中で絶叫した。
「このバカ! いいから早く服を着なさいよぉぉぉ!!」
信徒:80
領域:幸運・純潔
神術:水生成、武器変化、小治癒、幻影変化、煙火術、精神安定




